ヨーロッパの自動車メーカーからどんどん発売されている「プラグインハイブリッド(PHV)」。メルセデスも、BMWも、アウディも、フォルクスワーゲンも、ボルボも…と日本ですでに市販化されているPHVも結構増えた。
今回はフォルクスワーゲンのフラッグシップモデルである「パサート」に追加されたPHVモデル「GTE」である。ゴルフにも同じくPHVで「GTE」というモデルがあるが、その名前からわかる通り、スポーティなテイストのPHVなのである。
まずこのクルマに対面すると、「国民車」という意味の「フォルクスワーゲン」とは思えないほどの高級感に驚かされる。試乗車はナパレザーのアイボリーカラー、そして大開口のスライディングルーフもオプション装備されて、本当にびっくりする高級感である。先代も決して悪くなかったが、各段の差でクオリティアップがなされた。
このクルマは大きく分けて3つのモードを選ぶことができる。電気のみで走る「Eモード」、走りを堪能できる「GTEモード」、電気とガソリンをうまく使い分ける「ハイブリッドモード」だ。まずは「ハイブリッドモード」で高速道路を走っている際にエンジンはかかっているが、音はかなり静かである。ここから加速をしてみると、やはりエンジンと電気モーターの力が組み合わさるということもあり、力強い加速力を得ることができる。一方、「Eモード」にすれば、高速道路での速度域でも電気のみの走行が可能である。カタログによれば、時速130km/hまでは電気のみで走ることができるそうである。
ハイブリッドのクルマに乗る際にいつも注目しているのは、回生ブレーキの強さ、エンジン車で言う「エンジンブレーキ」に当たるものがないクルマと、あるクルマが存在している点だ。このクルマにはエンジン車と同じようにパドル、もしくはセレクターレバーでエネルギー回生のレベルを変えることができる。これはエンジンブレーキと同様な扱いをすることができ、フットブレーキだけに頼らないため、使い勝手がいい。
市街地でも「Eモード」だと、充電量が十分ならば電気だけで走ることができる。音が静かで、これはまさにPHVの醍醐味である。まさに「プレミアムカー」だ。
最新の安全システムも装備されており、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)も装備されている。前のクルマとの車間距離を保ちながら、速度を自動調整してくれる機能だ。市街地の渋滞路でもうまく作動してくれ、前車が停止すれば自車も、ドライバーが何もしなくても滑らかに停止してくれた。他にレーンキープアシストといった装備もあり、ロングツーリングでも疲労度は少なそうだ。
インパネ中央にあるモニターにも、またフル液晶のメーターにも現在何で駆動しているかなどの表示をすることができる。フル液晶メーターは、アウディで言う「バーチャルコクピット」であるが、アウディと多少異なるようで、速度メーターやタコメーターの大きさを小さくできる比率がアウディより小さい。ナビ画面を液晶メーターに表示させたい場合は、アウディのほうがより広い範囲で表示することができる。
停止状態からのフル加速ではEモードでもアクセルを床まで踏めばエンジンがかかるが、そのエンジン音は大変静かで、いつエンジンがかかったかがわからない。モニターの表示を見て、今エンジンがかかったのがわかったという感じだ。このあたりのチューニングはとてもうまい。
中速から高速域を「ハイブリッドモード」にして、一定速で走っている際は電気のみで走っていた。
乗り味は滑らかで気持ちがいい。しなやかに道路の凹凸を超え、プレミアムカーらしい乗り味を提供する。一方で、「MODE」スイッチを押して、「スポーツモード」にすると足回りは予想通りに硬くなり、微小な凹凸の揺れがかなり感じるようになる。これは同じ日に試乗した「ティグアン」でも同様に感じた。
それでは魔法の「GTE」スイッチを押してみよう。そうすると明らかにクルマの印象が変わり、相当に野太い、スポーティな音が聞こえるのが面白い。これが排気音が変わっているのか、今はやりのスピーカーから別の音が出ているかがわからないのだが、ドライバーとしてはなかなか快音に聞こえた。また、ステアリングの重さも増すあたりも、相当にスポーティだ。フル加速時には背中からグイッと押される印象に驚かされる。
しかし、残念なのはこの「Eモード」、「GTE」、「MODE」のスイッチ位置が悪い。シフトレバーの左側にあり、これは明らかに左ハンドルのものをそのまま流用しているようだ。フォルクスワーゲンはこれほど日本で売れているブランドなのだから、こんなスイッチは右ハンドル国には右側に移設すべきである。それも右側にはスイッチが特にないのだから、余計に不親切感が漂う。
後席の居住空間の高さはDセグメントでも前輪駆動を採用するパサートならではのアドバンテージだ。4人がロングドライブをゆったりと過ごすことが出来るであろう。
ハイブリッドカーがまだ発展途上だったころは、本当に「エコ」だけのためだけで、人間の「エゴ」には全く応えてくれないようなクルマが大半だったわけだが、特にPHVになってから、ヨーロッパのPHVはエコに加え、「走行性能のアップ」も魅力の一つになっている。この「GTE」はそのネーミング通り、まさに「GTI」を電気化したような印象だ。運転も楽しくて、環境にも優しいクルマならとってもウェルカムである。
フォルクスワーゲン パサート GTE アドバンス
主要諸元
全長×全幅×全高:4,785×1,830×1,460mm
ホイールベース:2,790mm
車両重量:1,740kg
エンジン種類:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)
排気量:1,394cc
最高出力:115kW(156ps)/5,000~6,000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1,500~3,500rpm
電動機最高出力:85kW(116PS)
電動機最大トルク:330Nm(33.6kgm)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
トランスミッション:6速DSG
駆動方式:前輪駆動
ハイブリッド燃料消費率(JC08モード走行):21.4km/L
充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ):51.7km
メーカー希望小売価格:579.9万円(消費税込)
※試乗車は539.1万円(電動パノラマスライディングルーフ、有償オプションカラー装着車)
公式サイト:
http://www.volkswagen.co.jp