英国の伝統ある自動車メーカー「ジャガー」。読者のみなさんはこの「ジャガー」というブランドにどんなイメージをお持ちだろうか。多くの方はその優雅なスタイリングと、上品な落ち着きのあるインテリアを持った“サルーン”を思い浮かべるかもしれない。しかし、ジャガーにはそれらのサルーンとはまるでイメージの違うスポーツカーが存在する。その一つが今回ご紹介する「Fタイプ」である。
このFタイプには車型が2つあり、ひとつはオープンモデルの「コンバーチブル」、そしてもうひとつは流麗なリヤスタイルが特徴の「クーペ」である。Fタイプは2013年に日本導入時にはコンバーチブルしか用意されていなかったが、昨年新たに「クーペ」モデルが加わったわけである。
今回の試乗車は最もベーシックなモデルであるが、しかし価格は1,000万円を超える。このモデルに搭載されているエンジンはV型6気筒3.0L DOHCエンジンにスーパーチャージャーで過給をし、最高出力は340ps(250kW)/6,500rpmを発生する。組み合わされるトランスミッションは8速ATである。
それでは早速乗り込んでみよう。まずはルーフをオープンにして試乗をスタートする。エンジンを始動した時の「音」はただものではない音がする。いわばイタリアなどの高級スポーツカーのような排気音を奏でるのだ。
そして、早速発進時にちょっとアクセルをラフに踏んだら、ホイールスピンを起こすほどのパワーの持ち主で、この上にある5.0リッタースーパーチャージャーエンジンを搭載したモデルはどんなに速いのかと、逆にそこまで必要あるのだろうかと感じたほどである。
オープンカーでまず取り上げなければいけないのはやはりそのボディの“剛性感”であろう。実はこのFタイプはオールアルミのボディを採用している。しかし、実際の車両重量は1.7tをやや超えるあたりであり、相当にボディの補強をしているということが良くわかる。なるほど、実際に走らせてみるとオープンカーであるネガな印象がまるでない。路面の凹凸を超えた時にフロアが震える印象や、ルームミラーがぶれるようなこともない。ボディはガッチリしている印象に、感心させられた。
そして、次に驚くのはその乗り味である。もちろん、スポーツカーであるから、それなりに締まった印象ではあるが、硬くて不快というものでもない。このあたりの味付けが非常に絶妙であると感じたところである。
このFタイプでうれしいのは50km/h以下ならば走行中にルーフの開閉ができることである。さらに、これに要する時間が12秒というのだから、本当に気軽にオープンにできるのが嬉しい。
ステアリングの印象は言わずもがな、スポーツカーらしく非常にクイックである。これほど俊敏にステアできる印象は、運転を楽しむドライバーにとってはたまらないものだろう。
そして、風の巻き込みはサイドスクリーンを上げた状態であるならば、ほとんど感じることがなく快適にオープンドライブを冬でも楽しめる。もちろん、シートヒーターは採用されているが、それに加えてステアリングホイールのヒーターまで装備されているという贅沢なものである。
ちょっとしたことでドライバーを楽しませる演出もいろいろと盛り込まれており、ドアを開けるドアハンドルが通常は格納されているものが、ドアを開けるときには立ちあがったり、中央にあるエアコンのベンチレーション吹き出し口は自動で立ちあがる仕掛けがついていたりと非常に面白い。
2人乗りのオープンモデル、価格は1,000万円を超えるということから、一般ユーザーにはなかなか縁のないクルマであるのは間違いない。しかし、ジャガーはエレガントなサルーンしか作らないメーカーと思いきや、なかなかどうしてこれほど刺激的なオープンモデルが、それも高い完成度で成立させることができるメーカーであるということに驚かされた。
主要諸元
全長×全幅×全高:4,470×1,925×1,310mm
車両重量:1,730kg
エンジン種類:水冷V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
排気量:2,994cc
最高出力:250kW(340ps)/6,500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3,500rpm
メーカー希望小売価格:1013万円(消費税込み)
公式サイト:http://www.jaguar.co.jp/jaguar-range/f-type/index.html