メルセデス・ベンツのフラッグシップ、Sクラス。Sクラスの現行型が登場したのは2013年のことで、4年経過した昨年、2017年にマイナーチェンジが施された。特に大きなトピックは「自動運転レベル2」を採用したことにある。メルセデスではこれを「インテリジェントドライブ」と称しているが、レーダーセンサー、ステレオ(複眼)マルチパーパスカメラ、超音波センサーなどを備え、周囲を常に監視している。
早速、今回はその話題のインテリジェントドライブの印象をまず体感してみたい。まずは従来からある「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」はほかのメーカーで言うACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)であるが、停止後30秒以内であればドライバーの操作なしに、自動的に発進するようになった。これは便利である。そして、やはり感心させられるのはその自然なフィーリングである。運転のうまいドライバーが操作しているかのようなフィーリングは素晴らしい。嬉しいのは、先行車の速度も表示し、車間距離の長さも表示するのだから、かゆいところに手が行き過ぎているほどだ。
そして、もう一つこれはあきらかに「自動運転」に近づいていると感じたのは「アクティブステアリングアシスト」だ。白線を読んで、車両が車線の中央に保つよう自動で操舵していく。実際に、緩いカーブで手を軽く触れているだけで、ステアリングを積極的に白線の中央を走らせるように自動的に操舵していく。かなり強くクルマの方から積極的な操舵が行なわれていくのに逆に驚かされる。今回、車線が不明瞭な場合でも、周囲の車両やガードレールなどを検知して、ステアリングアシストを行なうようになったそうだ。より実用的になっていることがよくわかる。
エンジンはV8 4.0L直噴ツインターボエンジン。最高出力は469馬力、最大トルクは700Nmである。そして、今回の試乗車は「4マチック」ということで、4輪駆動を採用していた。低負荷時には4気筒を休止させる。このクルマにも最近は半ば当たり前になってきている、「モード変更」スイッチがあり、まずコンフォートの状態で走ってみることにする。この際、発進時や加速時はおっとりしている。メルセデスのフラッグシップともなると、こういうおっとり感もいいなという気がするが、しかしスポーツモードにするとその雰囲気は一変する。
スポーツモードの状態で、アクセルを強く踏んでみるとかなりのトルク感を感じ、俊敏に加速していく。もちろん、4輪駆動なので、しっかり駆動力をうけとめパワーの無駄遣いを感じないのもいい。プレミアムカーに求められる、快適性に加え、スポーティ性も高い次元で両立させている好例だ。
サスペンションはエアサスペンションが採用されているが、いかにもそれらしく、当たりが柔らかい印象で、ふんわりやわらかなフィーリングである。そして、車高調整が走行中でも可能である。基本的には悪路を走る際などに使う程度だろうが、便利だろう。
継ぎ目が連続している部分を走ってみると、70km/h程度で走行していても、路面の凹凸は感じない。さらに、感心させられるのはスポーツモードにしても、ほぼ感じずに実に快適に路面の連続する凹凸を越えていくのだ。乗り味が実に気持ちよく、これぞSクラスに乗っている醍醐味であると感じた。
これもプレミアムカーにはついているのが当たり前になってきている、マッサージ機能付きのシートは機能がかなり多い。難しい横文字の名前を書かれるだけでは、どのような作動のマッサージをしてくれるかわからないクルマも多い中で、このSクラスは、アニメーションで、どのようにマッサージするかが表示されるため、非常に分かりやすい。
大きいディスプレイは12.3インチで、2つ並んでいる。情報量が非常に多くきれいに映し出される。とてもきれいなディスプレイに驚かされる部分だ。メーターのデザインも多種多様に変えられ、ユーザーになった本人はどれにすべきかかなり迷うほどであろう。
クルマとしての基本性能は本当に言うことがない。このクルマで気になる点といえば、いろんな機能がありすぎて、果たしてそれをすべて使いこなせるかどうかだ。しかし、これがこうなったらいいなと思うことは大方、このクルマは応えてくれるという懐の深さには驚かされるばかりである。
メルセデス・ベンツ S560 4マチックロング
<主要諸元>
全長×全幅×全高:5,285×1,915×1,495mm
ホイールベース:3,165mm
車両重量:2,260kg
エンジン種類:DOHC V型8気筒ツインターボチャージャー付
排気量:3,982cc
最高出力:345kW(469ps)/5,250~5,500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2,000~4,000rpm
トランスミッション:電子制御9速A/T
駆動方式:四輪駆動(4WD)
メーカー希望小売価格: 1699万円(消費税込)
※試乗車は(AMGライン:別途789,000円、ショーファーパッケージ:別途875,000円、フロアマットプレミアム:別途108,000円装着車)