BMWブランドになってからの初代MINI、R50型クーパーを日常の脚としていた編集部員としてはラインナップが充実してきた最新のMINI事情がとっても気になっていたところに、JAIAの試乗会でクーペタイプのホットモデル「MINI JOHON COOPER WORKS COUPÉ」AT車のインプレッションの機会を得た。
■低く構えた外観
下から順に見上げていくと、あ、あれ?上半分が無い。いや、正確に言うと無いワケじゃないけど、これまでのいわいる普通のMINIを見慣れた人間からはスッパリ上半分を切ったようなデザインが斬新に映る。
■極めて個性的で上質の内装
質感はBMWのクオリティそのままに、ハンドルを持った時のしっとり感や、クロームメッキを上品に使ったインテリア、大きく視認性の良いセンターモニター、ちゃんと日本語化されているアイコン。ひとクラス上の上質感が感じられる。プライスもコンパクトカーのイメージから一段高いゾーンにあるので、値段相応であることは間違いない。
個性的で、センス良く、上質。消費者が輸入車に求めるものが全て詰まっている。
後ろを振り返ると後部座席が無い。2シーターだとここで初めて気が付く。
■百聞は一試乗に如かず、の走り
全14台の試乗車の中でトップバッターだったこともあり、走り出しの元気いっぱいパワフルな加速にテンションMAX。言葉にならない雄叫びを上げてしまった。
そしてハンドルを切った時の挙動の「人馬一体」さが半端ない。
いわゆる普通ののハイト系MINI(とあえて呼んでみる。)の挙動を思い浮かべると、ハイト系は頭の方が「残る」ような感覚が思い出され、屋根が低い分、重心が下に来て、よりクイックでゴーカート感覚が鮮明となっている。
MINIのクーペモデルが発表されて以来、位置付けが良く分からなかったが、試乗して納得。クーペはよりピュアに運転を愉しむ、MINIシリーズの中でも一番行きつくところまで突き詰めたモデルであり、そしてこのJOHON COOPER WORKSはその中でも究極にドライビングプレジャーを追求した1台なのだ。
同時試乗がアウディのS6だっただけにそのコンパクトで軽量なボディがもたらす軽快感、タイヤの位置がリニアに伝わってくる安心感がとても際立って好印象だった。
試乗中、バックミラーを覗くとスポイラーがせり上がっていた。後で調べたら80km/hを超えると「アクティブリアスポイラー」が自動で上昇するらしい。当然ながら空力に及ぼす影響のためではあるのだろうけど、車好きはこういうギミックが好きなのも分かった上での「演出」でもあるな、と思った。
■慣れれば楽チンのパドルシフト
ハンドルにはパドルシフトが付いていて、ハンドルを握りながらのアップダウンが可能なのだが、これがまたメーカーによって操作方法が異なるので慣れるまでに時間を要する。
このMINIに関しては左右のパドルが同じ動きをする。左右どちらのパドルでも「引く」とシフトアップ、どちらのパドルでも「押す」とシフトダウンする。
この操作を発見するのにかなりの時間がかかった。パドルは引くものだという先入観があるので、左右どちらのパドルを引いても何も変わらない。おかしいおかしいと思って触っているうちに、押すとダウンすることを発見できた。
まあ、知ってさえいれば全く問題のない操作で、左右どちらでも同じ操作ができるということは、片手でもシフトアップ・ダウンが出来るということでもあり、便利なのだが。
■試乗を終えて
最初は若干違和感のあるこのデザインも、乗るとその効果と楽しさがはっきりと実感できるので、オーナーとしてはむしろ自慢ポイントになるなと感じた。「屋根が低いのには意味があるんだぜ!」と。
そういう目で見るリアクオータービュー。カッコよく見えるから不思議だ。
そして嬉しいのは、ちゃんとMTという選択ができること。個人的にはこういう車はMTで乗ってこそ、楽しさが増すと思っているタイプの人間なので、選択肢があるのはとても嬉しい。
ラゲッジ容量は280リッターと十分広いとは言え、屋根が低い分室内が狭く、そして2シーターという、走りのために「削ぎ落とした」潔さ、そしてそういうモデルをラインナップに加えるMINIの姿勢は評価に値すると思うし、そのトレードオフに得た抜群のハンドリングと一体感+クーペの尖がったスタイル。これを買うことを許される人は幸せ者だと思う。
MINI JOHON COOPER WORKS COUPÉ
全長×全幅×全高=3734mm×1683mm×1384mm
ホイールベース=2467mm
車両重量=1165kg 駆動方式=FF
エンジン=1.6リッター直4DOHC・直噴ターボ
最高出力: 155 kW(211 ps)/6,000 rpm
0–100 km/h加速性能: 6.4 秒
最大トルク(オーバーブースト時)/回転:
260(280) Nm/1,750-5,500 rpm
最高速度: 240 km/h
燃料消費率JC08モード (国土交通省審査値):
16.3 km/リットル
車両本体価格
MT 4,260,000円