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witten by 嶋田智之
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うんうんする
26


……ダメ人間? いや、もうダメ人間を通り越して“カス”なんじゃないかと思えてわが事ながらオイオイと泣けてきそうな今日この頃。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 前回を「実はそのDB11の発表に先駆けて、もうひとつ大きなニュースがあったことを忘れちゃいけない」みたいに締めておいて、お前が忘れてたんだろ? といわれそうなほどの、見事なカスっぷり。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
 
というわけで、文字数を抑えるためにも今回はいきなり主題に突入するけれど、その“大きなニュース”とはコレだ。
 
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……あ。コレだけだと判らないか。うん。判らないだろな。僕だってコレだけ見せられて勝手に判れっていわれたら、途方に暮れる。
 
コレは“AM-RB 001”というコードネームで呼ばれるプロジェクトから生まれることになる、アストンマーティンの次世代ハイパーカーのイメージ・イラスト? 初期スケッチ? コンセプト・スケッチ? である。そう、忘れもしない──というわりには正確な日時は忘れちゃったけど──3月真ん中辺り、本国のアストンマーティンから届いたプレス・リリースを見て、僕はブッ飛んじゃったのだ。
 
そこには、簡単にいえば「アストンマーティンはレッドブル・レーシングとパートナーシップを結んだ」「レッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューウェイとアストンマーティンのマレク・ライヒマンがコラボレートして、これまでの常識を覆すような究極のハイパーカーを作る」というようなことが記されていた。
 
レッドブル・レーシングといえば、いわずと知れたF1グランプリのトップ・チームのひとつであり、世界最高峰の領域にある“スピード”のための様々なテクノロジーと、素材技術と、緻密さや精密さを誇り、テスターとしての能力も凄まじく高いドライバー達もいる。アストンマーティンは独自の美学と哲学を持ち、生まれたてホヤホヤでアウトプットを大幅に引き上げていく余地のあるV12ツイン・ターボもあれば、ハンドメイドでクルマを生産していく設備も職人達もある。そして、エイドリアン・ニューウェイといえば、歴史上最も成功したエアロディナミシスト(空気力学専門化)であり、レッドブルのレーシングカー・デザイナーでもある。マレク・ライヒマンは、御存知、アストンマーティンのスタイリングデザインを統括するチーフ・クリエイティブ・オフィサー。
 
今や歴史的にはとんでもなく気高い存在になったマクラーレンF1という素晴らしいスーパーカーがあるが、それを設計したのがゴードン・マレーというレーシングカー・デザイナーだったことを忘れちゃいけない。しかもニューウェイは、無類のスポーツカー好きであり、ウルトラ級のエンスージャストであることも、レース界では広く知られているのだ。このコラボレートにワクワクできない理由なんて、ひとかけらもないだろう。究極と究極のコラボレーションなのだから。
 
それだけだって僕にとっては充分に衝撃的だったのに、コレである。
 
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おわかりいただけただろうか? ……では、もう一度。
 
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レッドブルのF1マシンのノーズに、アストンマーティンの象徴である“スカラベの羽”があるのだ。プレス・リリースの最後の方に、「このパートナーシップを祝って、RB12にアストンマーティンのウイング・ロゴをあしらう」と記されていたとおり、ノーズやサイドポッド後方に、スカラベ印が貼られている。前年から噂されていたのとはタッグを組む相手もタッグのカタチも違っていたけれど、1959〜1960年以来の、間違いなくアストンマーティンのF1復帰! なのだ。
 
アストンマーティンのアンディ・パーマーCEOは、それ以前から“モータースポーツにまつわるテクノロジーとアストンマーティンの生み出すスポーツカーに明確なリンクが作れないのであればF1に参入する意味はない”と解釈できるような発言を繰り返していたが、参入する意味を積極的に“創り出した”わけだ。パーマーCEO、おそるべし……。
 
そして前回のコラムで触れたように3月のジュネーヴ・ショーで最大のニュースとなるDB11のデビューがあって、これで少しアストンの動きは静かになるのかな……と思ってた。が、どうしてどうして。ちっとも静かになんかならなかった。4月に入ったら、いきなりコレである。
 
 
おわかりいただけただろうか? ……では、もう一度。今度は写真で御覧いただくことにしよう。
 
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コレで……、
 
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コレである。……おわかりいただけただろうか? ……では、もう一度。じゃなくて! 要はV12ヴァンテージSのラインナップからしばらくドロップしていた、マニュアル・トランスミッションを何の前触れもなく復活させたのだ。しかも、だ。昔の部品を引っ張り出してきたわけじゃなく、AMSHIFTと名付けられた新開発の7速。左下が1速となるHパターンで、ヒール&トゥが面倒なときには自動ブリッピング機能を使うこともできるオマケ付きだ。
 
こっ……これはオタク心をチョーくすぐる。僕は最初のV12ヴァンテージがMTだったことを知っているし、体験してもいる。アストン史上最も運動性能に優れたヴァンテージ系の車体に積まれた世界で最も芳醇なV型12気筒エンジンを、3ペダルとシフトスティックを駆使しながら味わえるなんて、そりゃもう至福の極み以外のナニモノでもない。しかも現行のV12ヴァンテージSは、571psに63.2kgmもあるのだ。……んー、たまらない。このプレスリリースが英国から届いた瞬間、僕の中の“生涯の目標にしたいクルマ・ランキング”はすんなりと入れ替わった。
 
……と思ってたら、その半月後、今度は“死ぬまでに一度は乗ってみたいクルマ・リスト”が入れ替わるニュースが飛び込んできた。
 
 
そう! そうなのだ! 去年の秋に素晴らしく幸運なことにそのステアリングを握り、ハナヂを噴くかと思うくらいに興奮させられた、ヴァンテージGT12。そのV8版ともいうべきヴァンテージV8が、いきなり発表されたのだ。
 
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クルマの成り立ちは、ヴァンテージGT8にかなり近いといっていいだろう。2016年シーズンのGTカテゴリーを戦うV8ヴァンテージGTEには及ばないものの、そのフィーリングや通常のモデルでは届かない領域を楽しめるように作られた、ストリートを走ることのできるサーキット向けの150台のみの限定車である。パワーユニットは446psと、数字だけを見ればV8ヴァンテージSより10ps高められたに過ぎないが、こちらは車体が横方向にワイドになり、シャシーを引き締め、空気の流れも味方につけ、100kgほども軽い。もうそう聞いただけで走らせてみたくなるじゃないか。これをサーキットで走らせてみたいと思うのは、当然の気持ちの流れじゃないか。
 
……あ。アストンは今年もニュルやル・マンをはじめとしたレース・シーンを戦ってるわけだけど、そのレーシング・スピリッツがありありと解るような動画を見つけちゃったので、それも貼っておこう。
 
 
そしてそして、ヴァンテージGT8の興奮冷めやらぬ5日後、頭の中がライヴで興奮している真っ最中だというのに、今度はそれとちょっとばかり性質の違う興奮が襲ってきた。うあ、何て美しいのだろう……である。
 
 
毎年5月の終わりが近づいた頃にイタリアのコモ湖で開催される“コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ”でお披露目された、ヴァンキッシュ・ザガートだ。そう、2011年以来のミラノのカロッツェリア・ザガートとのコラボレート作は、現行アストンのフラッグシップであり、最も美しいスタイリングを誇るヴァンキッシュをベースに作られた。
 
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マレク・ライヒマン率いるイギリスはゲイドンのデザイン・チームと、ザガートの現当主であるアンドレア・ザガートとチーフ・デザイナーである原田則彦をチーフとしたイタリアはミラノの手練れ達の共同作品。詳しくはこの26日に発売される『ROSSO』誌でねちっこく紹介させてもらってるのでそちらを御覧いただきたいのだが、まぁよくもここまでベースとなったヴァンキッシュの持ち味を殺すことなく新たな魅力を注ぎ込んだものだと思う。
 
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オール・カーボン製のボディ・パネルなんて、おそらく1枚たりともベース車と同じものはないだろう。しかもパネルの継ぎ目がほとんどないから、スタイリングの流れがスムーズでめちゃめちゃ綺麗。ほかにも「ほほぉ……」と思える要素はたくさんあって、どれだけ拘ってるんだ? と思えてくるほど美しい。アストン+ザガートのコラボ作はそれぞれ見事としかいいようのないスタイリングをしているけれど、個人的にはDB4GTザガートを除けばこのヴァンキッシュ・ザガートが最も好きと公言してもいい。
 
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ただただひたすらホワ〜ンと憧れて写真を眺めては溜息をしていたわけだが、つい昨日(6月21日)、このヴァンキッシュ・ザガートが正式に発売されることがアナウンスされて、今度は別の溜息が出てきた。このクルマのキーを手にすることができるたった99人の男(と女)が羨ましくて溜まらない。何せアストン+ザガートのコラボ作は、新車の段階で手に入れない限り、マーケットにはまず出回らない。頑張っていずれ手に入れるぞー! という望みは、ほぼ絶たれているも同然なのだから……。
 
ってなわけで、3回にわたって“今いちばん面白いスポーツカー・ブランドってアストンなんだよねー。なぜならば……”ってなことをお伝えしてきたわけだけど、ほんと……凄いでしょ? あらためて(それも駆け足で)振り返ってみて、僕自身もその展開の速さと幅の広さに圧倒されたほどだ。
 
歴史的に見て何度も存在の危機に直面してきたアストンマーティンを立て直して現在の基盤を作ったのが、前CEOのドクター・ウルリッヒ・ベッツであったことは確かだ。が、それをさらに大きく高く広く飛躍させているのが、現CEOのアンディ・パーマーの手腕であることは間違いない。今の時点ではヴァンキッシュ・ザガートの発売決定が最後のニュースではあるけれど、この何とも胸躍る躍動感みたいなものは、まだまだ続きそうだ。
 
きっと9月のパリ・サロンでも何かあったりするのだろうなぁ……。いや、その前にいきなり、また驚かされるような何かがあったりして……。
 
あっ。また4000w超えちゃってる……。
 

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witten by 嶋田智之
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22


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近頃の iPhone は、結構綺麗に撮れるのだよねぇ。内緒だけど某誌の連載の自分で撮る写真は、100% iPhone によるものだったりする。この熟成極まった DB9GTの写真は『Tipo』誌の取材時のときのもの。


「今いちばん面白いスポーツカー・ブランドってアストンなんだよねー。なぜならば……」と来て「っていうところまで話を持っていこうと思ってたんだけど」と続け、「もう飲んじゃったからなー」と展開した後、「また次回」と拾い直して「何日か後にね」とスライドさせ、「……たぶん」で締めた、前回のコラム。その“何日か後”というのが具体的にどのくらいまでの期間なら世の中的に許されるのか、そこんところはさっぱり判らないのだけど、前回の公開から33日後に続きを書いているというのは、さすがに“何日か後”に該当したりはしないだろう。
 
“カーくる”のトガリさんやイカイさんは僕の性格や普段の状況を理解してくださってるうえにいいヒト達なので、ゆるーくやっていくことを許してくださってるけど、開始早々にこれではいけない。もう「何日か後にね」という言い回しは避けなきゃいけないね。うんうん。
 
期待をしてくださっていた2~3人の皆さんへのお詫びの意味も込め、そしてさらにはこの33日間にわたる構想期間(?)に当のアストンマーティンが新しい話題を送り出してくれちゃったので、今回は……長いぞぉ。

 
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アンディ・パーマーCEO。1963年6月生まれ。ニュルブルクリンク24時間レースを走ることを目標に、自らヴァンテージGT4で英国内のレースにも参戦するカー・ガイでもある。育った街から僅か5マイルのところに位置するゲイドンのアストンマーティン本社にて。


さて、なぜアストンマーティンが今いちばん面白いスポーツカー・ブランドだと僕が感じているのか。それは2014年の秋にアンディ・パーマーさんがCEOに就任してからこっち、展開が目まぐるしく素早いからだ。しかも、その勢いはまだまだ止まりそうにないのである。
 
パーマーCEOは、以前は日産自動車の副社長を勤めておられ、あのカルロス・ゴーンさんの後継と目されていた方だ。英国内の自動車メーカーでエンジニアとしてキャリアをスタートし、1991年に日産テクニカル・センター・ヨーロッパに移籍、そこでは副マネージング・ダイレクターとして主にデザインやテストの分野を担当されたという。2002年に日本に来られてからは経営サイドの業務に携わるようになり、日産のグループ内企業の経営を複数こなしながら2011年からは日産本体の副社長に就任。そしてチーフ・プランニング・オフィサーとして商品企画を担当されていた。エンジニアとしての考え方も、経営者としての考え方も、プランナーとしての考え方もできる、というわけだ。
 
2015年の2月、就任されてから数ヶ月後のパーマーCEOにインタビューさせていただいたことがある。そのとき彼は「アストンマーティンはDAIGINJO(大吟醸)のような存在であるべき」、つまり誰かと競ったりひけらかしたりするためのスーパー・スポーツカーではなく、独自の美意識の元に丁寧に作られ、慈しむように味わって楽しむための存在であるべき、ということを示唆する考え方を表明してファンを安心させてくれたばかりでなく、そのうえで「ラインナップを全て刷新する。年に1車種ぐらいのペースで発表していけるといいと思っている」と語り、驚かせてくれた。
 
展開は本当に素早かった。そのインタビュー直後に開催されたジュネーヴ・ショーには、もちろん刷新ではなかったけれど、ティーザー予告されていた1台の派生車種と1台の全く新しいサーキット専用限定車、そして全くのサプライズで1台のコンセプトカーが並べられていた。違う仕事で渡欧していた僕は、たった半日だったけど観に行くことができて、会場内で小躍りした。いや、ホントに躍ってたらツマミ出されてたと思うけど……。
 
ともあれ、そのときに展示されていた派生車種とは、これだ。
 
 
ヴァンテージGT12、である。アストンはここ数年ヴァンテージでGTレースを戦っているわけだが、GT12はそのGT3マシンと通常の市販ラインナップにあるV12ヴァンテージSの間に置かれた世界100台の限定車。最も運動性能のいい車体に個人的には世界で最も豊潤と感じてるV12ユニットを積んだV12ヴァンテージSに、エンジンを600psにパワーアップ、車重を100kgほど絞り込み、トレッドの拡大を含めて足腰を全面的にセットし直し、空力を思い切り見直すなど、あらゆるところに手を加えたスペシャル・モデルだ。エアコンとオーディオとインフォティメント・システムを持ったレーシングカー、といった成り立ちである。
 
実はウルトラ級に幸福なことなのだけど、僕は世界にたった100台の貴重なこのモデルを、サーキットで試乗させていただくことができた。
 

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これは『ROSSO』誌の取材でヴァンテージGT12に試乗することが叶ったときのカット。死ぬまでに一度は乗ってみたいと思ってから、夢見心地以外のナニモノでもない体験だった。

いや、そりゃもう驚きだった。パワーが上がって車重が軽くなってる分だけ速さを増してるのは当然として、ただでさえフロントに決しては小さいとはいえないV12エンジンを積んでるわりには気持ちよく曲がってくれるのがV12ヴァンテージSの美点だというのに、それを遙かに超える勢いでグイグイ曲がる。パワーもトルクも強力なのにデリバリーがしやすく、慣れればステアリングでもスロットルでもどちらでも自在に曲がっていける印象だった。袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースを3周たらず、距離にすれば7km程度、コーナーの数は合わせて29個という限られた条件での試乗だったから僕の腕前ではそれ以上の領域には踏み込めなかったけど、アストンが伊達や酔狂でレース活動をしてるわけじゃないってことを身体と感覚に叩き込まれたような、そんな体験だった。
 
そして、ジュネーヴのブースのメイン・キャストだったのは、このクルマだった。ヴァルカン、である。
 


これ、もうサウンドだけで痺れちゃうでしょ? V12ユニットは自然吸気のまま、何と800psオーバー! までパワーが引き上げられていて、それをマウントする車体の方は、モノコックもボディ・パネルもカーボンファイバー製。サスペンションはプッシュロッド式でブレーキもカーボンセラミック。いや、もう事実上はベースも何もなく、全くゼロから作ったマシンといっていいだろう。
 
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ヴァルカンの名前は、1950年代に英国空軍に配備されていた戦略爆撃機からインスピレーションを得たものだという。元をただせばローマ神話に登場する火の神、ヴァルカーヌスの英語読みが原点かも? なんて勝手に想像してるのだけど。
 
ヴァルカンの残念なところは、完全にサーキット走行に特化した作りになっていて公道走行が不可であること。そして、たった24台しか生産されないこと。つまり僕達が路上でこの美しい野獣に遭遇する可能性はゼロなのだ。……が、何と嬉しいことにっ! ごく最近、日本にも1台、ヴァルカンが上陸した。もしかしたらどこかのサーキットで皆さんも観ることができるかも知れない。……っていうか、僕が観たい。もう一度観たい。今、神に何でもいいから望みを叶えてやるといわれたら、僕は迷わず「ヴァルカンに乗りたいです!」と子供のように大声でお願いするだろう。
 
そしてもう1台。まるっきりのサプライズで、ちょうど飛行機に乗ってたから知らずに会場に行ってヒックリ返ったのがこのクルマの展示だった。DBXと名付けられたコンセプトカーである。
 
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DBXはアストンマーティンの歴史上初めてといえる、全く新しいコンセプトを持って計画されているモデル。すでに市販化に向けて動き出している模様。
 
近頃流行りのクロスオーバーSUVのように思われるかも知れないが、アストンではこれをSUVとは呼ばず、誰もがいかなるシチュエーションでも走らせることのできるスポーツカーでありグランドツアラーである、という位置づけだ。ショーに展示されたモノはおそらく原寸大のモックアップだろうと思われたが、その時点で発表されていたのは、これが4輪駆動であり、完全な電気自動車であるということ。アストンはすでにラピードに水素ハイブリッドのパワートレーンを搭載したクルマをニュルブルクリンク24時間レースで走らせているし、市販前提で開発されたラピードのEVも完成している。新世代のパワートレーンに対しても積極的なのだ。その後、このDBXコンセプトをベースにしたモデルの市販化も決定したと報じられていて、果たして本当にEVで来るのか、それともV12やV8も搭載するのか、個人的にも興味津々だったりする。
 
このジュネーヴ・ショーで発表されたクルマ達の後、年末に向かって次第に盛り上がっていったのが、そう、これだ。世界で一番有名なスパイのためのクルマ。



このDB10については2014年の年末に写真だけは公開されてたけれど、『007 SPECTRE』の公開が近づくにつれて、映画のプロモーションムービーやアストン自身によるプレヴューで、気分がどんどんヒートアップ。撮影用に全部で10台が作られたうちのたった2台のみが展示用で、それはもちろん世界中で取り合いになったわけだけど、アストンマーティン・ジャパンががんばって争奪戦を乗り切ってくれたおかげで日本にもやってきて、あちこちでお披露目された。御覧になれた幸運な方もおられるんじゃないだろうか? 

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最新のボンドカーであるDB10は、昨年晩秋、映画の公開前のプロモーションで日本にも上陸。これは“TOKYO BOND GIRL COLLECTION”なるファッション系イベントに潜入したときのもの。このときばかりは珍しく、ボンド・ガール風のモデルさん達よりもDB10。早く近づいてシゲシゲ観たかったから、ファッションショー急いで終わってくれぇ……と願っていたのだった。

DB10がV8ヴァンテージをベースに作られたことは公然の秘密だけど、ヴァンテージのプラットフォームの上にこれだけガラッと異なるスタイリングデザインを、それも全く異なる美しさをもって創り上げたとは驚き。マレク・ライヒマン率いるスタイリング・チームの実力の高さの、ひとつの証といえるだろう。しかもこのDB10と先述のヴァルカンは、アストンマーティンのこれからのデザインの方向性を示唆してる、と公式的にアナウンスされていたのだ。

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これがDB11の、公式的な世界初公開の瞬間。僕は今年のジュネーヴにはいけなかったのだけど、それより半月少々前に関係者や最重要顧客にそっとお披露目するための席に潜り込んで実車を見せていただいた。文句なしにカッコイイっす!
 
それを証明したのはこの3月のジュネーヴ・ショーで発表され、前回のコラムで御紹介したDB11というわけなのだけど、実はそのDB11の発表に先駆けて、もうひとつ大きなニュースがあったことを忘れちゃいけない。
 
忘れちゃいけないのだけど、よくよく数えてみたら、まだ途中だっていうのに文字数4500wオーバーになっちゃった。さすがにもうここまで来ると、読んでくださってても苦痛を感じるレベルでしょ? なので今回はここまでにして、続きはまた次回。何日か後にね。……あれ?
 
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witten by 嶋田智之
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前回の鼻歌による音痴なイントロみたいな第1回目じゃなくて、本格的な最初のコラムは何をネタにしようかなぁ……なんてウカウカしながら考えてるうちに、デビューしちゃったじゃん!
 
いや、予想はしてた。というか、知ってた。これぞ業務上役得。でも、ちょっとだけ、だ。ディテールまではもちろん掴んではいなかったし、シチュエーションがシチュエーションだったからアレがナニで……(ゴニョゴニョ)……だったからさー。
 
……え? あ。いや、ひとりで興奮して申し訳ない。意味不明な発言もお許しいただきたい。そこは今の段階ではクチにすることが憚られるので、この3月26日に発売される『ROSSO』誌で確認していただけるとウレシイ。原稿を書かせてもらうから。たぶん。
 
で、いったい何をこうも興奮してるのかといえば……まずはこの動画を視てちょーだいませ。
 
 
 
 で、それから下の写真を見てちょーだいませ。上の動画が明確な意志を持ってコッソリと予告していたのは、このクルマのデビューだったのだよねー。
 
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そう、アストンマーティンDB11。2003年からこっち、アストンのラインナップの中心的なモデルとして、アストンの世界観を世に伝え続けてきたDB9の後継となるモデルだ。当然ながらアストンの代名詞ともいうべきV型12気筒エンジンを搭載してるわけで、動画は「このエンジンを載せてDB11をもうじきデビューさせるから、楽しみにしてて」というメッセージだったというわけ。
 
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いやー、カッコイイ。超カッコイイ。実物、シビレるから。間違いなく。クラシックでありモダンでもある、もはやアストンマーティンの独壇場ともいえるエレガンス。予告されていたとおり、『007 SPECTER』で僕達を唸らせてくれたDB10や24台しか作られない随の随みたいなヴァルカンに見ることができた、新しいライン構成や面構成、それにディテール。アストンマーティンらしいスタイリングデザイン上の黄金比はしっかりとキープされていて、溜息が出ちゃうぐらい美しい。観察するより何より、見惚れちゃったぐらいだからねぇ……。しかも、今の超高性能スポーツカーでは絶対に無視することができないエアロダイナミクスの追求も、GTウイングとかそういう方法に手を伸ばすことなく、だけどちゃんとやってたりする。
 
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インテリアも、御覧のとおり。派手さとは無縁なんだけど、どこかほんのりと華やかで、ここに収ることができたら、間違いなく夢見心地。デザインそのものは変わってるのだけど、そういうところはちゃんと継承されてるのだねぇ。
 
んーでもって、上の動画のV12でしょー。アストンのV12は以前からターボ化が噂されていて、ファンの間には「えー! あの世界一美しいアストンV12サウンドがなくなっちゃうわけ?」と拒絶に近い反応をしてた人も少なくないんだけど、ダウンサイジング系(というわりには5.2リッターもあるけど)ターボとは思えないぐらいの、気持ちが震えるような快音でしょ? 前にアンディ・パーマーCEOとお話ししたとき、彼は「心配は要らないよ」みたいなことをおっしゃってたけど、全くそのとおりだった、っていうわけ。
 
ちなみにパワーとトルクは608ps/6500rpmと700Nm(71.4kgm)/1500〜5000rpm。個人的には700psとか750psとかまで引き上げようとすればできるのにやらない、抑えの効いたレベルに収められてることに、とっても安堵しちゃった。これまでの自然吸気V12もそうだったけど、パワーウォーズに加担することなんかより、自分達の持ち味を磨き抜くことをずっと選択し続けてる、っていうことだからね。きっと最高に気持ちいいエンジンに仕上がってるのだろうなぁ……って思う。
 
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プラットフォームは新設計だし、サスペンションも当然ながら新設計だし、しかもトルクベクタリング・システムまで備わって……なんて、手に入れた資料を見れば見るほど「早く乗りてー!」っていう気持ちが膨らんじゃう。楽しみで楽しみで、妄想が暴走はじめて、抑えるために……飲みはじめちゃった。
 
ホントは“今いちばん面白いスポーツカー・ブランドってアストンなんだよねー。なぜならば……”っていうところまで話を持っていこうと思ってたんだけど、もう飲んじゃったからなー。いや、だって、飲まずにはいられないでしょ。嬉しくて。
 
ってなわけなので、そっちの方は、また次回。何日か後にね。……たぶん。
 
 
追伸:あ。こんな動画も公開されちゃった。見て見て見て見て。DB11のこと、もうちょっとよく解るから。
 


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witten by 嶋田智之
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うんうんする
46


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昔のアルバムから:キプロス島の民家の玄関前でダラ〜ッと惰眠を貪ってる、旧いシトロエン。もったいないと思う前に、なぜだか「似合ってるなぁ……」と感じちゃったのだった。これもひとつのクルマの生き方、かも。
 
皆さん、こんにちは。嶋田智之です。このたびちょっとした縁がありまして──というか“カーくる”主宰の外狩さんと“新舞子サンデー”ディレクターの猪飼さんという仲間達の口車に乗せられるようなカタチで──こちらのコラムをスタートさせていただくことになりました。はじめまして! の方も多いことかと思いますので、今回は御挨拶を兼ねて自己紹介などを少々。
 
はて、嶋田智之なる男は、果たしてナニモノか──。
 
はい。社会の片隅で細々と自動車関連の記事を書いて暮らしている、いわゆるモノ書きです。自動車ジャーナリスト? 自動車評論家? んんん……いや、ヒト様がどう判断され、どう呼んでくださるのかは別として、自分としては“ちょっと違うよなぁ(^^;) ”と、汗を流した顔文字つきで思っちゃったりしています。
 
だって、例えば生産台数わずか数台の貴重な名車だとかマジメに1000psみたいな激しいクルマとかには試乗させていただいたことはあっても、日本で一番売れてるクルマには触れたことすらなかったりするし、スポーツカーの歴史に大きく名を残す人物にインタビューさせていただいたり伝説的なレーシングドライバーとグラスを合わせる幸福な体験をさせていただいたことはあっても、日夜“理想的なファミリーカーとはどうあるべきか”と熟考しているエンジニアのような方々とマジメにお話をしたことがほとんどなかったりするのです。やたらと偏ってます。それなのに評論家だとかジャーナリストだとかの立派な肩書きを自ら名乗ったりしたらバチが当たるし、本当の評論家やジャーナリストの皆さんに失礼だと思うのです。そもそも評論してるつもりもなければジャーナルなこともあんまりしてないし……。なので、自動車ライター。それがちょうどいいところでしょう。
 
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昔のアルバムから:トリノの街をほっつき歩いてるときに見つけた、埃と錆びにまみれてガレージに佇むアルファ・ロメオ。ここの家の若い兄ちゃんが出てきたから訊ねてみたら「これ? じいさんが乗ってたクルマだよ。これからキレイにするんだ」だって。
 
いや、選んでるわけではないのです。メディアの仕事は基本、オファーがあってこそ。「コイツにコレについて書かせよう」と考えてくださる方からのオファーがあって、初めてスタート地点に立てるようなものですから。
 
ならば何ゆえ偏ってるのかといえば、それは前職が大いに影響してるのでしょう。僕はフリーランスになる以前、長いこと自動車雑誌の編集者をしておりました。圧倒的に長かったのが、昔も今も自分達が楽しいと感じることしか誌面にしない『Tipo』であり、他に“エンスーの総本山”と呼ばれる『Car Magazine』やスーパーカー&高級車専門誌といえる『ROSSO』にも関わってきました。つまり、スポーツカー、スーパーカー、ヒストリックカー、イタフラをメインとする輸入車といった、趣味的なクルマの世界にドップリと漬かって生きてきたわけです。自分では“そういうの専門”だなんて思ったこともありませんが、周囲から「あんたはそっちでしょ?」と思われるのも、当然といえば当然でしょうね。
 
ただ、それが不満というわけでは全然ないのです。むしろ、ストレートに「おお、楽しいな」「ああ、気持ちいいな」「うひゃ、これ凄いな」と感じられるクルマは大好きだから、性に合ってるのかも知れません。仕事もめちゃめちゃ楽しく感じています。遅筆すぎて締切が重なると圧倒的な睡眠不足に陥ることを除けば。
 
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昔のアルバムから:シチリアのタルガ・フローリオのコースから少し外れて中に入った裏路地あたり。現役の“生活の道具”として使われてる、錆びだらけのバンビーノ。こういうシーン、いいなぁ……と心から思う。
 
ともあれ、楽しいクルマ達とたくさん接してくることができたおかげで、『トリコローレ』や『ミラフィオーリ』といったクルマ好き達が集まるイベントにトークのゲストで呼んでいただけるようにもなり、その辺りがきっかけで、近頃ではトークの仕事もあれやこれやと頂戴できるようになって、何とかゴハンが食べられてる、というわけです。
 
そして──誰が名付けたか、居酒屋系自動車トーク。まるで居酒屋にクルマ好きが集まってやいのやいのとクルマ談義をしてるようで、あっちへ飛んでこっちへ飛んでと落ち着きがないけど、何だかワケもなく楽しい、というホメ言葉なのだとか。データを記憶してそれを緻密に組み立てながらロジカルに語るという能力はないし、年表や資料の中にあることより目で見て耳で聞いて身体で感じたことを伝えたい性格だし、何より生き方そのものが“弾みと勢い”みたいなものですから、いっぱいあるけどひとつひとつは小さい引き出しを開けたり閉めたりしながらやってきたトークを、そんなふうに前向きに評価していただけるなんて思いもせず……。これは僕にとって掛け替えのない勲章のようなもの、かも知れません。
 
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昔のアルバムから:パリの6区を気持ちよく千鳥足で歩いてた僕を、いきなりシラフに引き戻したクルマ。まさかボートテールのベントレーを当たり前のように路駐してるツワモノがいるなんて……。
 
そんなわけでこちらのコラムも、“居酒屋系自動車コラム”と名付けさせていただくことにしました。法則性のようなモノは何ひとつなしで、今、これがオモシロイ! と感じてることを、それこそ弾みと勢いで、1ヶ月に1〜2本のペースでのんびりとやっていきたいと思っています。
 
さて、堅苦しい言葉づかいでのお話は今回のみ。次からはホントに居酒屋で仲間とクルマ談義してるときみたいなちょっとばかりラフなトーンでやらせていただきます。
 
んー、最初のテーマは何にしようかな……?
 






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