フランス車が売れているらしい。シトロエンの中でけん引しているのがこのシトロエンC3だ。
まずその個性的なプロポーションに目が行く。上下に分割されたヘッドライトは他ブランドには無いデザインだ。
エアバンプと呼ばれるサイドに装着された樹脂バンパー。これはデザイン面でのインパクトだけでなく、隣車からの無慈悲なドアパンチもこの樹脂の部分が吸収してくれる点で大変画期的であり、クルマを大切にする私達には非常に嬉しい機能性溢れたデザインである。堂々とスーパーの入り口の近くに置けることは生活の利便性をも改善してしまう秀逸なデザインだと思う。
下回りにもSUV風の樹脂バンパーがアクセントになっている。この斬新なデザインがこの車における他車にない魅力の一つとなっているのだろう。
走り出すとこの車がデザインだけの存在ではないことが分かる。1.2 直列3気筒のガソリンエンジンは110馬力とスペック上は必要十分レベルながら、205Nm/1500rpmの太いトルクとアイシン製6速ATとのマッチングがすこぶる良く、気持ち良く加速していく。パドルシフトこそ無いが、シフトレバーを左に倒せば自分で変速をコントロールすることが出来る。これがまた思い通りに操る楽しさを感じることが出来て気持ち良いのだ。シフトを前に倒せばダウン、前に倒せばアップというのはMT乗りの筆者としては感覚に合う。マニュアルミッションでない以上、挙動がギクシャクするクラッチレスAMTより、トルコンATの方が断然気持ち良く走ることが出来ると自分は思う。
気持ち良い理由は他にもある。シートと足回りだ。シートに座った瞬間、ふわっと包み込まれるフランス車特有の気持ち良さがあり、足回りも非常にしなやかで段差をいなすのがとても好印象だった。その前に乗ったテスラの足回りと比較しても西湘バイパスの連続する段差のいなし方が非常に好ましいものであった。 あまりに乗りやすく、自然で、緊張を感じさせないので、たった数キロ走っただけですっかり馴染んでしまって、気がつくと助手席の人との会話に意識が行き、自分の車かのように運転していた。 このやさしさ、女性にも人気だと言うのが分かる気がする。
インテリアもカドを丸めたデザインを基調とした洗練されたもので、随所にフランスらしいエレガントな内装となっている。
こちらのドアハンドルは旅行カバンをモチーフしたという演出がされていて、こういうところに他社のデザイナーが出来そうで出来ないアイデアに感じる。
ドアの内張りやダッシュボードの素材感、ボンネットがダンパーでは無いあたりはチープではあるけど、デザインでカバーしていて、それがきちんと車の値段の安さに反映しているあたりは、割り切りとして歓迎したい部分だと思う。女性も大いにターゲットにするこの車の、ボンネットがダンパーではないことなどは自分で1度も開けることの無い人にはどうでもいいことだろう。
荷室も十分な広さがあり、荷物も沢山乗りそうだ。
褒めてばかりだが頑張って欲しいところもある。燃費はカタログ値18.7km/L。コンペティターである他社の車のカタログ燃費が20km/Lを超えることや、ガソリン価格の高騰ぶりを見ると正直もう少し、低燃費であると購買意欲が湧いてくるところだ。値段の高いハイオクガソリン仕様だからこそ、そういう努力が一層求められると思う。
今回試乗したシャインというグレードが239万、もう一つ下のフィールというグレードが216万からと言うのは、輸入車のエントリーモデルとしても最適解に思える。荷物も乗り、大人4人がストレス無く乗車でき、燃費もそこそこで、センスの良い内外装のデザインは、様々なニーズにマッチする。自分達の様にマニアックではない人に「最近はどんな車がお勧め?」と聞かれた時に自信を持って進めることが出来る1台だと思う。
C4カクタスから始まったこの新しいデザインの流れは、ブランドとしての独自性と価値を高めるものだと大いに歓迎したい。
来年には創業100年を迎える老舗シトロエン、今後もどんなモデルを私達に魅せてくれるのか、次に繋がる魅力的な1台に仕上がっていると思う。
CITROEN C3 Shine
<主要諸元>
全長×全幅×全高:3,995×1,750×1,495mm
車両重量:1,160kg
エンジン種類:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC
排気量:1,199cc
ハンドル位置:右
JC08モード燃費:18.7 km/L
最高出力:110ps(81kW)/5500rpm
最大トルク:20.9kg・m(205N・m)/1500rpm
トランスミッション:6速AT
駆動方式:前輪駆動
メーカー希望小売価格:239万円(消費税込)