今回のJAIA輸入車試乗会でカーくる編集部は3台のSUVに試乗する機会に恵まれた。
BMW X5、レンジローバー スポーツHSE、そしてJeep グランドチェロキー SRT8だ。
これらの車両はそれぞれに個性がハッキリしており、ユーザーはその魅力の違いをある程度は把握している。
ただ、日本人にとってSRT8が一番イメージが薄いのではないか?
今回皆さんに紹介するのはその Jeep グランドチェロキー SRT8だ。
実際に編集部員も現行グランドチェロキーは一度も試乗した事が無く、トップモデルのSRT8があるのであれば一度乗ってみたい!という思いから、 今回の試乗候補に選出した経緯があった。
要するに、『アメリカンSUVをちょっと試してみよう』という軽い気持ちだったのである。
だが、コンパクトカー、ラジュグアリーカー、スポーツカーと今回多くの輸入車を試乗する中で、この試乗記を閲覧されている多くの皆さんに一番その 魅力を伝えたいと筆者が思ったのがこのグランドチェロキーSRT8なのだ。
グランドチェロキーは1992年にフォード・エクスプローラーの対抗車種として登場し、現行モデルが四代目となる。
ダイムラー・クライスラー時代 に開発が開始された事で、メルセデスベンツ・Mクラスと共有のプラットフォームを持つ。
そして今回、現行モデルとして大きなマイナーチェンジを行い、フロントマスクの意匠変更、インテリアのグレードアップ、さらにはトランスミッショ ン等を大きく進化させた。
SRT8の外観は、パッと見の雰囲気が強面(こわもて)だ。
特徴的なブラックのハニカムメッシュをクロームベゼルで縁取ったフロントグリル、アンダーボディと一体型のブレーキダクトなど、押し出しの強いフ ロントマスクはボリューム感に溢れていて只者ではない雰囲気を醸し出す。
インテリアはクロームパーツとカーボンプレートが多用し、8.4インチのタッチスクリーンを中央に配して単純にカッコ良いと感じるパネル回りだ。
質感の高いレザーシートはスポーツバケットシートとなっており、固めの座り心地のなかにもシットリ感もあり、これも好印象だった。
Jeepの名前から想像する無骨で樹脂が多用され、コストパフォーマンス重視のインテリアのイメージとはかけ離れており、試乗したSRT8の性格もあるが、大変スポーティかつ高級感漂う内装にまとまっている。
グランドチェロキーのモデルラインナップは3.6リッターV6エンジンの「ラレード」と「リミテッド」、5.7リッターV8の「サミット」、そし て6.4リッターV8の「SRT8」の4グレードとなっている。
SRT8の心臓部にはクライスラー伝統のレーシングエンジンのV8 HEMIが与えられ、最高出力は470馬力、0-60mph(約100km/h)の加速時間はわずか4.8秒、最高速度は255km/hとスポーツカー顔負けの動力性能を誇る。
また、今回のマイナーチェンジでは8速ATを搭載した事も注目すべき点である。
V8 HEMIの能力を余すことなく発揮させるのは勿論、燃費の向上にも繋がっているのだから、ガソリンが高騰しているこの時代には嬉しいポイントになっている。
さて、テストドライブの時間だ。
ドライビングシートに乗り込み、ハンドルを握るとほんのりと暖かい。
試乗当日は前日の雪で大変寒い日となっていたが、ヒーテッド革巻きステアリングホイールのありがたさを感じた。
さっそくエンジンに火を入れてテストドライブに出発する。
V8 HEMI から響く低音の効いたアイドリング音が期待感をそそるが、気を落ち着かせて西湘バイパスへ入る。
大きなボディのSRT8をどうやって合流させるか一瞬迷うが、思い切ってグッとアクセルを踏み込んだ。
力強いエンジンと排気音が室内にも響き、予想以上の加速力が筆者の体をシートに押し付ける。
さすが、470馬力は伊達ではない。
V8 HEMI から伝達されるパワーは足元の20インチ鍛造アルミホイールとタイヤ達が地面に伝える。
グイグイ加速し続け、緊張と共にハンドルを握る手にも力が入る。これは面白い!
アイポイントが高く見晴らしの良いドライビングポジションでスポーツカー顔負けの加速と高速クルージングを西湘バイパスで楽しむ。
大型のブレンボ製ブレーキ(フロント6POD、リア4POD、ローターはフロント15インチ、リア13.8インチ)は高速からの減速も力強く行ってくれるので安心だ。
降雪明けの試乗日は、空の雲間から日差しが降り注ぎ、クルージングするブリリアントブラックのボディを美しく輝かせる。
あっと言う間にテストドライブコースを走り終えた後、正直、これほどの官能的なテストドライブを予想していなかった為に驚きを隠せず、興奮してい る自分を感じた。
チョイ悪を通り越して、前を走る車のドライバーに威圧感を与えるほど只者ではないオーラを発するデザインは、これまでSUVを所有した事の無い編 集部員達にも好評だ。
そしてスポーツカー顔負けのエンジン音と排気音は試乗したすべての編集部員の五感に訴えかけた。
クライスラーがただのSUVとしてではなく、ワールドマーケットを見据えてポルシェ・カイエンを初めとしたスーパーSUVを相手として作り出した グランドチェロキー SRT8
724万5千円と言う値付けも大変な魅力で、この価格はポルシェのカイエンターボの半額以下である。
ベースモデルのカイエンと同じ価格で、ターボモデルとほぼ同じスペックの車両を手に入れられるのが嬉しい。
Jeep グランドチェロキー SRT8
この1台は是非とも自分で乗って操り、五感で評価に値する一台であるとして紹介を終えたいと思う。
Jeep グランドチェロキー SRT8[2014年モデル] 主要諸元
全長×全幅×全高:4835×1985×1800mm
ホイールベース:2915mm
車両重量:2400kg
駆動方式:フルタイム四輪駆動
エンジン種類:V型8気筒 OHV
総排気量:6416cc
最高出力:468ps(344kw)/6250rpm
最大トルク:63.6kg-m(624Nm)/4100rpm
トランスミッション:電子制御式8速AT
燃料:無鉛プレミアムガソリン
全国希望小売価格:724万5千円(消費税込み)
Jeep 公式サイト:http://drivesrt.jp/