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独特の目線でイタリア・フランスに関する出来事、物事を綴る人気コーナー
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文 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA
写真 AkioLorenzo OYA/Mari OYA/NH TorinoLingotto Congress /DoubleTree by Hilton Turin Lingotto/Hotel Maranello Village

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ホテル「マラネッロ・ヴィレッジ」の客室一例。2002年のF1マシンとミハエル・シューマッハのサインが。

イタリアにおける自動車産業の中心地を挙げるなら第一がトリノ、第二がモデナとその近郊マラネッロである。前者がフィアットを中心とするポピュラーカーの都であるのに対し、後者はハイパフォーマンスカー&エンジンの里といえる。筆者の勝手な定義では、トリノは愛知県豊田市、モデナおよびマラネッロは静岡県浜松市周辺である。
今回はその2都市で、クルマ好きなら必ず泊まってほしい4つ星ホテルを3軒紹介しよう。

今夜は「工場」に宿をとる

まずは“イタリアのデトロイト”と称されるトリノ。そのなかでリンゴットはフィアットによって栄えた街区である。中央駅であるポルタ・ヌオーヴァ駅から地下鉄で南に6駅めだ。
そこに建つ旧フィアット・リンゴット工場は、1916年にジャコモ・マッテ=トゥルッコによって設計された鉄筋コンクリート5階建ての建築物である。屋上には総延長約1kmのバンク付きテストコースを擁する。フィアットはここで1923年の操業開始以来、大衆車「トポリーノ」「500」など80車種を生産し、隣接施設では航空機も製造した。
1982年、工場は閉鎖される。最後の車種は「ランチア・デルタ」だった。
ただしフィアットは、ヨーロッパ近代産業史に残るこのビルを解体せず、イタリアを代表する建築家レンツォ・ピアノに大規模改装を託した。その結果、ショッピングモール、映画館、オフィス、そしてコンサートホールなどを包括した複合施設に生まれかわかった。

このフィアットゆかりの施設館内には、嬉しいことに2つのホテルが設けられている。
かつては2軒とも「ル・メリディアン」系だったが、現在はそれぞれが異なるホテルグループのものになっている。

ひとつは「NHトリノ・リンゴット・コングレス」である。
レセプション奥のレストランは、到着後の食前酒にもふさわしい。「Torpedo」の店名どおり、ワインレッドのフィアット製戦前型トルペード(オープンカーの一種)が迎えてくれる。
部屋に一歩入った途端目に入る天井の高さは、そこが工場であったことを物語っている。
部屋の向きは2つだ。旧フィアット本社棟――今日ではフィアット創業家による投資会社が使用しているーー側の部屋と、かつて毎日新車が運び出された鉄道駅側である。どちらもイタリア自動車史に思いを馳せるには、とっておきのロケーションといえる。

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トリノのフィアット旧リンゴット工場と著者・大矢アキオ。2021年7月撮影。

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旧フィアット工場棟は今日、複合商業施設&オフィスとして使われている。「NHトリノ・リンゴット・コングレス」もこの中にある。

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その客室内(ル・メリディアン・リンゴット時代に撮影)。

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隣接して残る旧フィアット本社棟。

もう1軒は、その母屋とT字型に交わる「ダブルツリー byヒルトン トゥーリン・リンゴット」である。こちらはル・メリディアン時代に「アート&テック」というサブネームが付いていたとおり、館内がよりモダンなデザインで仕上げられている。各フロアを貫通した巨大な吹き抜けにも目を見張る。
廊下の壁や室内には、レンツォ・ピアノによる構想図や詳しい設計図が展開されている。建築・デザインファンがしびれる演出である。

いずれのホテルも、トリノの名所・自動車博物館(MAUTO)まで徒歩約10分で行けるのがこれまた嬉しい。

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「ダブルツリー byヒルトン トゥーリン・リンゴット」


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吹き抜け。部屋からレストランに向かうたび、気分が高揚する。


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スイート・ルーム。室内にもレンツォ・ピアノが手掛けた図面が掲げられている。

NH Torino Lingotto Congress
Via Nizza, 262 10125 Torino ITALIA

https://www.nh-hotels.com/hotel/nh-torino-lingotto-congress

DoubleTree by Hilton Turin Lingotto
Via Giacomo Mattè Trucco, 1, 10126 Torino TO
 

フェラーリづくし、そしてもうひとつの喜び

次はフェラーリ本社工場があるマラネッロにご案内しよう。
この町は、オフィシャルのフェラーリ・ストアだけでなく、周辺には大小の跳ね馬グッズを扱うショップが連なり、さながら門前町の様相を呈している。

ただし、ホテルはフェラーリ本社から4km離れたポッツァ・ディ・マラネッロ地区にある「マラネッロ・ヴィレッジ」がお薦めだ。
宿泊棟は4つに分かれていて「SUZUKA」「LE MANS」「MONZA」そして「DAYTONA」とフェラーリが活躍した舞台の名称がついている。
部屋の壁はモデナ・イエローもしくはマラネッロ・レッドで彩られ、往年のフェラーリの勇姿が描かれたポスターが掲げられている。
リストランテは「パドック」「ピットレーン」、よりカジュアルに飲食ができるバールは「ストップ&ゴー」と、こちらも洒落たネーミングだ。ついでにいうとジムの名前は「ボディ・チューニング」である。
オフィシャルのフェラーリ・ストアも、小さな面積ながら併設されている。
廊下のカーペットの縁には、チェッカーフラッグとともに歴代モデルが記されている。ここを通るたび、自分の発進加速を試してみたくなるのは筆者だけではなかろう。
「フェラーリ458スパイダーの10分間ドライビング体験付き」といったユニークな宿泊プランも提供されている。

ここまで“フェラーリ度”が高いのには理由がある。施設はもともと2006年11月にフェラーリ社の社員および関係者の居住・滞在施設として開設されたものだからである。

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ホテル「マラネッロ・ヴィレッジ」

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たとえばレセプションでSUZUKA棟の◯号室と告げられたら、この建物に向かう。

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思わずダッシュしたくなる廊下のカーペット。

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いきなり「フェラーリ575M マラネッロ」のダッシュボードが。


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もともとは関係者用の居住・滞在施設として計画された。

Hotel Maranello Village
Viale Terra delle Rosse, 12  41053 Maranello (MO) ITALIA


今回紹介したホテルに初めて泊まったときの筆者は、クルマ度数の高さに、つい館内や施設内をふらついてしまい、寝床につくのが遅くなってしまったものだ。

ただし、自動車との近さを感じるのは、しつらいだけではない。
リンゴットの場合、同じ建物内には、ダンテ・ジャコーザ、セルジオ・ピニンファリーナをはじめ自動車界の名士を数々輩出した「トリノ工科大学」があり、学生の姿が絶えない。
モデナの宿でもたびたび若者たちと朝食の席で顔を合わせる。彼らの多くは、フェラーリが長年実施している研修プログラムを勝ち取った参加者たちだ。

デザイナーやエンジニアの卵たちの生き生きした姿や熱いクルマ談義に接するたび、イタリア自動車産業は、まだまだ明るいことを確信する。
“自動車系ホテル”には、こうした喜びもあるのだ。

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大矢アキオ ロレンツォAkio Lorenzo OYA在イタリアジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。音大でヴァイオリンを専攻。日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。自動車誌...
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