こだわりのドライビンググローブ「CACAZAN」をフィーチャーしたCACAZAN『Driving groves Fair』が、来る5月6日まで東京・六本木の「LE GARAGE」で開催されている。その会場で、CACAZANの出石尚仁代表にお話をうかがうととも、ドライビンググローブをセミオーダーしてみることに。
最近は、手に優しい素材のステアリングホイールが装着され、パワーステアリングでハンドル操作に力が要らないというクルマがほとんどである。しかし、かつてはノンアシストのウッドステアリングが主流。そんな時代、クルマを操り、御すことはすなわち、ステアリングをしっかり握るということだった。
その経験から、ドライビンググローブは手放せないというエンスージアストも少なくない。そんな人たちのあいだで最近話題のドライビンググローブのブランドが「CACAZAN」だ。
香川県に工房を構え、素材選びからこだわり、その素材とともに「最高のドライビンググローブとは?」ということを長年見つめてきた。そのこだわりと技によって命が吹き込まれるかのようなグローブに、全国から注文が相次いでいるという。
この「CACAZAN」のドライビンググローブをフィーチャーしたCACAZAN『Driving groves Fair』が、来る5月6日まで東京・六本木の「LE GARAGE」で開催されている。クルマに乗っているときはもちろん、クルマから降りてもクルマのことを想い続けるカーガイ/カーレディ達から根強い支持を集めるセレクトショップ「LE GARAGE」の店頭に、さまざまなデザインやコーディネートのCACAZANのドライビンググローブが持ち込まれ、そのディスプレイを眺めていると、すぐにでも自分の手にはめて走り出したくなる。
ふだんはネットで注文することになるのだが、イベントでは実際にその風合い、色味を手に取って確かられるうえ、自分好みの一点をセミオーダーすることも可能である。
フェア初日の3月31日は、ふだん工房でこのグローブを製作しているCACAZANの出石尚仁代表も会場に姿を現し、早くも聞きつけてやってきたお客様と直接コミュニケーションを取ったり、セミオーダーの注文を受け付けていた。
今回この機会に、
8speed.netスタッフのYが"マイグローブ"をオーダーするというので、私も同行することにした。
「もともとはスキー用のグローブをつくっていました。しかしスキーも下火ですし、海外の製品もたくさん入ってくるようになって、ドライビンググローブをつくるようになりました」と話す出石代表。香川県は手袋づくりが盛んで、昔は同業の職人も大勢いたのだそうだ。しかし、ドライビンググローブを手間を惜しまずつくっている工房はみな姿を消してしまったという。
「いまは消費者が価格の安いものを選んで買いますね。手袋も同じです。コストを抑えて安価につくるものが主流になりました。大きな革から何枚切り出すかを計算して、それをミシンで縫う。あっというまにできますし、薬品を吹きかければ本革の色味だって均一化できるのです。でも、そういうものはフィット感で差が出ますし、あるとき突然裂けたりする。それだと本当のドライビンググローブとはいえないのです」。
コストを削るのではなく、手間をかけつつも、その中で安価に仕上げるノウハウが出石さんにはあった。「これまでの手袋づくりで"下請け""孫請け"のような仕事もしてきました。ブランドの仕事はコストもうるさいが、品質にはもっとうるさいのです。そこで、厳しい基準をクリアしつつ、低コストでもしっかりと仕上げるスキルが培われたのだと思います」と出石代表は話す。
会場にはステアリングホイールをあしらったディスプレイが設けられ、そこにフルフィンガー、ハーフフィンガー、レディスといったスタイルでさまざまにコーディネートされたグローブが並べられている。出石代表の姪御さんがひとりで編み込んでつくるというニットが手の甲の部分に施されたものも用意され、来場したひとの注目を集めていた。
CACAZANのグローブに使用される革はニュージーランド製のものを使用する。「革もしっかりと処理をしないと素材としては使えません。染色工程や、風合いに大きな影響の出る工程なども職人技がものをいう世界です。そうした面をトータルで見て選びました。ちなみに染めた色によっても柔らかかったり固かったりします。そもそも革は伸びる方向や伸び方が微妙に異なります。そうした案配も見ながら縫い合わせていきます」。
女性にももっと使ってほしいと出石代表は話す。「最近はクルマ離れといって若い人もクルマに乗らないけれど、そういう若い人にもこのグローブを見てほしい。あと、女性の方にはとくにお勧めします。こういうと『ドライビンググローブをはめてまで運転するようなクルマではないから』とかいわれるんですが、ステアリングホイールをよりしっかりと握ることができるようになりますし、いままでちょっと違和感があるなという方も、ドライビンググローブをすることできっと運転がスムーズになりますよ」とのこと。
ちなみにドライビンググローブのお手入れは、涼しい場所で保管する程度で、一年に一度くらいは洗ってもいいそうだ。「革手袋にとっての最大の敵は乾燥です。壊れたもののリペアもお受けしていますが、暑い場所に放置したり、洗いすぎで革の油分がすべて抜け落ちてしまうと、硬化してそこから壊れてしまうのです。基本的にうちでつくるグローブはタフですので、気に入ったものを長きにわたって愛用いただけるのではないでしょうか」。夏場の車内に放置するといったことは避けるのが賢明だ。
私が出石代表といろいろ話しているあいだに、編集部のYはかなり迷った挙句二組をオーダー。「サイズが小さくSサイズか、Mサイズか迷うという方はMサイズできつめに縫製するといったことも可能です。サンプルを試着してみてご相談ください!」とのこと。セミオーダーならではの対応だ。
お客さまのなかには何台も所有する愛車にあわせて、内外装とおそろいのものを用意される方もいるのだとか。「そして、お客様からいわれるのが、グローブをすると『よし、出発だ!という気持ちになる』というのです」と出石代表が教えてくれた。
いまのクルマはエンジンをかけるのも、走るのも快適だし、儀式のようなものは何ひとつなくなったといっても過言ではない。しかし、だからこそクルマという便利で楽しいもので出かける歓び、感謝、意気込み、安全への祈念を見つめ直したい。天然素材を、職人のこだわりの仕事でつくりあげたグローブを身に着けてみると、改めてこんな思いがこみあげてくるように感じられるから不思議だ。
受注状況によっては多少前後する可能性もあるが、「これからのドライブシーズンに今回オーダーしていただいたものをはめてお出かけいただきい」とはLe GARAGEのスタッフ。会期中はCACAZANのスタッフが会場にいるとのことなので、クラフツマンシップを感じたり、興味深い話を聞くには打ってつけのチャンスだ。興味がある方は、期間中にLE GARAGEに足を運んでみてはいかがだろうか?
(Text & Photos by Kentaro Nakagomi)