今までなぜ名古屋になかったのか?そんな疑問を感じてしまう。
日本の経済を物作りで牽引する名古屋地区は今、景気回復が顕著に感じられる日本国内でも最も元気なエリアだ。
そんな名古屋にロールス・ロイスの正規ディーラーが初めて進出するという大変喜ばしいニュースが飛び込んできた。
7月15日 ロールス・ロイス・モーター・カーズは名古屋市内のホテルで中部地方初のショールームオープン決定の記者発表を行った。
記者発表会の会場にはレイス、ゴースト シリーズⅡが展示され、発表会の雰囲気を盛り上げていた。
どちらもロールス・ロイスの販売台数増に貢献している人気車種だ。
ロールス・ロイス・モーター・カーズの日本における販売台数は、2014年は前年比60%増と好調を維持しており、今回の名古屋への進出は国内市場での更なる飛躍に一役買う事が容易に想像できる。
アジア太平洋リージョナル・ディレクターのポールハリス氏
「中部地方は企業家精神を持ち、かつ上質なクラフトマンシップを理解する眼を持つ方々がいらっしゃる地域だと考えています。ますます繁栄する中部地方とここ名古屋の街がロールス・ロイスにとって新しい故郷となることを私たちは確信しています。」
ロールス・ロイス・モーター・カーズ 名古屋 代表取締役社長 坪内隆幸氏
「ロールス・ロイスは名古屋で必ず成功すると確信しています。最高級でライバルがいない自動車であるロールス・ロイスを販売するにあたり、責任感を強く感じています。」
カーくる編集部も坪内社長にお話を伺った。
坪内社長ご自身も、お車を運転されるのが大変好きとのこと。
ファントム、ゴースト、レイスの3車種の中で、もしご自身で所有されるとしたら何を希望されるか伺うと、坪内社長はレイスを選ばれた。
やはり坪内社長もショーファードリブンとしてではなく、ドライバーズカーとしてロールス・ロイスを楽しまれたいようだ。
ロールス・ロイスの国内販売の第4の販売拠点となるロールス・ロイス・モーター・カーズ 名古屋 は2016年春にオープンとなる。
ロールス・ロイスを手に入れられることの出来る方はごく一部の方となるが、名古屋がロールス・ロイスの故郷となることをカーくる編集部も心より歓迎したい。
今後、来春の店舗開設までには各種のキャンペーンや広報活動があるとのこと。そちらも実に楽しみだ。
記者発表会場に展示されたゴースト シリーズⅡ
最高級の部材がふんだんに使われた内装は豪華そのもの。
ロールス・ロイス ゴースト 価格は3312万円から
美しいファストバックスタイルのレイスも展示された。
天井にきらめく無数の星は、LEDライトが埋め込まれた“スターライトヘッドライナー”というオプション。
ロールス・ロイス レイス 価格は3333万円から
さて、記者発表会の後はテストドライブのお楽しみ時間。
今回、カーくる編集部が試乗の機会を得たのは、ロールス・ロイス レイスだ。
このクーペには現行のロールス・ロイスの中でもっともパワフルな心臓が与えられている。
6.6リッター V12 ツインターボ 632ps(5600rpm)、800N・m(1500-5500rpm)とそんじょそこらのスポーツカーでは太刀打ちできない強心臓。
そんなエンジンを奢られたボディは全長5.28m、全幅1.945m、ホイールベース3.110m、車両重量は2430kgとかなりの大物。
ヒンジが後ろにあるコーチドアを開けてさっそく乗り込んでテストドライブに出かけよう。
ホテルの地下駐車場の暗い中で乗り込めば、LEDをちりばめて天空をイメージさせたスターライトヘッドライナー(オプション)が天井に輝いていた。
ロマンチックこの上ない演出であるが、今回の試乗は男性編集二人と運転手の三人。誠に残念極まりない。
ちなみに、このスターライトヘッドライナーは単一オプションで142万円から。そう、「から」なのである。
ロールス・ロイスといえば世界最高のパーソナライゼーションがオーダー可能な車だ。
このオプション1つとっても、オーナーの好みで 「子供の正座が牡牛座なので、牡牛座を光らせて欲しい」とか、「彼女の誕生石をLEDの発光部にはめ込んで光らせて欲しい」などというオーダーも出来るとの事。
レイスを手に入れることが出来るオーナーの発想力は素晴らしいとしか言いようが無い。
もちろん、これらのオプションは都度見積りのようだが・・・。
試乗コースは名古屋駅周辺で道も混雑している。
周りの車のドライバー、道行く人からの視線を感じつつレイスはスルスルと豪華クルーザーのように至極快適に進んでいく。
今回の試乗は記者発表会会場のホテルから片道10分、往復20分の限られた時間とはいえ、ロールス・ロイスのスペシャリティクーペのレイスとくれば気持ちは高ぶって楽しくてしょうがない。
サラマンカ・ブルーというボディカラーのレイスは文句無く美しい。
光のあたり加減で鮮やかなブルーにも、そして深い紺色にも見える。
ひと目でロールス・ロイスとわかるパルテノン神殿を模したフロントグリルのデザイン、ファストバックのルーフからボディへの美しいラインからは、スポーティさなどではなく力強い圧倒的なエレガンスを感じさせてくれる。
今回試乗するレイスは車両価格3,333万円、オプションを含めるとなんと3,932万円という超高額車両。
自分の試乗歴の中では、以前に試乗した
ファントムに継ぐ高額車であり、ハンドルを握るまでにはかなりの緊張感を伴った。
しかし、走り出してみれば驚くほどすぐに、レイスは車両感覚を身近な物に感じさせてくれた。
これはファントムを試乗した時とはまったく異なる感覚だ。
試乗した際に、いつまで経っても緊張感が取れずにフワフワした間隔でハンドルを握っていたファントムと比べ、スッと肌に馴染み、まるで自分の愛車のようにハンドルを切って名古屋市内を流す事が出来たレイス。
今回の試乗でファントムとレイスの違いをはっきりと理解する事が出来た。
要するに、オーナーが後部座席に座る事を念頭に置き、運転手が運転する車として開発されたファントム。
そして、オーナー自らがハンドルを握り、運転を楽しむ事を想定して作られているのがレイスやレイスのベースになっているゴーストなのだ。
名古屋駅周辺の幹線道路では、6.6リッター V12 ツインターボエンジンの本領を発揮させるステージは無かったが、アクセルを踏み込み、その凶暴なまでのトルクの一端を体感しようとアクセルを踏み込んだ。
しかし、感じられたのは思いのほかマイルドな加速だった。
トルク感は十分感じられるが、やはりロールス・ロイスらしい。と納得できるような味付け。
それはあくまでもジェントル&エレガンス。
実は、後から知った事なのだが、コラム型シフトレバーのLOWボタンを押さなければ、1速に落ちないとの事。
要するに、通常は余裕の2速発進の設定となっているので、この加速のマイルドさも納得。
しかし、スペック上は0-100km/4.6秒と本気モードのレイスは手加減が無い。
是非、レイスを手に入れられた方にはその本気モードを実感してみて欲しい。
2400kgの車重も上質な乗り味に貢献しているのは言うまでも無く、細部にまで贅沢な素材がふんだんに使用された車室内は快適そのもの。
ハンドメイドで職人の息遣いが聞こえてきそうなメーター周り、パネル類からもロールスロイスのクラフトマンシップが伝わって来る。
ロールス・ロイスといえども古き良きアナログばかりを採用しているわけではない。
オーディオなどの操作系はBMWからのシステムを流用しており、使い勝手には優れている。
クーペとはいえ、5280mm×1945mm×1505mmの車室内は大人4人が乗っても狭さを感じることは皆無。
後部座席も広々快適だ。図上のクリアランスも問題ない。
あえて言うのであれば、2ドアクーペの為に後部座席からの乗り降り時だけは前席を倒して乗り降りする必要がある。
しかし、それを苦にするようであればゴーストかファントムを買えばいいだけなのだ。
今回、レイスを試乗して実感することが出来た。
「ロールスロイスに明確なライバル車はいない」と。
ロールス・ロイス・モーター・カーズ 名古屋の坪内社長が言われていた事を身にしみてよく理解する事が出来た。
来年の春には名古屋に新店舗がオープンする。
早く2016年の春が来て欲しいと心から思えるようになったロールス・ロイス レイスのテストドライブだった。