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車を運転して岐阜から市川に向かって走って居ると,警視庁の第1自動車警ら隊のパトカーに呼び止められた。
「警視141から123警視庁照会宛てー。現在地点,本所管内,両国小学校の北側にて,自動車の確認を願いたいー。」
運転手の巡査部長が相勤の警察官を見送りながら無線を操作した。
「警視141,どうぞ。」
「えー岐阜ナンバー330箒のほ19#5,車種は◯に為ります。どうぞ。」
「警視141,該当は,えー交通違反,本日14時5分頃,4交機が新宿管内で取り扱いあり。尚,現在までのところ当該に被害届事実はありません,どうぞ。」
「警視141,了解しましたー。
尚,相勤PMが現在から職質聴取開始中,当方もこれより降車し離れます。どうぞ。」
「警視庁了解。」
「何なんだよ。さっきも止められるしよー。よそもんいたぶって楽しいかよー。」
運転手の男が現職らに食って掛かって来た。
「もう怒らないで怒らないで。」
「うちら地域のでさ,違反とかでっつーんじゃ無いからさ。安心してよ。俺も非番で家内とデートしてたら捕まった事あんから鬱陶しいの分かるよ。分かるけどさ,車を利用してるお客さんに呼び掛けで回ってるんで。」
「免許証あります?え?不携帯か。じゃ氏名と記載されてる方の住所を願えますか。」
警察官が2人で対応する。身分証不携帯の者はたまに指名手配や強盗犯や痴漢行為逃走者の事があるが,身振りや顔色からどうやらたまたまの不携帯の様で今のところ自ら隊の感じる不審感は無い。
「へぇー難しい地名だね。ありがとうございます。ちと無線で確認さしてね。」
再び運転して居た巡査部長がパトカーの無線の元に戻る。
「つか都内は職質,多く無い?」
「え?そっすかぁ?岐阜なんかはあんま無い?」
相勤の巡査部長が何気無く受け答えした。
「うち地元が愛知県と接してんだけど,名古屋でもここまでじゃ無い。」
「えーでも俺名古屋出身で向こうの警察にも知り合い何人か居るけどさ,地域は広域技能が居るでしょ。結構うるさく無い?」
「えー,停めらんないなんて舐められてんのかな。」
「ハハハ。いいじゃない,いいじゃない。怪しまれないっつー事だよ。いや,実際問題さ,都内と県警の職質は,うちらのいい悪いの話じゃ無くて,場所柄きつく為らざるを得ないっつーのがあんだよね。ほら,お客さんみたいに東海地方の岐阜からいらっしゃってるし。」
丁度パトカーのドアが開いた。
「手間とらせちまって。確認とれました。ごめんなさいね。」と相勤者が小走りにやって来た。
「だけどさー,交通は車関係ではうっせーの多いからさ。まぁた,ごたごたに為らないように運転お願いしますよ。地名表示も遠くだしさ。悪いけど突っ込まれやすいと思うから。」
「こちらこそ。気ぃ付けてディズニーランド行ってきます。」
「あああ。そいでこっちの方だったんだね。」
助手席の相勤者の巡査部長は終始穏やかだった。
「はーい。御気を付けて下さい。」
警視141はその後,4丁目の細い道から京葉道路に出ようとした時だった。
大型二輪が江戸川の方からセブンイレブンの方へ突っ込んで来る。やや速度が速い。
「あれ?そう言えばさっき逃げてる単車の流れてたよな。」
運転手の巡査部長が呟いた。相勤者はさっきの解放した人を聴取するので,無線を絞って居て知らなかった。
赤灯を点け,緊急走行した。エンジンを凄ませた。
「警視141から警視庁ー。えー京葉道路の両国3丁目交差点付近にてナンバー隠蔽の二輪を現在からマル追,職質試みる。」
「警視庁から警視141,該二輪は先15000のマル被車両の可能性あり。強盗傷害未遂の可能性あるので連携を意識されたい。」
呼び出し音が鳴った。
「警視庁から本所管内,両国地内,京葉道路付近にて重点警戒せよ。危険走行バイク,取り扱い留意,交通執行も願いたい。以上警視庁。」
都内は,お巡りさんと100メートル離れた所の現場の状況は全く違う。また,解放した次の瞬間に別の職質を始める事も珍しく無い。
年末に故郷に戻る在京市民が居る一方,娯楽の為に首都圏に訪れる人も多いだろう。その際,都内を通り掛かったりする時はどうか大雑把では無い格好で御願いしたい。
警視庁の現職警察官を楽させる気遣いは必ず地元の治安維持にも繋がるから。まじめに生きることに積極的であって欲しいと思います。