世の中には値段のつかないものというのがある。いわゆるプライスレスというやつだ。しかし、その言葉はタダと解釈されやすいが、実際にはお金に変えられないという意味合いが正しいとボクは解釈している。
今日は午前中から双新電子という会社にお出かけしておりました。ここは様々な試作や設計、そして小型EVを手掛けている会社なのですが、社長は’88年よりTOYOTAのCカーを手掛けている方です。今日は今を去ること1年前に依頼された仕事を果たすべくやってきました。そうレジンキットのTOYOTA93CVを収めるためです。実はここの社長はこの93CVに並々ならぬこだわりがありました。なぜ93CVにこだわったのか?それはこのショーケースを見ればわかる通り、自身の手掛けたすべてのCカーが並んでいて、唯一93CVだけが存在しなかったからでした。いえ、実際にはレジンキットは存在していました。ですからお願いできたのですが、このレジンキットというのが曲者で何しろ毎ル・マンごとに作成するわけですからいくつも作らない上に、決して人気があったわけでもない(当時TOYOTAとしては主軸はST010)このクルマのレジンキットなど大して生産されなかったわけです。それを社長がサルテを引き上げるときに発注、翌年には制作されるのですが、これが届くのに1年待たされ、おまけに作れそうな人に頼んでも結局は戻ってくるという(笑)実に20年箱の中で眠る代物でした。
そんな折、ボクに社長から「これを頼める人がいないかなあ?」と言われ友人伝手に行きついたのがモデラ―Poo熊谷氏でした。各モデリング雑誌をご存知の方もおいででしょうが、氏は第一線で活躍するモデラ―です。本来個人の依頼は受けておりませんが、ありがたいことに受けていただき、この今日の運びになりました。
ル・マンのその年にしか作成されないキット、もちろんレジンキットなのでいくらもありません。間違いなく国内唯一、もしかしたら世界中を探しても完成品はこれだけかもしれません。
収まるべきところに収めるべく作成された一品、このプライスレスにかかわったすべての人に乾杯!