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文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA

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トリノ自動車博物館(MAUTO)にて。2022年、常設展に新たに加わった1998年「フィアット・バルケッタ1.8 16V」。エクステリア・デザインは、のちにSUBARUに移籍するアンドレアス・ザパティナスによる。

ミュージアムに突如出現

フィアット・バルケッタ(1994-2005)が「歴史車」になりつつある、というのが今回の話題である。

トリノ自動車博物館(MAUTO)は、イタリアを代表するカーミュージアムのひとつだ。現在の建物は、この地で開催された国家統一100年記念博覧会に合わせ、前年である1960年に開館したものだ。収蔵台数は約200台にのぼり、地元ピエモンテ州、トリノ市、ステランティスそしてイタリア自動車クラブが運営を支えている。
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**MAUTOの外観。現在の建物は1960年落成。堂々たるファサードは、当時のイタリア自動車産業の隆盛をしのぶことができる。

現在の常設インスタレーションは、基本的に2011年のリニューアル・オープン時のものだ。しかし、2022年10月に筆者が同館を訪れたとき、順路の途中で、ある1台に目を吸い寄せられた。従来姿がなかった、オレンジ色の「フィアット・バルケッタ」だ。正確には1998年2月に製造されたフィアット・バルケッタ1.8 16Vである。1.8 16Vで、1998年2月に製造されたものと記されている。

解説板には、こう記されている。「イタリア製。ラインはソフトでダイナミック。そのスピリットは栄光のスポーツカーたちである。内外装ともすべてフィアットの社内チームによる。4気筒1747cc 130ps/6300rpm 200km/h」


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ノーズには、先に車両が登録されているクラブのステッカーと認証番号が貼られている。

博物館のダヴィデ・ロレンツォーネ学芸員に聞いてみると、「2021年にマルコ・ライヒト氏という愛好家から寄贈されたものです」と教えてくれた。レーシングカー/コンセプトカーそして企画展を除き、事実上最も若い、その展示車両は、熱いファンからの贈り物だったのである。
マリエッラ・メンゴッツィ館長によると、コンディションが良く、もちろん実動状態という。「私たちは、(贈られたことを)とても名誉なことに感じています」と語る。

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MAUTOのマリエッラ・メンゴッツィ館長。フェラーリ広報、オランダのヨット製造会社CEOなどを経て、2018年から現職。

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ダッシュボードは、フィアット製他モデルのパーツを巧みに活用しながらも、ネオクラシカルともいえる造型を実現している。

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トランクリッド上にはラゲッジ用ラックが付加されている。

後部に回ると、ラゲッジ用ラックに、3枚のメタル製プレートがある。1枚は「フィアット保存会」、もう1枚は「バルケッタ・クラブ・イタリア保存会」の登録証、そして最後のプレートには、デザインを担当したアンドレアス・ザパティナスと、当時ボディを受託生産した「カロッツェリア・マッジョーラ」のブルーノ・マッジョーラの直筆サインが確認できる。参考までにマッジョーラ社は、第二次大戦前に創業を遡る歴史的企業であったが、バルケッタ生産終了の影響が大きく、2004年に倒産している。

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「フィアット保存会」および「バルケッタ・クラブ・イタリア保存会」の登録証。

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アンドレアス・ザパティナス、ブルーノ・マッジョーラ各氏の直筆サインが確認できる。

フェラーリ以上の人気者?

ところでイタリアでは、製造後30年以上が経過し、かつオリジナル性など一定の要件を満たした四輪車および二輪車は「歴史的関連性証明書(CRS)」の申請が可能である。認定業務にあたっているのは、イタリア自動車クラブ(ACI)、イタリア古典四輪二輪車協会(ASI)、およびそれらの認証を受けたメイク別クラブなどである。CRSに認定されると、イベントへの往復・参加以外は運転できなくなるが、代わりに各種優遇措置が適用される。自動車税は通常年額数百ユーロを要するところが、ひと桁少ない数十ユーロに減免される。保険も7割程度安くなり、100~200ユーロ台(車両保険含まず)になる。

実はこのCRS制度、30年が経過していない製造開始後20〜29年の車両、いわゆるヤングタイマーにも同様の道が開かれている。ただし、こちらは車種・仕様が限定されていて、指定リストにあるものでないと申請できない。

この“飛び級”ともいえる枠のなかに、フィアット・バルケッタもしっかり入っている。1995年から2003年までに生産された16バルブ仕様(トリノ自動車博物館の車両も、これに該当する)、および2001年から2003年までに生産された「ナクソス」という仕様である。ヒストリックカー1年生といったところだ。

ところが、1年生と呼ぶには貫禄がありすぎるシーンを、博物館のフィアット・バルケッタで目のあたりにした。子どもたちに絶大な人気があるのだ。クルマに駆け寄ってポーズをとる子を、カメラに収めるお父さんもいる。筆者が確認したかぎり、歴史順に並んだ車両たちのなかでひとつ前に展示されている「フェラーリ365GT4 2+2」より、明らかに人気者だ。

 

バルケッタのメカニカル・コンポーネンツは「フィアット・プント」のものだ。普及版小型車をベースにしながら、スーパースポーツカーと肩を並べられるスタイリッシュなモデルを造るのは、かつてフィアットの真骨頂であった。価格が手頃かつ、十分個性的なイタリアン・ラナバウトが、再び現れないものだろうか。そうした期待を胸に抱きながら、ポー川沿いのミュージアムを後にした。

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バルケッタとともに記念撮影に興じる父子。


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参考までに、これは「バルケッタ・クラブ・イタリア」のミーティング風景。トリノのフィアット歴史的工場再開発エリア「リンゴット」で、2015年撮影。
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大矢アキオ ロレンツォAkio Lorenzo OYA在イタリアジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。音大でヴァイオリンを専攻。日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。自動車誌...
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