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独特の目線でイタリア・フランスに関する出来事、物事を綴る人気コーナー
witten by Akio Lorenzo OYA
世界中
うんうんする
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文と写真 大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA

 

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クプラのCセグメントSUV「フォーメンター」。VWMQB Evoプラットフォームを使用。エンジンはガソリン/プラグイン・ハイブリッド、駆動方式はFWD/AWDが用意されている。以下はいずれも2023年に筆者撮影。

 

「イタリアではイタリア車が多数派なのは当然」と思う読者諸氏は多いのではなかろうか? ところが実際は逆である。外国ブランド車のほうが圧倒的に多いのだ。20231-11月の国内登録台数(以下も同期間のデータ: 出典UNRAE)で、イタリア系ブランド車(フィアット、ランチア、アルファ・ロメオ、マセラティ、フェラーリ)の市場占有率合計は16.18%に過ぎない。VW(フォルクスワーゲン)グループのランボルギーニを足しても16.2%だ。逆にいえば、およそ84%は他国系ブランドなのである。日本の自動車販売台数で輸入車比率(日系ブランド車除く)が一桁台であるのと逆の状態といえる。


■新興ブランドが健闘

イタリアにおける外国系の登録台数首位はVW2位はトヨタである。ただし、それに続くブランドを見るほうが面白い。日本未導入のブランドが数々含まれているのだ。

まずはダチア。本欄で前回に紹介したとおり、ルノー・グループのサブ・ブランドである。近年イタリア市場で躍進目覚ましく、シェアは前年比30.56%増の5.6%・81,544台を記録。2023年通年ではフォード、プジョーそしてルノーを超え、外国ブランド3位入りは確実だ。従来からの“おねだん以上”的お買い得ムードに加え、近年は若々しさを押し出していることが成功の背景にある。

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ダチアのフルEV「スプリング」。


こんにち上海汽車系の1ブランドである「MG」も奮闘している。なんとイタリア系・外国系含め最もシェアを伸ばした。2022年が6610台だったのに対し、2023年は4倍以上の26,945台を記録している。そればかりかすでにアルファ・ロメオ(25,725)を抜いている。

 

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SAICMGSUVで爆発的にシェアを伸ばしている。


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フルEVの「MG 4エレクトリック」。


そのアルファ・ロメオに迫るのは、「DRモーター」である。フィアット販売店を経営していたマッシモ・デ・リージオ氏によって南部モリーゼ州に2006年設立されたブランドだ。中国・奇瑞汽車製モデルのノックダウン・キットの供給を受けての生産であるが、車台番号に刻印される生産国は、最終組立地に準拠するのでイタリア製である。発足当初の主力は価格勝負のシティカーやLPG/ガソリン併用のコンパクトカーであったが、近年はSUVのラインナップを充実させている。ベースとなる奇瑞車のデザインや質感が向上したのも追い風となっている。その数字25,275台は前年同期比25%以上の増で、MINIやテスラを超える。ちなみに、デ・リージオ氏は2022年に、幻のスポーツカー・ブランド「O.S.C.A.」の商標権をマセラティ家の末裔から購入している。

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Dr4.0」は奇瑞ティゴー4のノックダウン生産だが、独自の装備が加えられている。ベースモデルは1.5リッター・ガソリンで、LPG併用モデルも用意されている。「19,900ユーロ(312万円) から」という戦略的価格で売られている。


「リンク&コー」は、浙江吉利控股集団とボルボの合弁会社によるブランドである。その数3541台は、前年同期比12.7%だが、レクサス(3487)、スバル(2457)を超えている。202312月現在、唯一の車種は「01」と呼ばれるハイブリッド車だ。ボルボXC40と同一のプラットフォームを用いて中国の工場で生産されている。新興ブランドながら、月額600ユーロ(94千円)のサブスクリプションや、24-60ヶ月のリースといったプラン、さらにショールームの呼称を「クラブ」とするなど、次々と話題を提供し続けているのも奏功している。

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「リンク&コー01」。20232月ローマで。

 

VW系の「クプラ」も成長めざましい。こちらは前年比48%増を記録している。ブランドはもともとスペインのバルセロナを拠点とする「セアト」のスポーツ仕様に与えられていた呼称を2018年に独立させたものだ。

リンク&コーと同じ吉利系で、EV専門ブランドの「ポールスター」も2022年の僅か36台から2023年は833台と飛躍的伸びを示した。実際に、イタリアの都市部やアウトストラーダで見かけるようになった。

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「ポールスター2 イタリア国内でショールームは、2023年12月現在ローマとミラノのみ。整備は一部のボルボ・ネットワークが担当している。


ポールスターに続くのは、インドの「マヒンドラ&マヒンドラ」である。かつてピックアップトラックで欧州の足がかりをつくった同社だが、今日では価格的にリーズナブルなシティカーやSUVに軸足を移しつつある。2023年の数は833台にとどまるが、それでもフェラーリ(617)、ランボルギーニ(354)をはるかに上回っている。参考までに、マヒンドラ&マヒンドラの親会社は、イタリアを代表するカロッツェリア「ピニンファリーナ」を2015年から所有している。また、関連会社「マヒンドラ・レーシング」は、フォーミュラE2014年から参戦している。

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「マヒンドラ&マヒンドラXUV100 NXT」。


■お年寄りの足が店のお洒落カーに変貌

一般車の登録台数ランキングに上がってこないため台数は明らかでないが、欧州連合規格でクアドリサイクルと呼ばれる市街用軽便車にも新ブランドが続々参入している。

このカテゴリー、もともとは500ccの汎用ディーゼルエンジンが多く用いられていたが、近年脚光を浴びているのはBEVモデルだ。「XEV(エクシヴ)ヨーヨー」といった新興ブランドの製品が、いずれも個性的なデザインで登場。「軽便車=お年寄りの足」といった長年のイメージを塗り替えつつある。アイキャッチを兼ねて導入する商店も増えてきた。

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XEVヨーヨー」。イタリアのデザイン/研究拠点が開発に参画。中国で生産されている。イタリアでの価格は、エコカー奨励金適用後12,990ユーロ(204万円)から。


2024年は、中国系を筆頭にさらなるブランドがイタリアの乗用車市場に参入すると思われる。いっぽうで、ひっそりと市場から引退してゆくブランドもあるかもしれない。

イタリアといえば、この国の政権は1990年代以降、ときおり非政治家内閣もはさみながら、中道右派と中道左派の間を行き来してきた。自動車マーケットもそれに似て、きわめて流動的だ。ゆえに刺激的なのである。

 

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参考までに既存メーカーもクアドリサイクルに参入している。これはシトロエンの「アミ100%エレクトリック」。WMTCモードによる航続可能距離は75キロメートルにとどまるが、この規格に与えられた法規により、イタリアでは14歳から運転できる。

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大矢アキオ ロレンツォAkio Lorenzo OYA在イタリアジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。音大でヴァイオリンを専攻。日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。自動車誌...
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