REDPOINTが仕立てるアバルト124Spider
レッドポイントさんのお店紹介に続き、デモカーのアバルト124スパイダーをご紹介します。
アバルト124スパイダーはマツダ ロードスターのプラットフォームをベースに開発されたフィアット124スパイダーの高性能仕様であり、広島のマツダ工場で生産されている日本製イタリア車です。
プラットフォームはロードスターと共有していますが、フィアット製のターボチャージャー付き1.4ℓエンジンを搭載することで最大トルクは250Nm(マツダが150Nm)と別物の心臓が与えられています。
メイドインジャパンのオープンカーにイタリアのデザインとエンジンがコラボレーションするとなれば日本人として誇りに思いますし、このコンテンツは誰もが期待してしまう内容ですね。
さて、このデモカーのアバルト124スパイダー、通常のアバルト124と何処が違うのかを詳しく説明して行きましょう。
発信時を力強く。マルチスパークシステム(MSA)
点火回数を増加する事により、エネルギーへと変換されていない混合気を完全燃焼に近づけます。
それにより得られる効果は、発信時及び常用回転時のトルクの薄さを解消出来る事に加え、過給時の高圧縮状態における、点火ミスを誘発しやすい様な環境下でも、より正確・確実な燃焼を実現します。
心躍らせるブローオフサウンド。SessA ディバータバルブKIT
ターボ車なら響かせたい「シュパー」っとブローオフのサウンド。高精度なアルミ削り出しにアルマイト加工。見た目は地味ですが、サウンドは派手です。
スロットルペダルを多く踏むと、放たれるサウンドは増加します。
F1テクノロジーで培われた技術の結晶。O・Z Racingホイール「FORMULA-HLT」
このFORMULA-HLTはF1スクーデリア・フェラーリとのパートナーシップの中からオーゼットが生み出した世界最高峰の軽量性と高剛性のホイールです。マットブラックのホイール色と、F1センターロック風で革新的なデザインの「セントラル・ロックカバー」が目を惹きます。
前後のバンバーに配置されたO・Z Racingのホワイトステッカーがレーシーな雰囲気を醸し出します。
セッティングを煮詰めたビルシュタインの足回り
ビルシュタインが奢られた足回りは、ワインディングを使っての実走試験で何度もセッティングを調整しながら煮詰められ、車高を落としながらもしなやかで粘りのある乗り心地を実現しています。
ブレーキの強化。ビックブレーキローターKIT
フロントBremboキャリパーをそのまま外径280mmのブレーキローター径を320mmに大型化。リヤブレーキは、312mmの大径化。17インチホイールでの装着が可能です。
高性能低ダストブレーキパッド。SessA ノンダストブレーキパッド
124は日本国内生産の車両ですが、ブレーキダストは、ヨーロッパ車と変らずダストは多めです。 SessAブランド定番の摩材にて前後共に製作された高性能低ダストブレーキパッドはブレーキダストがほとんど出ません。長寿命でローターにも優しい設計です。
見た目と操作性を1UP。オリジナルカーボンタイプシフトノブ
ワンオフで製作したカーボンタイプシフトノブ、ノーマルよりシフト操作の行い易さが好評の為、少数を生産。
他にも、マフラーは純正ながら少しエンドを伸ばしてやや目立たせる加工をしてあったりと、細かな拘りが満載なデモカーでした。
試乗をする前に、ABARTH124Spiderについて、おさらいしておきます。
ABARTH 124 Spiderについて
外観は1960年代に登場した往年の名車『フィアット124スパイダー』をオマージュしたもので、ベースとなったマツダの4代目ロードスターの雰囲気とは異なります。
全長もアバルト124スパイダーのほうが145mm長くなっており、サイドシルエットも前輪から鼻先までの距離と後輪からリヤエンドが長くデザインされています。
クラシックな装いで特にフロント部のシルエットは初代124スパイダーを彷彿とさせます。
ちなみにこちらは2017年5月に開催したカーくるオアシスパークサンデーでの1コマ。初代124スパイダーが参加してくださいました。こちらオーナー様はお若い方でしたので、お話をお聞きしたところ、お父様からこの初代124を引き継がれたそうです。何だか嬉しくなるようなストーリーですね。
話をインテリアに移します。インテリアはロードスターとの共有の部分もありますが、細かな部分にイタリアのデザインセンスを感じます。
アバルト専用のスポーツレザーステアリングは赤いセンターマークが縫い込まれ、中央のサソリにグッときますね。見ただけでサソリの毒が回ってきそうです。
3連メーター中央のエンジン回転計は赤い文字盤が配置され、レーシーに仕上がっています。
標準装備のレザーインテリアはダッシュボードやドア内張りのソフトな感触に赤のステッチがアクセントなっています。
ハンドルも赤いステッチが施され一見お洒落ですが、握ってみると手のひらの馴染みがとても良く、握ったり離したり滑らせたりという動作がとてもしっくりきます。
レカロ製の本革シートは肌さわりも良く柔らかですが、腰と背中は芯のある硬さで、包まれる安心感があります。
座った位置から手足を伸ばすと、自然な位置にペダルが配置されています。
左ハンドルが主流の輸入車の場合、右ハンドルにすると足元の広さやペダルの位置に違和感があったりすることもありますが、右ハンドルを考慮した基本設計が行われているあたりは『国産車』の利点ですね。
また、オーディオのコントロールやハンズフリー通話、クルーズコントロールのスイッチなどの快適装備も標準で付いているところも嬉しいポイントです。
幌は手動式で驚くほど軽く、早く、簡単に開閉することができます。
簡単に持ち上げることが出来るのは、幌を上げるときに力の必要なタイミングでアシストするようにバネが仕込んであるそうです。
実用面での素晴らしさはメインインジャパンのクオリティですね。
REDPOINT裏山にあるワインディングロードで走らせてみる。
エンジンスタートボタンで目覚める1.4リッター直噴直列4気筒のワイルドな鼓動は走り出す前の気分を存分に盛り上げてくれます。
ノーマルマフラーでこの勇ましい存在感はさすがです。
一速にシフトを入れ、滑り出すと、REDPOINTオリジナル商品のMSA(マルチスパークシステム)の恩恵をすぐに感じ取れ、ノーマルと比較してアクセル開度を少なめで走行しても、下からの力によりスムーズに加速する事ができます。
そして加速とともに重厚なトルク感と、変化するサウンド。
低回転域は軽快なサウンドで始まり、中回転域に入ると鼓動感が加わり、高回転域では、繊細且つ伸びのあるエンジン音に変化していき、乗り手を心地良く刺激してくれます。
さらにREDPOINTオリジナル商品のディバータバルブKITによりもたらされる「シュパー」という、ブローオフのサウンドが、溜まらなく心を躍らせ、操る楽しさを倍増させてくれます。上手にブローオフさせないと、良い響きにならないところも、攻略欲を掻き立てます。
この日はREDPOINTさんのすぐ裏にある山を走行しましたが、山道での解放感は素晴らしいです。
オープンカーなんだから解放感があって当たり前ではないかと言われると思いますが、近年のオープンカーはドアの位置が高く、座るとスッポリと体が収まってしまうほどドアが高くせり出しているタイプが多く、解放感が少ないと感じることがあります。風の巻き込みや安全面など様々なことを考慮した結果だと思いますので、それ自体を否定することは出来ませんが、124スパイダーはドアの位置が低くボンネットやリアの部分がすっきりとしたコンパクトな形状となっているため、運転席からの見晴らしが良く、特別な解放感を楽しむことができます。
シフトの操作に関しても、ノブをREDPOINT製に交換したことで、ノーマルよりシフト操作がし易く、スっと入ります。子気味よくシフトを操作して、MTならではの加速の谷を楽しみます。シフトアップの前に引っ張ると、車が加速され押し出される際のGを感じ、シフトアップの度に背中にグッと押し付けられる感覚は、ATには無い楽しみの1つですね。
ビルシュタインをインストールした足回りは、入念な調整の結果、ワインディングは少ないロールでクイックにコーナーを駆け抜け、しかし乗り心地はノーマルよりもしなやかに感じます。
そのおかげで車体の挙動はとても自然で、思い通りの動きと、下げられた重心の恩恵で、より車と人間が1つになる「人馬一体」を味わうことが出来ました。
そして忘れてはいけないストッピングパワーについても触れておきます。前後ローター径を最大限に、ブレーキ性能向上を図っています。フロントのブレーキローター径は外径280mm→320mm。標準でもしっかり効くブレーキですが、スリット入りの大径ローターは効きも見た目もパワーアップしています。
着座位置と運転の難易度について触れると、着座位置が低くなることで長いノーズの部分が見えずドライビングの際にストレスに感じるのではという不安が出てきますが、運転してみると意外とそうでもないことがわかります。
運転席に座ってみると、ライトの部分が盛り上がっていることで車幅感覚が掴みやすくなっています。
街中では操作がしやすく小回りも効き、山道の連続するカーブでは危うさを感じることはなく安定した動きを見せてくれます。
優れた操作性からも、124スパイダーは誰もが違和感なく楽しめるスポーツカーと言えます。
誰もが違和感なく楽しめるスポーツカーが必ずしも魅力的とは言えない価値観もありますが、緊張感を出来るだけ取っ払い、純粋にステアリングやペダルやブレーキやサウンド、またはそこから見える景色や体の間を抜ける風を楽しむことができるのはアバルト124スパイダーの良いところだと思います。
この日は真夏で日差しも強かったのですが、木漏れ日が気持ち良く、クローズドな状態では分からない香りや温度を感じながらのオープンドライブを思いっきり満喫することが出来ました。
ルーフを開放して走り出し、大きく息を吸い込む…自然を感じるのは気持ち良いことだとオープンカーに乗るといつも思います。
車がただの移動手段なんて勿体ない、好きな道を好きなギアに入れて走る喜びを改めて感じさせてくれた124に、そして様々な増幅アイテムを活用することで、124の走る楽しさを数段階引き上げて下さったレッドポイントさんに感謝!です。本当に、1つコーナーを曲がるだけで楽しい車に仕上がっていました。
≪スペック≫
全長×全幅×全高=4060mm×1740mm×1240mm
ホイールベース=2310mm
車両重量=1130kg(MT)、1150kg(AT)
駆動方式=FR
エンジン=1.4リッター直列4気筒DOHC・ターボ
最高出力=125kW(170ps)/5500rpm
最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/2500rpm
トランスミッション=6速MT/6速AT
サスペンション=前:ダブルウィッシュボーン式
後:マルチリンク式
タイヤサイズ=前後205/45R17
使用燃料=プレミアムガソリン
JC08モード燃費=13.8km/L(MT)、12.0km/L(AT)