朝の7時過ぎ、飛行機はローマ・フィウミチーノ空港に着陸した。
安いエアチケットを手に入れ、山のように溜まった仕事に強引にケリをつけ、ようやくここに辿り着いた。
これから始まる旅に心を躍らせながらも、初めての個人旅行で、扱い慣れないスーツケースにたくさんの荷物と不安を詰め込んで、
ゴロゴロと空港内をおぼつかない足どりで移動する自分が、何とも小さな存在に感じた。
トリノまでの国内線出発までにまだ時間があるので、なにはともあれ空港建物の外に出てみた。
朝日が眩しく、静かでまだ人もクルマもまばらなフィウミチーノ空港は特別な空気が漂ってるように思えた。
そこには日本ではあまり見ることの無い、古いランチアが1台だけひっそりと佇んでいた。それを見た瞬間、じわじわと嬉しさと実感が押し寄せて来た。
「ああ、ついに来たんだな、イタリアに。」
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いつか、アルファロメオでイタリアを旅したいと思っていた。アルファロメオを買ったその日から。
どうしてこんなにも、イタリアの車ってカッコいいんだろう、オシャレなんだろう、そして自分と馴染むんだろう。
アルファロメオを通じてイタリアという国が好きになって、イタリアが好きと友達に話すけれど、イタリア語を学んでいるけれど、本当の「生」のイタリアを感じてみて、
日の当たる部分ばかりでなく、影となるところも含めて経験して、もう一度よく見つめてみたい。
アルファロメオで1人旅をする。有名な観光スポットでなくていい、ただ、名も無い街に自分の運転で行き、そこにポンと身を置いてみたい。
たった10日の旅で何も見つからないかも知れない。でも、そこに身を置くことで、何かが変わるかも知れない。
何かのきっかけになるかも知れない。日々の忙しさとお金が無いことを理由に踏み出せなかったけど、しまっていた少しの勇気を出して、イタリアにやってきた。
初めての海外一人旅、初めてのレンタカー、イタリア語もままならない状況での旅はきっと大変なものとなるだろう。
そんなことも敢えて体験してみたい。
それでもなお、イタリアという国が好きであれば、そんな嬉しいことは無いのだから。