「恐れ入ります。お疲れ様ですー。警視206から四谷宛て。えー,マル簡願います。場所にあっては...」
ここ半日,簡易鑑定依頼が所轄署に鳴り響き続けて居た。新宿通りや外苑東通り付近で第2自動車警ら隊が精力的に職質し,大麻や覚醒剤を発見する事から逮捕前に所轄署に連絡し,簡易鑑定を依頼して来るのだ。新宿通りは第1自動車警ら隊の管轄とも隣接し,「第4方面」に所属する四谷警察署は管内のすぐ隣には麹町警察署もあり,大雑把な挙動の人は職質され易い界隈なのだ。
この界隈は世界的に重要な皇居付近や警察庁など中央省庁もあり,右左翼対策,反省庁デモ対策などでもかなり警戒して居る地域で,警視庁はどうにかして署員の負担を減らしたいが,急訴階層は幅広く,慢性的な体制不足が本州側の管内で解消されないで居た。
外苑東通りで四谷1が偶然にも赤坂2とばったり会った。四谷署員が職質中の現場に赤坂署員が公務執行妨害の追跡し,確保した場所が重なって居た。
四谷扱いにしても赤坂扱いにしても両方とも凶悪犯で捕まえるのに10台もパトカーが集まって居た。
「最近よー,やったらマル簡多く無い?」
「自らとか深川の遊撃でしょ?そうそう。ぶっちゃけた話,クラックだつったら見に行くからね。ハーブの見間違いが殆どだけど」
「確かに俺も自ら時代,やったけどよ,まだハーブがはやって無かったからね。昔の歴ありの野郎がハーブ食う事はあったろうけど,始まりがハーブっつーのはその辺の小僧や主婦とかばっかだからね。自らとか遊撃と為ると片っ端からマル簡鳴きしてん訳じゃねーと思うんだけど」
「特に今日の当直はきついわ。2自らからのマル簡ばっかじゃん」
「ほら。今日は噂の忍込とか言う指導員が来てんからよ。何でも四谷の3丁目ばっかでもう35回も照会とか応援とか呼んでるらしいよ」
クラウンのパトカーの無線が鳴り響いた。
「警視206から警視庁ー。先,保険証照会の柄着ですが,とりあえず現職に対して小突いたんでパッキン確保,制圧状態です。どうぞ。」
「警視206,尚,先の通り,異臭からのクラック事案でしょうか?」
「警視庁,えーその通りです。喉が渇いたとしきりに訴えております。唇からから真っ白けです,どうぞ」
四谷署員は赤坂署員と顔を見合わせ,思わず苦笑いした。
「どんまいだな」
赤坂署員が四谷署員を見送りながら言った。
「うーるせぇよ。そぉん内,赤坂にも無線飛んで行くっぞ」