数年前、マツダの新型ロードスター(ND型)をベースにアルファロメオが新型のスパイダーを開発するとの噂が話題となった。
一昔前、クオリティの低さに悩まされたイタ車ユーザーにとって、一度は夢見たことがある”イタリアンデザイン+ジャパンクオリティ”という夢のコラボレーションが実現すると色めきだったことを覚えている。
結局はアルファロメオの新たなブランド戦略と共に変更となり、より身近なフィアット&アバルトから”124 スパイダー”としてデビューした。
発表以来、輸入車好きにはもちろんのこと、日本国内で生産されるイタリア車ということで、国産車ユーザーからも注目され、昨年末に発表された”2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤー”でも10ベストカーに選出されるなど、デビュー以降も話題は尽きない。
エクステリアは、1966年に発表された初代フィアット124スパイダーのオマージュとしてデザインされている。
初代124スパイダーを知っている世代にとってはフロントマスクに往年の懐かしさを感じ、知らない世代にとっては近年にない独特な雰囲気のデザインに新しさを感じるのではないだろうか。
フィアット500が復活した時もそうだったが、新旧どちらの世代にも受け入れられる絶妙なデザインが新世代アバルトの魅力の一つとなっている。
幌の形状もロードスターと同様だが、このボディデザインでもしっかりマッチしていた。
開閉方法もセンターロックのみなので、だれでも簡単に操作でき、気軽にオープンドライブ楽しめる。
蛇足だが、デビュー時に用意されていたボディーカラーのメタリックブルーはカタログ落ちし、現在はソリッドレッド、ソリッドホワイト、パールホワイトの3色のみ選択可能となっている。折角のオープンカーなので、今後はイタリアらしいビビットなボディカラーが加わるのに期待したい。
個性的なエクステリアに対し、インテリアはほぼロードスターのデザインを踏襲したものとなっている。
個人的にはアバルトオリジナルデザインのインテリアも見てみたいとも思うが、コストを抑えつつも要所にロゴやカラーアクセントを追加することで上手く雰囲気作りをしているところにアバルトらしさを感じる。
エンジンはアバルトチューンされた4気筒1.4Lターボエンジン。奇しくも初代124スパイダーが当初搭載していたエンジンと同排気量だが、ターボによる過給により170ps/250Nmを発揮する。また限りなくリア寄りに搭載され前後重量配分の適正化に寄与している。(前610kg、後520kg→前54:後46)
早速、試乗してみる。
今回試乗できたのは6速マニュアルモデルであるが、6速オートマチックもラインナップされている。また国内では右ハンドルのみである。
ドライビングポジションは定評のあるロードスターそのものなので、まったく違和感はないが、見える景色はロードスターに比べだいぶノーズが長く感じられる。
走り出しは1.4Lという排気量からか、ややトルクの細さを感じるが、軽量なボディゆえ気を使うほどではない。ちなみにロードスターと比較すると車重は約100kgほど重くなっている。
3000回転を越え、本格的にターボが効き始めるとかなりの加速感が得られる。車重に対して分厚いトルクが出続けかなりの速度までこの加速感が持続する。これは速い!1.5L NAのロードスターとは一線を画すパワー感に思わずステアリングを握る手にも力が入る。過給が利いている回転域ではアクセルの付きもよく思い通りのドライビングができる。楽しい!
トランスミッションは先代ロードスターのものが搭載されているということだが、ショートストロークでカチカチと決まる。この試乗車ではミッションの入りに多少の渋さを感じたが慣らしが終わればスムースになるのかもしれない。
ひとつ残念な点があるとすれば、音だろうか。スポーツNAエンジンのような回すほど高まるような官能的な音はもとより期待できないにしても、飾り気のないターボエンジンのエキゾーストはなんとも寂しい。ここはオプションで用意されているレコードモンツァのマフラーを是非とも装着したいところだ。
サスペンションは硬めのセッティングになっているがバタつきや不快な突き上げは無く、高剛性のシャシーによって路面変化をしっかり受け止められていた。当然だが内装の軋み音等は皆無。
全体的な乗り心地の印象としては、軽量オープン2シーターのイメージとは少し違ったドッシリ感を感じた。これは205 45 R17というロードスターより一回り大きなタイヤサイズも影響していると思われる。
フロントにブレンボ製4ポットキャリパーが装着されており、タッチの剛性感、リニア感、制動力ともこのクラスの車には十分な性能。
非力ながら元気よく回るエンジン、柔らかめの足回りで軽快なハンドリング、など”軽量”を全面に生かしたロードスターに対し、多少増えた重量をハイパワーなエンジンとサスペンションチューニングでバランスよくカバーし、ハイスペックながらもある種の落ち着きも身に着け”大人のスポーツカー”の一面も見せるアバルト124スパイダー。キャラクターの違いはその成り立ちから想像するよりはるかに明確になっていたが、こと”ドライビングの楽しさを追求している”という点においては、どちらも共通の想いを感じられた。
主要諸元 [ ]内はオートマチックの値
全長×全幅×全高:4,060×1,740×1,240mm
ホイールベース:2,310mm
車両重量:1,130[1,150]kg
エンジン種類:直列4気筒 マルチエア 16バルブ インタークーラー付ターボ
排気量:1,368cc
最高出力:125kW(170ps)/5,500rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/2,500rpm
トランスミッション:6速マニュアル[6速オートマチック]
駆動方式:後輪駆動
燃料消費率(JC08モード走行):13.8[12.0]km/L
メーカー希望小売価格:388.8[399.6]万円(消費税込)
アバルト公式サイト:
http://www.abarth.jp/