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独特の目線でイタリア・フランスに関する出来事、物事を綴る人気コーナー
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大矢アキオ Akio Lorenzo OYA 
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター

アメリカ市場における最新のフィアット事情

おさらいすると、フィアットは1899年にイタリア・トリノで創業した自動車ブランドである。
だが今日、その実体は国際企業だ。2009年、フィアットは連邦破産法第11条の適用を受けて倒産した米クライスラーを統合。当初トリノと米ミシガン州オーバーンヒルズの2本社制をとっていた。
やがて2014年に『フィアット・クライスラー・オートモビルズ(以下FCA)』を発足させると、登記上の本社をオランダ、税務上の本社をイギリスに置いた。上場は従来のミラノに加え、ニューヨーク証券取引所でも果たした。
トリノのリンゴット地区にある歴史的本社はFCAの移転後、フィアット創業家であるアニエッリ家の投資会社が使用していた。だがその投資会社もFCAの後を追うようにオランダに移転。現在は同家の文化財団が使っている。

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ロサンゼルス(LA)オートショー2017で。フィアット500L(左)と、EV仕様のフィアット500e(右)。


こうして多国籍化するFCAの姿を複雑な思いで受け止める純粋イタリア車ファンは多いはずだ。しかしそれによる新たな展開も少なくない。その代表例が米国市場である。

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フィアット・ブースのモデル。


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アルファ・ロメオ・ブースのモデル。



フィアット・ブランドは2010年ロサンゼルス・モーターショーで、メキシコ工場製の「500」とともに北米市場復活を宣言した。これにより、品質問題などを背景にした1983年の撤収以来27年ぶりの再上陸となった。
参考までに2017年1-11月の米国におけるフィアット・ブランド販売台数は24,754台であった。販売モデルは多い順に「500」「500X」「500L」そして「124スパイダー」である。

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フィアット124スパイダー・アバルト。価格は24,995ドル(約282万円)から。米国でアバルトは、フィアット・ブランドのスポーツバージョンという形がとられている。


同じFCAのアルファ・ロメオも2014年、「4C」をもって約20年ぶりに米国に復帰した。昨2017年には新型車「ジュリア」「ステルヴィオ」を投入して、本格的な販売攻勢にうって出た。そのため11月には、前年同月の62倍(!)にあたる1440台の販売を記録。1-11月も9997台で、前年同期比20倍となった。

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フィアット500eのダッシュボード。ボタン式セレクターに注目。


ディーラー網構築などに時間を要したと思われるが、「アメリカでもウケるだろうに」と以前から考えていた筆者としては、思わず「やればできるじゃん」と叫びたくなる。
2017年11月末モータショー取材に赴いたロサンゼルスでも、たびたび500や500Lを目撃した。
運転していたドライバーのルックスや年齢から察するに、日本製プレミアムカーやハイブリッド車の飽和状態から脱したい個性派ユーザーたちに“刺さる”選択なのに違いない。

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LAのダウンタウンで。


思えば1970年代アメリカでは、「輸送中、海水を被ったX1/9が流通している」という噂が流れり、自動車修理工を連想させる名前「トニー」に絡めて「FIATって何の意味か知ってるかい? Fix it again, Tony(トニー、もう一度修理しろ)の意味だよ」といわれた。
そのフィアットが今、摩天楼の間をクールに泳いでいる。イタリア車ファンとしては、目頭を熱くせずにいられないのである。




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LA郊外の住宅街で。保安基準に従い、前後フェンダーにオレンジ色のサイドマーカーが装備されている。
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大矢アキオ Akio Lorenzo OYA 
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター

シトロエン2CVのカタチをしたパッケージ入りチョコレート、同じシトロエンのDSを叙情的にとりこんだポスター、そしてルノー4がデフォルメされて描かれた絵葉書・・・フランス・パリの土産物店には、ベレー帽やエッフェル塔型ワインとともに、コテコテのフランス車をモティーフにしたアイテムが今も並ぶ。

 しかし店の外に目を向ければ、もはやそうした車たちは皆無といってよい。ちなみにタクシーも他のヨーロッパ都市同様、トヨタ・プリウスがスタンダードになりつつある。

 背景にあるのは、2016年7月に施行された市条例・クリテア(Crit-Air)である。それにより、1996年12月末以前に生産された欧州排ガス基準「ユーロ1」の車両は、朝の8時から夜の8時までパリ市内での走行が禁止された。

 近年パリでは大気汚染が警戒レベルを超える日が頻発し、大気汚染による健康被害が増加している。そうしたなかでの方策だ。
2040年までに内燃機関による自動車の販売・生産を禁止するとした2017年7月のフランス政府発表とともに、パリ協定を達成するための手段でもある。

 この「クリテア」、フランス古典車連盟によって「コレクション用」と認定された車両は規制対象外だ。いっぽうでそこから洩れる、「ちょっとだけ古い車」は、この1年で花の都から一気に姿を消した。1970-80年代の旧車専門誌「ヤングタイマー」は、条例の審議段階から「走る権利」を訴えて読者とともにデモまで行ったが、声は届かなかった。

 いっぽう、そうしたバゲットとワインの如く生活に根ざした古いクルマたちが元気なのは、全日走行が許可されている土曜・日曜そして祝日である。
ほとんどはかなり使い込まれた実用車だが、趣味性を感じる車もときおりやってくる。いずれもオーナーとともに空いた街路をのびのびと走っている。
ウィークデイの渋滞や信号待ちのなかで、そうした車が新型車よりも有害な排気ガスを撒くのを避けることができ、かつユーザーも古い車を使い続けられる。妥協策のひとつとして評価に値しよう。

普段珍しい新車が通るたび、しげしげと眺めてしまい不審の目でみられる筆者だが、ちょっと古いクルマのオーナーに関していえば、総じてそれがない。
皆さんもパリに赴いた際は、彼らに温かい眼差しを送ってみてほしい。あなたに自慢に満ちた笑みを返してくる確率が高いから。


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セーヌ左岸パリ14区で、シトロエン・サクソ。


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日本食レストラン街として有名なピラミデ駅付近で。シトロエンBX後期型。

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パリ15区で夕陽を浴びるプジョー309。


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サルトルも眠るモンパルナス墓地で。3代目ホンダ・プレリュード発見。



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こんな“古典”もときおり。初代フォード・マスタング。


(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)
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大矢アキオ ロレンツォAkio Lorenzo OYA在イタリアジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。音大でヴァイオリンを専攻。日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。自動車誌...
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