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独特の目線でイタリア・フランスに関する出来事、物事を綴る人気コーナー
witten by Akio Lorenzo OYA
世界中
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文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA

日本では昨2019年の乗用車車名別新車販売台数で、トヨタ・プリウスがまたもや1位になりそうだ。いっぽうで、イタリアの2019年における新車登録台数は、なかなか興味深いものとなった(データはUNRAE調べ)。

本来ならば、ランキングは下位から上位へと向かうものだが、今回の結果は、逆のほうがより楽しめる。
第1位はフィアット・パンダ(138,132台)である。2017年(124,266台)比で11%増である。現行モデルは2011年発売だから今年で9年目のモデルとしては大健闘といえる。2019年のイタリア国内総生産(GDP)は僅か0.2%増。経済に本格的回復の兆しが見られない中、パンダは堅実な選択肢なのである。

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シエナにてフィアット・パンダ。乗っているのは、教会の修道女の方々だった。以下写真は、フェイスリフト前のモデルを含みます。

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ルッカ県の村で。フィアット・パンダ2台。




続く2位はランチア・イプシロンだ。台数は58,759台と、パンダの半分以下である。しかしながら、前年の4位から2ランクも這い上がった。
こちらも姉妹車のパンダ同様、花の(?)2011年デビューモデルだ。
イプシロンの強みをイタリアの自動車販売関係者は、「イタリア人が好きな“小さな高級車”感」と分析する。パンダより強いお洒落感を醸し出しているところが、ユーザー心をくすぐるのである。
前述のような経済状況下で「高級車には乗れない。でもパンダはちょっと」というドライバーを獲得しているのである。それは1950年代末から60年代、先代フィアット500の傍らで、その姉妹車であり、イプシロンの遠い祖先でもあるアウトビアンキ・ビアンキーナが一定の人気を獲得したのと似ている。
参考までにイタリアでランチアは、女性ユーザー比率が市販車中最も高いことでも知られる。新車購入見積もりを依頼するユーザーのうち、48%が女性である(driveK調べ)。ランチアは目下イプシロン1車種なので、それはすなわちイプシロンということになる。

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シエナのFCA販売店に展示されたランチア・イプシロン。

3位のダチア・ダスターは、前年の圏外から急浮上した(43,701台)。
参考までにダチアとはルノー・グループのサブブランドである。ダスターは日産-ルノーのB0プラットフォームを用いたSUVだ。今回の急躍進は「頭金なし。1日5ユーロ」といったキャッチーな残価設定ローンが功を奏したのはたしかだ。同時に、2018年に発表された現行モデルは初代と比べて格段にスタイリッシュで、“ローコスト版ルノー”のイメージが希薄なのも人気の理由である。依然続くSUV/クロスオーバー・ブームも人気を後押しした。


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シエナのルノー・ディーラーの一角は、ダチアの展示スペースに充てられている。右がダスター。

以下、4位フィアット500X(42,554台。前年3位)、5位ルノー・クリオ(41,792台。前年2位)、6位ジープ・レネゲード(41,683台。前年5位)、そして7位シトロエンC3(41,646台。前年6位)と続く。8位のフォルクスワーゲンT-Roc(39,600台)は初の圏内入りである。

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ジープ・レネゲードと熟練セールスマン2名。


9位には、トヨタ・ヤリス(36,805台)が入った。好調を牽引したのはハイブリッド仕様だ。かつてプリウスがイタリアに導入されたときと比べて、地方自治体などによる各種奨励金はあまり期待できなくなった。だが環境志向がトレンドともいえる高まりをみせる中で、「市街地走行では50%以上がEVモード」、またプラグインでないから当然なのだが「充電不要」といった巧みなキャンペーンが消費者の心に刺さったようだ。事実、我が街シエナでヤリス・ハイブリッドを購入した知人は、そうしたトヨタ・イタリアのPRにすっかり心酔したようで、筆者に「チャージしなくていい電気自動車とは素晴らしい!」と興奮気味に語った。
加えて、初代ヤリス誕生から20年が経過し、日本ブランドでは抜群の知名度を獲得していることもプラスに働いている。

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トヨタ・ヤリス・ハイブリッド欧州仕様はフランス工場製。エンジンルームが誇らしげに開けられて展示されていた。シエナで。


なお10位は、ジープ・コンパスがやはり初のトップ10入りを果たした。これもSUVトレンドの恩恵であろう。

最後に、2018年まではトップ10の常連であったにもかかわらず、今回から圏外となったモデルがある。1台はフォード・フィエスタ、そしてもう1台は、なんとあのフィアット500である。
思えば、デビューは2007年。2020年で13年選手である。そろそろ数字が落ち着いても当然であろう。同じ年に登場した日本のダイハツ・タントは、現在までに2回モデルチェンジしていることを考えると、いかに長寿であるかが窺える。

気になるのは新型500だ。Autocarは2019年8月、次期500の姿として、BMWi3のようなリアヒンジの後部ドアをもつ予想イラストを公開している。現行モデルから5ドア化に踏み切ったランチア・イプシロンが売れているのを考えれば、妥当な選択といえよう。
しかしながら、今や世界各地でフィアットといえば500である。どこまでキープコンセプトを図って、どこまで新しくするか。次期モデルのデザイナーたちが今感じているプレッシャーといったら、とてつもないものに違いない。

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フィアット500Cを満載した陸送車。



 

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フィレンツェにて。フィアット500。次期型の姿は如何に。
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大矢アキオ ロレンツォAkio Lorenzo OYA在イタリアジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。音大でヴァイオリンを専攻。日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。自動車誌...
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