A7はA6とA8の中間に位置するモデルだが、両者と違い”スポーツバック”の名が示す通り、Aピラーからリアエンドまで続く流麗なルーフラインが特徴的な4ドアスポーツクーペとなっている。端正なフロントマスクにスラッと伸びやかなボディライン、そしてスポーティなリアスタイルは、妖艶なイタリア車のデザインとはまた違った魅力がある。
乗り込んでまず気付くのは他のセダンと違い着座位置が低く設定され、さらにステアリングも小径となっている点。これだけでもスポーツドライビングへの期待が高まる。またインテリアの素材、仕立ては価格相応に上質感に満ちており非常に心地の良い空間となっている。さらにこの車にはオプションで「Bang & Olufsen アドバンストサウンドシステム」(720,000円)が装備されており、音響空間も申し分なかった。
この試乗車は昨年マイナーチェンジを受けた際に追加された2.0TFSIを搭載したモデルで、2L直列4気筒ターボエンジンから252ps/370Nmを絞り出す。アッパーミドルクラスの車でも4気筒エンジン搭載はあたりまえになってきたが、車両重量が1800kgを超えるA7となるとやはり走り出してみるまで少々懐疑的だった。
走り出しからの加速は、7速Sトロニックトランスミッションの緻密かつ正確な変速も手伝って、滑るように滑らかで車重をまったく感じさせない。高速道路での追い越し加速などでも、サプライズ的な加速感はないものの、およそ自分のイメージした通りの加速が手に入る。
余計なロードノイズなどはしっかりと遮音され、エンジン音の心地よい音程だけがさりげなく耳元に届くよう巧みにチューニングされている。さらに足回りもフリクション抵抗など微塵も感じさせないしなやかさで、このクラス特有の余裕が感じられる。まさにストレスとは無縁の運転感覚だ。
ただ”スポーツクーペ”たる動力性能を感じられるかと言われれば、やはりもう少しパワーが欲しいと思ったのが正直な感想だ。だが上質な走りとインテリア、それにこの美しいボディが725万円というプライスで手に入ることを考えると案外魅力的に思える。走りにさらなる余裕を求めるのであればスーパーチャージャー付のV6 3.0Lエンジンを搭載し333ps/440Nmを発揮する上級モデルもあるので、2.0Lの動力性能に満足できない方はこちらを選択すればいいだろう。もちろん”懐”にも余裕がなければならないのだが。(933万円)
ドライビング後には、なんともいえない充足感に満たされた気分にさせてくれるAUDI A7 スポーツバック。
『でもぉ、個人的な本音を言わせてもらうと優等生過ぎるクルマはちょっと馴染めないんだよな~』
……などと、価格的にもライフスタイル的にも縁遠い筆者が、思わず”ひがみ”交じりの一言を浴びせたくなるほど完成度の高い一台だった。
アウディ A7 スポーツバック 2.0TFSI quattro
主要諸元
全長×全幅×全高:4,990×1,910×1,430mm
ホイールベース:2,915mm
車両重量:1,840kg
エンジン種類: 直列4気筒DOHCターボチャージャー
排気量:1,984cc
最高出力:185kW(252ps)/5,000~6,000rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1,600~4,500rpm
トランスミッション:7速Sトロニックトランスミッション
駆動方式:クワトロ(フルタイム4WD)
燃料消費率(JC08モード走行):13.6km/L
メーカー希望小売価格:725万円(消費税込)
アウディ ジャパン公式サイト:
http://www.audi.co.jp
A7スポーツバック公式サイト:
http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja/models/a7/a7_sportback.html