スタディモデルから数えると早20年を経過したTT。ロードスター自体が追加されたのは2000年であるから、それでももう15年経ち、今回で3代目となった。いかにも「TT」をイメージさせるエクステリアのデザインは踏襲されているが、最新のアウディ車に共通した印象をまとい登場してきた。
今回は合わせて「クーペ」モデルも試乗の機会を得たが、今回はオープンモデルである「ロードスター」に特化したレポートをお送りする。
当日は気温が5~6℃であったが、早速オープンにして試乗をスタートすることにしよう。ルーフの開閉に要する時間は10秒も要しない。それも、50km/h以下であれば、走行中も開閉が可能である。これは特に最近、ゲリラ豪雨の多い日本では嬉しいポイントである。
3段階から選べるシートヒーターをONにし、ヒーターも割と強めにつけながらの試乗である。試乗車には後方からの風の巻き込みをシャットアウトするような風よけがなく、冷たい風が巻き込んでくるのが気になった。オプションとして、電動でデフレクターを出したり閉まったりするものが用意されているようだから、ぜひ装着したいところである。むしろ、できることならばこれは標準装備してほしいくらいだ。
エンジンは直4の2.0Lターボで、6速Sトロニックと呼ばれるデュアル・クラッチ・トランスミッションが組み合わされる。エンジンはなかなかスポーティなもので、もちろんスポーツモデルらしく、といっても過激すぎず、適度にスポーティな走りを楽しめるような印象の味付けである。ただ、これも近頃流行っている、ドライブモードセレクト(アウディでは「アウディドライブセレクト」と呼んでいる)でモードをいろいろ選べば、それなりにいろんなテイストの「TT」を楽しむことができる。そして、このパワーを4輪に分配するのであるから、なかなか理想的といえるだろう。
走っていて感心するのはボディ剛性感の高さである。オープンモデルはどうしても、ボディの一部を言わば“切って”しまっているわけだから、ボディの剛性感、しっかり感を保ちにくい。実際、オープンモデルの多くは道路の凹凸を超えた際に、フロアからぶるぶるといった振動、Aピラーやルームミラーがブルつくのが気になるが、このクルマはそのあたりをほぼ感じさせることなく、快適に走ることができた。もっとも、クーペと比較すると100kgも重たくなっているので、剛性不足にならないための補強はしっかりされているのだろう。
TTで特に話題になっているのは「アウディバーチャルコクピット」と呼ばれるものである。メーター部はすべて液晶になっており、そこはメーターのみならず、ナビゲーションなどの情報もすべて盛り込んだものといえる。これまでセンター部に大きなモニターを鎮座させていたのが半ば当たり前になっていたが、そのモニターをメーターの中に埋め込んでしまったといえばイイだろう。
車両の設定はもちろん、ナビゲーション案内図、さらにはTVなどもそのメーター部に表示することが可能だ(もちろん、走行中TVは音声のみになる)。
ナビゲーションはGoogle Mapを利用することが可能で、さらに驚くことに航空写真を使えば、まるで自分のクルマを上空から映し出しているような表示もすることができる。これは分かりやすいし、ドライバーにとっても有用なもののように感じた。
一方でTV画面をここに映すのはいかがなものかと考える。信号待ちなどでTVに注目するばかりに、信号が変わっても発進しないとかそういった問題が起きるのではないかと感じる。
このモニターを操作するのも極力スイッチを減らすために、ダイヤルで操作する形にしているが、これも慣れないとなかなか扱いづらいところがある。また、エアコンの操作もスイッチを極力減らしており、これまでと違ったところにスイッチがあったりする(例えばエアコンの吹出口など)。こういうことに少し慣れるまで時間がかかってしまうのではないかと感じさせられたクルマであった。
しかし、快適に、楽しく、オープンを4輪駆動で楽しめるクルマというのはなかなかないので、魅力的な1台であるのは間違いないだろう。
アウディ TTロードスター 2.0 TFSI クワトロ
主要諸元
全長×全幅×全高:4,180×1,830×1,360mm
ホイールベース:2,505mm
車両重量:1,470kg
エンジン種類:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボチャージャー
排気量:1,984cc
最高出力:169kW(230ps)/4,500~6,200rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1,600~4,300rpm
トランスミッション:6速Sトロニックトランスミッション
駆動方式:クワトロ(フルタイム4WD)
燃料消費率(JC08モード走行):14.4km/L
メーカー希望小売価格:605万円(消費税込)
※試乗車は673.5万円(レザーパッケージ装着車・グレイシアホワイトM塗装車)
アウディ公式サイト:http://www.audi.co.jp