ふと、道路に目を向けるとひときわ素敵なスクーターが佇んでいた。
思わず目を奪われる。
美しい暗緑色に、地平線のようにまっすぐ伸びたイエローライン。どうやら最近のベスパのようだ。信号待ちをしているだけで凛々しいその姿は、信号が青に変わって走り出しても、私の目は追いかけ続ける。
ボディーに当たる光が移りゆく度に、その表情はコロコロ変えて魅せた。
甘美な60年代のレーシングスタイル GTS Super 300 Racing Sixties
このモデルの発表は2020年でしたが、2021年 2月、私も遅ればせながら試乗の機会をいただくことができました。
長距離ツーリングタイプのグランツーリスモに対して、レーシングな動力性能を持っているのが、この300cc(278cc)の排気量を備える GTS Super 300 Racing Sixties。
皆口を揃えて「史上最速のベスパ」と言います。
ベスパの誕生から75年間。こんなに長い間、愛され続けているバイクとはどんなものだろうと期待に胸を弾ませながら、いざ、試乗。
・・・速い!
仕事場への移動に使うものなら、まさに通勤快速です。
スクーターという見た目から、道路の段差をよく拾うのかと思いきや、ひょいっと楽々といなす、独特な感触。昔からベスパは「片持ちリンクアームのサスペンション」を採用していますが、これが個性的なハンドリングを生み出しているのです。
通常、コーナーを走る際は、エンジンブレーキをかけて曲がる人が多くいるかと思いますが、ベスパの場合は前後のブレーキを若干引きずりながらでも曲がってくれるという感覚があります。(※個人的な感想)
また、高い剛性を持つ「スチールモノコック」は、現代のスクーターの元祖となる構造であり、ベスパのシルエットを際立たせる特徴にもなっています。
機能面では、グローブボックス、ボタンひとつで開くシート下の収納、クロームメッキの荷台、コンビニフック等々、至れり尽くせりです。
ですが、何よりも、このバイクには不思議と「ベスパ」というただそれだけ充分。といった魅力があります。
甘美な60年代のレーシングスタイルを纏いながらも、現代の技術が織り混ざったベスパ。不朽の名作「ローマの休日」に思いを馳せながら、今日もロマンチックにバイクのある暮らしをしていきたい。
主要諸元
GTS Super 150 / 300 Racing Sixties : SPECIFICATIONS
ENGINE
形式
: i-get 4ストローク水冷単気筒 SOHC 4バルブ「スタート&ストップ」システム付 〔150〕
: HPE 4ストローク水冷単気筒 SOHC 4バルブ「アンチスリップレギュレーション」システム付 〔300〕
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総排気量
: 155cc〔150〕/278cc〔300〕
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最高出力
: 14.4HP(10.8 kW) / 8,250 rpm〔150〕
: 23.8HP(17.5 kW) /8,250 rpm〔300〕
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最大トルク
: 13.5 Nm/ 6,750 rpm〔150〕
: 26 Nm/ 5,250 rpm〔300〕
:
燃料供給方式
: 電子制御式燃料噴射システム
:
トランスミッション
: 自動無段階変速(CVT)
:
クラッチ
: 自動遠心乾式クラッチ
:
CHASSIS
フレーム
: スチールモノコック
:
サスペンション(前)
: 片持ちリンクアーム油圧式サスペンション
:
サスペンション(後)
: 4 段階スプリングプリロード調整機構付きツインショックアブソーバー
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ブレーキ(前)
: 油圧式 220mm ステンレススチール製ディスク ABS
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ブレーキ(後)
: 油圧式 220mm ステンレススチール製ディスク ABS
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タイヤ(前)
: 120/70-12"
:
タイヤ(後)
: 130/70-12"
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DIMENSIONS
全長/全幅/全高
: 1,950mm/740 mm/1,190㎜
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ホイールベース
: 1,350 mm
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シート高
: 790mm
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燃料タンク容量
: 7(±0.5)ℓ〔150〕
: 8.5ℓ〔300〕
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車両重量
: 140kg〔150〕
: 160kg〔300〕
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製造国
: ベトナム
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