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witten by 嶋田智之
世界中
うんうんする
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1990年代に空前のアウトドア・ブームっていうのがあった。バブルがパーン! と弾けて、それまでの豪華なホテルでシャンパン抜いてフレンチに舌鼓を打ってみたいな脂っこい絵空事のような遊び方へのアンチテーゼのようにして、週末になると街を脱出することを決め込む人が加速度的に増えていった。ルアーやフライのフィッシング、カヌーやカヤックでの水上クルージング、テントを張って焚き火を囲んでウヰスキー、なんて具合。他にもあれこれあった気がするけど、それほどコストをかけなくてもたっぷりと週末を遊べるとあって、“野遊び” がグッと市民権を得たのだった。……僕はめんどくさがりだったから手を染めなかったけど。
 
その後しばらくして徐々に下火になっちゃった感じがあって、でも今、再びブームが静かに燃えてるみたいだ。ケータイ&スマホやインターネットの世界が加速度的に発展したことによるインドア・カルチャーが蔓延し、外に出ないのが当たり前っていう風潮まで生まれちゃってたけど、きっとそれに対するアンチテーゼみたいなもんなんだろうな、と思う。一昨年あたりからそっち方面のキーワードをあちこちで耳にするようになって、去年は気づくと知人がわりと頻繁に週末キャンプへ出掛けたり彼らからお誘いがあったりで、今もめんどくさがりなのは変わらないからバーベキューだけ参加させてもらったりはしたけど、まぁそんなふうに門外漢にもそこはかとなく実感できるほどには流行ってる。
 
そういえば古巣の“Tipo”でも──まぁいつもながら編集スタッフが遊びたいって言うのが第一なんだろうけど──何度か“エンスー車でキャンプ”ってな感じの記事を展開してきたし、ちょうど今、本屋さんに並んでる号でもキャンピングカーの小特集をやってたりする。
 
まぁ……気持ちは解るのだよね。日常にそれほど不満があるわけでもないけど、僕にだってときどきパーッ! と外に飛び出したいときっていうのはある。“ここじゃないどこか” に行きたくなるのだよね。できればその場にいるだけで気持ちが丸く穏やかーになっていくような景色の中で、ごはん食べて酒を飲んでスカッと眠ったりできたらいいなー、なんて。
 
でも、繰り返すようだけど、僕はホントにめんどくさがり。たぶん全日本めんどくさがり選手権とかがあったら、確実に上位にランキングされるほどのダメ人間だ。目的地まで延々と走るのは全然オッケというか望むところぐらいの気持ちはあるし、テーブルやイスを出したりとか簡単な料理──我ながらいつも壮絶に不味いと思う──を作ったりとかはいいにしても、複雑なテントを張ったりするぐらいならクルマの中で身体を折りたたんで眠る方がいいや、ってなぐらい……。
 
それでも気持ちのいい風景の中で美味い酒を飲んだり眠ったり……みたいなことは将来的にしてみたいのだよねぇ……なんて思ってるのは確か。
 
そんなタイミングで、このクルマの存在を知っちゃったのだ。
 
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ルノー・カングー。
 
そう、カングーなんだけどね。
 
間違いなくカングーなんだけど……。
 
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ほら、こんなふうに頭が持ち上がる。そう、これはルノー・カングーをベースにしたキャンピングカーだ。名前はポップアップ・ルーフにちなんで『カングー・ポップ』。ホワイトハウスのキャンピングカー事業部が手掛ける、かなりグッと来るスモール・キャンパーだ。
 
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カングー・ポップの最大の特徴はもちろんそのポップアップ・ルーフで、ルーフが閉じてるときにはカングーのスタイルを全く壊してないくせに、ガバッ! と開くと天井に1800mm×1020mmのベッドルームができちゃうこと。個人的にはヤローと並んで横になるのは謹んで御遠慮申し上げたいところだけど、大人ふたりが並んで眠ることはできそう。
 
でも、それだけがカングー・ポップの偉いところってわけじゃなかった。
 
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このポコッと置いてあるだけだと「何だコレ……?」としか思えないもの……。
 
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専用設計と思しきそれを、こんなふうにラゲッジ・ルームにピタリと収めると、車室内がいきなり本格的キャンピングカーに変身しちゃう。これは“マルチリビングベッド”と呼ばれる仕組み。
 
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オレンジ色のマットの下で折りたたまれていたフレームを、倒した後席のシートバックの方に伸ばして……。
 
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さらに広げて……。
 
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その上にオレンジ色のマットを敷けば、ここにも快適なベッドルームができ上がっちゃうってわけ。その気になれば4人でキャンプができちゃうのだね。
 
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で、セッティングを変えれば、こんなふうにリビングとしても使えちゃう。大人4人に対してものすごーくルーミーだとはいえないスペースだとは思うけど、キャンプみたいなときは、ちょっとした狭さってちょっとした楽しさに繋がったりもするからねー。
 
010rkg.jpg
 
しかもこのマルチリビングベッド、もうひとつ仕掛けがあって、リアのゲートを開けるとスライド式のギャレーを使うこともできちゃう。簡単な煮炊きや水仕事もできるっていうのは、いいよねー。工夫次第ではもっともっと可能性を広げることができそうだし……。
 
普段は乗り味やわらかくて小回りも効くアシとして使い、週末には魔法のマルチリビングベッドを積み込んで、彼女とふたりで宿もないような特別な風景の中にエスケープ? 家族揃って大自然に近い場所でお手軽キャンプ? 使い方、さまざま。
 
僕なんてひとり者だし、クルマであっちまで走ってひと仕事したらそのまま全く別方向の違う場所に移動だとか、あるいは同じエリアに2日続けて行くだとか、そういうことも結構あるわけで、これ1台あればわざわざ自宅に戻る必要のない移動オフィス兼ビジネスホテルとしても使えるよなー。というか、日帰り温泉とか銭湯とかを上手く利用して風呂の問題さえ解決できれば、もうほとんど住めるレベル?
 
……ってなことを考えてる時点で何だかちょっと失格のような気がしないでもないけど、でもね、このカングー・ポップ、仕様その他で異なるけれど、値段は293万3200円〜457万7200円なのだとか。思ってたよりも断然現実的でしょ? こうなっちゃうと、今すぐ欲しいわけでも必要なわけでもないけど、あちこちに向かって広がっちゃうのだよねー、妄想が。
 
やばいなぁ。いつもミラフィオーリとかトリコローレに出展されてるホワイトハウスさん、実車、イベントに持ってきてくれないかなぁ……見たいなぁ……。
 
あ、そうそう。まだカングー・ポップは掲載されてないみたいだけど、ホワイトハウスさんのキャンビングカー事業部のURLを最後に記しておくので、皆さんも思いきり妄想を広げてねー。
 
◎ホワイトハウス キャンピングカー事業部
 
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