■マイナーチェンジしたABARTH595+G-techの魅力
G-techのロゴが入った114Φのマフラーは見た目も迫力があり、しかし五月蠅過ぎず、丁度いい塩梅の音量で、乾いた良い音を奏でてくれる。
マイナーチェンジされたアバルト595のコンペティツィオーネは車としての熟成がさらに進んでいた。
硬すぎない乗り心地や、速いだけではない自分のコントロール下に収まる感覚といい、個人的にこれまで試乗したアバルト500シリーズの中でベストの1台に感じた。
MT車の良いところは何といっても自分でコントロールする感覚を味わえるところだ。
自分の力量に合った走り方ができる。そして自分の限界がどの辺にあるかを知ることができる。速さを求めたら他に速い車はどれだけでもある。速い車をコントロールできることの面白さがMT車にあり、とりわけアバルトはMT車と相性が良いように思う。だからこいつに乗るのなら圧倒的にMTモデルをお勧めしたい。
加速はというと、思わず笑いがこみ上げてしまう位、2,000回転ぐらいから盛り上がって3,000回転以上に行くと腹の底からウワーーっと浮き上がるような加速が体感できる。
そこから更に4,000回転までの加速もたまらなく面白い。腰のあたりを背後から強烈に押される感覚は、例えるとその瞬間、空を飛んでいるかのようだ。たったの1.4Lのエンジンから、これ程の厚いトルクと力強いパワーを生み出す車を他に知らない。スポーツモードとノーマルモードの切り替えができるようになっているのだが、スポーツモードにした時のブっ飛んだ感じはノーマルモードにはない感覚であり、決定的な違いがそこにある。
■ならでは、の演出
イタリア車はとにかく「その気」にさせる演出が上手い。このアバルト595も随所にイタリア車らしい演出が満載だ。
起動した際、ロゴが浮き出る。
サベルト製のシートのシェルはカーボンで構成されている。
細かなところまでデザインされたシート。内外装の黄色と黒の組み合わせのコンビネーションが最高にお洒落。
真鍮のシフトノブ。運転はドライビンググローブを着用したい。
こういう部分にも手を抜かない。
ABCペダルもアルミ製でABARTHのロゴ入り。
普通は購入してからアフターパーツで装飾するような細かなところまでしっかりと贅沢なパーツが投入されており、この車を作った人達は本当に車が好きでやっているんだな、と思う。
また、ノーマルモードとスポーツモードでは液晶ディスプレイの表示までも変わる。
これがノーマル。
スポーツモードにするとこうなる。
ある意味子供っぽいような演出も、実際に乗るとその気にさせられてしまうから、ウマい。
また、オーディオがBluetooth対応になったのも日常使いとしての利便性が大幅に向上したポイント。
高速道路に連れ出しても印象は上々だった。この小さなボディには考えられないような接地感で、ハンドル操作に素直に車が追従してくれる。一般道より上がるロードノイズは許容の範囲内だ。そして5速からでも加速していくフレキシブルさを持ち合わたパワートレイン。どこを切ってもマイナーチェンジ前のアバルトよりレベルが上がっている。
筆者は普段の足車からしてマニュアル車乗りだが、この595はとにかく扱いやすかった。
全てにおいて違和感がないのだ。初めて乗る車はその車独特の癖などがあって、乗りこなすのに若干時間がかかるし、試乗が終わるまでその違和感が取れない車も結構ある。しかしこのアバルト595コンペティツィオーネという車は、まったく違和感くを感じることが無く、クラッチのつながり・加速・ブレーキフィール・ハンドリングなど、どれを取っても自然で、最初から思いのままに運転出来てしまう。
熟成が進んだABARTH595。最大の買い時が来たのかも知れない。