今回のJAIA 輸入車試乗会では2台のハイクラスSUVに試乗する機会に恵まれたカーくる編集部。
しかも、2台共に試乗が抽選になった超人気車両だ。
Porscheが満を持して市場導入した マカンS、そして長年アイデンティティを守りながら熟成を重ねてきたLAND ROVER ディスカバリーHSE だ。
この2台は共に3リッターV6エンジンが搭載されたグレードで、マカンSはV6ツインターボ、ディスカバリーHSEはスーパーチャージャー付V6とそれぞれに違う味付けがされている。
日本人がこれらの2台とそれぞれのメーカーに抱くイメージはまったく異なる物だが、さて、実際はどうであるのか。
まず最初にステアリングを握ったのはポルシェ マカンS。
ダークブルーメタリックのボディカラーが日差しの下で美しく輝く。
さっそくマカンSに乗り込んでみると、インパネやドライバーズシート周りの作りこみはスポーティであり上質。
まずはポルシェらしいオモテナシを受けてワクワクしてしまう。
アイポイントが高く911とはまったく異なる景色だが、ポルシェエンブレムのついたステアリングを握ると「これからポルシェを運転するぞ!」という気になる。
キャビンはカイエンよりは一回りこじんまりしているが狭さは感じず、適度なタイトさだ。
エンジン始動と共にセンターコンソールにはポルシェのロゴが浮かび上がって乗員を楽しませてくれる。
試乗会の会場となった大磯プリンスホテルから試乗コースの西湘バイパスにさっそく滑り出す。
平日の午前中とあってそこそこ混み合う本線へ合流すると共にアクセルを踏み込めば、3リッターV6ツインターボが遺憾なくその力を発揮した。
ターボラグを感じさせないその加速力たるや、2トンを若干切るだけの重量を持つこの車両をここまで加速させるか!?と驚きをプレゼントしてくれるが、やはりそこはそれ、マカンSはポルシェのプロダクトなのだ。
ポルシェがマカンSに用意したエンジンは、3リッターと小排気量ながらもツインターボとする事で340psをたたき出している。
そこらのスポーツカーでは太刀打ちできない速さで、十分にポルシェらしさを体感する事が出来る。
また高速走行時のレーンチェンジの際も安定性が高く、ほとんどロールをせずにクッと鼻先から入っていく感覚は実に気持ちがいい。
多くのドライバーは高速域でのレーンチェンジの際には若干の不安を感じるものだが、この足回りとボディ剛性はそんな感覚さへも感じさせない。
カイエンで得られたSUVのノウハウが高次元でマカンに注ぎ込まれているのが分かる。
そしてマカンSの一番のポイントはこのボディデザインに尽きる。
SUVではトップのスタイリッシュさとスポーティさを兼ね備えたスタイリングは、文句無くカッコ良い。
リアのコンビネーションランプのデザインも911と同じ流れを汲むデザインが採用されている。
前高も1,625mmと低く押えられており “正直言うとカイエンは大きすぎてちょっと” と思っている人が多くいると思うが、そのあたりのハードルをマカンは越えてきているのだ。
スタイリッシュなハイクラスSUVではレンジローバーのイヴォークが先行して成功を収めているが、そういった側面ではマカンはそのイヴォークと真っ向勝負になるだろう。
マカンSは泥だらけになる悪路ではなく、コンクリートジャングルで仕立ての良いスーツを着て乗りこなしたり、きらめく海を眺めながらドライブできるマリーナが良く似合う。
さあ、次はマカンとはまったく異なる客層を持って生まれた ディスカバリーHSEをじっくりとご紹介したい。
今回試乗したディスカバリーHSEは、2014年モデルでビッグマイナーチェンジが施されたディスカバリーの上級モデルだ。
多くのユーザーからは四代目を意味するディスコ4と呼ばれているが、三代目のディスコ3(2005年発売)から基本設計を受け継いでいる為に最新のSUV達と比べると基本設計の古さは否めない。
ただ、これだけ長期に渡って基本設計が変わらないということは、いかに当時の設計ポテンシャルが高かったか?ということの裏返しなのである。
今回大きく変更されたのは、LEDを使ったデイライトや新意匠グリルを採用してスッキリとしたフロント回りの外観。
そしてこれまでの5リッターV8エンジンは日本モデルのカタログから排され、スーパーチャージャー付3リッターV6エンジンと共にZF製の8速AT、インテリジェントストップ/スタートが採用された。
まずは高いポジションのシートに身を任せてドアを閉じる。
そこには華美な雰囲気は無いがLANDROVERらしさが感じられるほど良く装飾されたキャビンが待っていた。
機能的に配されたボタン類は感覚的にも分かり易く使いやすい。
ポップアップするダイヤル式シフトをDレンジに入れてさっそく試乗コースへと走り出す。
試乗コースはマカンSと同じく西湘バイパスと市街地だ。
本来であればディスカバリーが本領を発揮するべき山道などのを悪路を走らなければ十分に魅力を測ることはできないのだが、今回は日本のユーザーの多くがこのディスカバリーを使うであろう市街地と高速だけの試乗となる。
西湘バイパスに入り、走り始めてすぐに驚いた。
今回採用された8速ATが小刻みにシフトアップしていくが、そのシルキーなシフトアップが気持ち良い。
340psの出力がグイグイとディスカバリーを前へ押し出していくが、とても静かに、そして滑らかに加速していく。
2.5トンの車重はかなり重いが、十分な加速とスピードを得られている。
そしてその重量が好影響を及ぼしている乗り心地は重厚感があり、高級サルーンのような安心感と静粛性を与えている。
ゆったりと広いキャビン、HSEに標準装備されたウィンザーレザーのプレミアムレザーシートでリラックスしながら高速クルージングをすると本当に快適極まりない。
長距離移動が多いカーくる編集部も、予算さへ気にしなくて良いのであればこのような車で移動するのがいいのかもしれない。
常に忙しくしているビジネスマンが週末にアウトドアへ出かける際、移動手段としてディスカバリーを選べばその目的地までの行程でもリラックスしながら移動が出来るだろう。
ディスカバリーのスタイリングは昔から変わらない。この “変わらない” は、ディスカバリーらしさと受け取ってほしい。
この男らしささへ感じる直線基調の箱型で背の高いデザイン。
ディスカバリーのシリーズをディスコと呼び、愛してやまないユーザー達はこのスタイリングを愛している人も少なくない。
そしてこのボディ形状は室内の広さに直結し、アウトドア・ゴルフ・レジャーに出かけるには必要十分な荷室を作る。
トランク下部に収納されたサードシートもかなりの大きさで、快適に座る事が出来ることも知っておいて頂きたい。
ランドローバーにおけるディスカバリーの立ち位置は、同社で最も高い悪路走破性を持たされた中間モデルだ。
世界中のオフロードを知り尽くしたユーザーのために必要な機能・走破性を盛り込みつつ、より多くのユーザーを手に入れるために積極的にエンジニアが改善を重ねてきた円熟期にある一台だ。
一目見ればディスカバリーと分かるボディデザイン、ダウンサイジングされつつも十分なパワーを発するエンジン。
使いやすさと快適さを両立した室内空間。
小山のようなボディをゆったりと走らせれば、豪華クルーザーを操舵している感覚にもなれる素晴らしい一台だ。
スポーツカーメーカーであるPorsche が送り出したマカンSは、SUVのボディを与えられたスポーツカーであった。
SUV専業メーカーであるLANDROVERが磨き上げてきたディスカバリーHSEは豪華クルーザーのような快適さを兼ね備えてさらに輝きを増していた。
それぞれに個性的な2台のハイクラスSUVに試乗して感じたのは、どちらも正解足り得るという事だ。
ただのSUVでは満足できなくなってしまったユーザーに対し、マカンSはスポーツカーの魅力を。ディスカバリーHSEは快適さを磨き上げて提案してきた。
どちらも大変高価なSUVであるが、ユーザーの期待に応えるべくして作りこまれた素晴らしい2台であるから、この値段も納得できる。
自分のライフスタイルに合ったプレミアムSUVを探すのであれば、この2台も是非味わってから選んで欲しい。
Porsche マカンS 主要諸元
全長×全幅×全高:4.680×1.925×1.625mm
車両重量:1.920kg
エンジン種類:V型6気筒ツインターボエンジン
排気量:2.997cc
最高出力:250kw(340ps)/5500-6500rpm
最大トルク:46.9kg-m(460Nm)/4100rpm
0-100km/h加速:5.4秒
燃料:プレミアムガソリン
トランスミッション:PDK
全国希望小売価格:719万円(消費税込み)
Porsche 公式サイト:
http://www.porsche.com/japan/jp/
LAND ROVER ディスカバリーHSE 主要諸元
全長×全幅×全高:4.850×1.920×1.890mm
車両重量:2.570kg
エンジン種類:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
排気量:2.994cc
最高出力:250kw(340ps)/6500rpm