“ドリフトプリウス”この車を知っている方は今年の東京オートサロン2015特設コースを見に行かれた方かEVによほど感心のある方かも知れません。
今年はじめてその姿を現したEVによるD1グランプリエントリー用車両、それが “ドリフトプリウス”です。
この車にイラストレーター「きもだこよし」として関わらせていただいたのは去年の秋、プレゼンのためのイメージスケッチを頼まれたのがきっかけでした。
それから半年経たずに多くの観衆の前に姿を見せたEV ドリフトプリウス。
今回、そのさらなる野望と目標を持って次のステージへ進むべく打って出た手法がクラウドファンディングによるスポンサーの一般公募という手法です。
今回この希なEV競技車両の行く末を見届けるべく、株式会社オズコーポレーションズの古川氏、そしてD1ドライバーである上野氏を交えてお話を伺うことにしました。
■なぜプリウスなのか?
「少し前から次世代の車としてEVに着目していましたし、またEVレースにもお手伝いとして参加させていただいていたので興味はすごくありました。同時になぜこの車なのか?という思いもあったのも事実です。」
ハイブリットであるこの車両をわざわざEV化し、FFベースであるにもかかわらずFRに変更する。
おそらくはもっと効率の良い、D1に適した車両もあるはずなのに、あえてこの車体で行くその意味はいかなるものだったのだろうか?
■予想以上に困難であったEV化
当初から古川氏はプリウスで行くという思いはあったといいます。
「もちろん86やドリフトに適した車両をベースに考えることはできました。しかしいま世の中に一番知られていてアピールをできる車体という考えからゆずれない思いがあったのです。もっともその道のりは遠く、当初考えていたよりもはるかに困難な作業となりました。一見すると、もともとハイブリットだから出来るんじゃない?と思われがちですが、全くの別物であり、実際にはゼロから作っているのと同じかもしかしたらそれ以上かもしれませんね。」と古川氏は語る。
それでもモーターが乗りバッテリーがつながって走り始めることができたときは、ようやくスタートラインに立てたと思われたとの事。
「でも、実は全然でしたね。むしろやっと走ることができただけで全然競技レベルじゃなかった。それでも足を煮詰め、ブレーキを組んで上野氏のドライビングでかろうじて回る(滑らせる)ことができました。」
それほどまでにこのドリフトプリウスは手探りで開発されていたのです。
実際私がこのプリウスプロジェクトに関わらせていただいた時もフェンダーの肉付けをしている最中の画像1枚が送られてきて「このラインでイメージを・・・」とそんな状態からでした。
前代未聞ともいえるこの計画が日の目を見るのはそれから4ヶ月後のことになります。
■走るドリフトプリウス!
今年のお正月過ぎ2015年1月10日 東京オートサロン2015の会場でその姿を初めて現したドリフトプリウスは周囲から驚きを持って迎えられました。
会場に展示してあるこのプリウスを見ても、多くの方がただのハリボテでまさか走るとは誰も思っていなかったというのが本当のところ。
しかしその走る姿を見て、またD1専用EVということで2度驚いた方も少なくありませんでした。
■D1専用EV車両の実力
しかし、まだまだ仕上がっていないドリフトプリウスは「スゴイ」というコメントと同時に「回ってないよ」という声も多く聞かれました。
「現状ではまだ20%にも満たない仕上がりでようやく転がり出した状態の生まれたての子供みたいなもの。」
「パワーユニットがしっかりしてそれからようやく足回りを組んでいく。」
「電池も量を積んでいる状態でまだ素材も変えるし重さも調整しなくちゃいけない。」と課題は山積みの状態でした。
今回の取材時でもガレージには次期動力源として用意された“リーフ用”バッテリーが既に待機し、これから加工して組み上げられるのを待っていました。
※むき出しのものが初期型、ビニールにくるまれているのが届いたばかりの後期型バッテリー
■D1ドライバー 上野氏ドリフトプリウスを語る
「あの時はなんとか走ることができたけどまだまだ全然だった。実際には走っている最中にも調整は続けていて何度も足回りは調整していたんだ。本当はモーターだってまだまだ出力が全然足りていない。それでもD1用EV車両としてのプリウスに魅力を感じているし、なにより周囲から期待もされているんだ。アレはどうなった?次はいつ走るんだ?ってね。オレとしてはもっとガンガン走らないといけないと思っているし、そうしてアピールしていかないと忘れられちゃう。それよりももっと前に出て行かないと進めないし、目標も達成できない。」と楽しそうに語られた。
ここでいう目標はD1車両としてランキングに食い込めるまで行かなくてはということです。
アメリカではEVレースはだいぶ盛んになってきていますが、まだまだ日本では「未知のもの」として敬遠されがちです。
それでも、初めてそうしたものが世に出るということで国内の様々な競技主催側からも期待がされており、なによりD1側からも参戦を望まれているという話もあるのです。
■新たな挑戦資金調達法【クラウドファンディング】
当初から私と古川氏の間で冗談ともつかない会話の中にあったのが小口スポンサーの話でした。
以前アメリカのレース参戦車両に協力者ひとり一人の名前が記載された車両があった話が出て「んじゃ、カッティングシートで個人名を記載してそれカラーリングに使うのどう?」といった笑い話がありましたが、古川氏は冗談ではなく大マジメ。
古川氏はそうした新しいものを次々と試していくことこそこのプロジェクトの意味なんじゃないかと考えている部分もあるようです。
もちろんスポンサーを見つけて仕上げていくのは必要ですし、見つかるのであれば大口のスポンサーでもいいのかもしれません。
それでもこのチャレンジにはみなさんの協力が頂けたらと思うのは、多くの方にこのチャレンジを応援して欲しいと思っているから。
一人の大口スポンサーより多くの小口サポートの力が欲しい。
その思いから相談を持ちかけたところファンド側もGOサインをくれたそうです。
もちろん資金難から募集したというのは確かにあるのですが。
■クラウドファンディングってなに?
ほとんどの方から見ればこのクラウドファンディングってなんですか?と思われるかもしれません。
これはプロジェクトに対して一般の公募でスポンサーを募り予定額に達すると初めてお金を引き落とされるというシステム。
金額未達成の場合は引き落とされません。振込された場合は払い戻されます。実際にボクも今回初めてひと口スポンサーを申し込みました。
正直、手続き完了まで少し時間はかかります。それでも案内は出ますので、それに従って入力をすればいいので難しい操作はありません。
カード決算(振込もありますが)も、このプロジェクトが目標額を達成した時点での決算になりますから、未達成では引き落としはありません。
購入手続きのところで金額を押しますが、それをしてもまだ完了しませんのでご安心を。
途中で充分引き返せます。もちろん今の時代情報漏えいやトラブルも考えられないとは言えませんがその辺はネットで決済を行うこととリスクは同じと思われます。ですから最後の判断はご自身に任せるしかありません。
え?ちなみにきもだはどのくらいのスポンサードしたかですか、それはもう「ひと口」ですよ。
それでいいんです。それが何人も集まれば大きな力になるというシステムですから。
あらゆる面で斬新なドリフトプリウスの計画もあと20日後にクラウドファンディングの目標達成期限が迫っています。
200万円の目標額が達成できなければ、このクラウドファンディングは未達成となります。
もしこの記事をご覧の読者の皆さんで、興味を持っていただけた方がいれば、是非、一口スポンサーとして名乗りをあげて頂ければと思います。
クラウドファンディング
「レース参戦できる排気ガスを出さないエコカーを開発します!」
https://readyfor.jp/projects/DRIFTPRIUS
株式会社オズコーポレーション http://www.o-z.co.jp/
カーメイクT&E 株式会社ティーアンドイー http://www.t-and-e.co.jp/index.shtml
取材記事:イラストレーター きもだこよし https://carcle.jp/UserBlog.aspx?UserID=4504
■カーくる編集部より
株式会社オズコーポレーションさんは「自然環境と向き合う新しい車社会を拓く」を理念に、「コンバージョンEV」事業、「ECO事業」、「技術支援事業」に取り組んでいらっしゃいます。
その一環として、今回のドリフトプリウス製作に取り組まれています。
車の新しい可能性と、地球環境、そして何よりも「楽しい車を作る」という点で、カーくる編集部も共感し、このドリフトプリウスの応援をさせて頂く事にしました。
もし、このドリフトプリウスの挑戦に共感いただけるのであれば、一口・・・いや、もっとたくさんでも正直嬉しいのですが、クラウドファンディングにご協力頂けたら嬉しく思います。
若年層の車離れが叫ばれる日本ですが、車好きの方はまだまだ多く、こんなに面白い事を考えて挑戦する会社、そして人がいる。
そんな人の力にカーくる編集部はなりたいと考えています。