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witten by エニカ
世界中
うんうんする
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 私たちの生活に大きな影響を及ぼしている、新型コロナウイルス。政府による緊急事態宣言が解除された後にも、感染者数は一進一退を続けています。

 

日常的にマスクの着用や手指の消毒を心掛けたり、できる限りのリモートワークを実践したり。withコロナの生活が求められていますが、クルマは日常生活を支えるにもリフレッシュにも欠かすことのできない、私たちの相棒です。

 

そこでAnycaでは、withコロナの状況においてもドライバーの皆さん、オーナーの皆さんの双方に安心・安全・快適にサービスをご利用いただくため、公衆衛生や医療の専門家にインタビュー。専門家が有する幅広い知識とエビデンスのもと、車内の消毒や移動中の注意点をご紹介!“withコロナのカーライフ”をご提案します。

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新型コロナウイルスの基本知識まとめ
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【医師資格保有の専門家に聞く】カーシェアにおける感染予防策

基本を押さえたところで、カーシェアにおける感染予防にフォーカス!


DeNAのチーフ・メディカル・オフィサー(CMO)を務め、今年6月には石川県の新型コロナウイルス感染症対策本部アドバイザーにも就任した 三宅邦明氏へのインタビューから、具体的な予防策に迫ります。

三宅氏の前職は、厚生労働省の医系技官。医師の免許を有し、その専門的な知識と見地から、保健医療の制度づくりに従事。結核感染症課や内閣官房の新型インフルエンザ等対策室などに籍を置き、新規施策の立案から医薬品や医療機器の開発にまで携わってきた人物です。


過度な心配よりも『適切に怖がる』ことが大切!ポイントをおさえて消毒を
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――カーシェアにおいて、まず気になるのが車内消毒です。車内には手を触れる箇所が多くありますが、オーナーは、どこまで消毒を徹底すべきなのでしょうか?

三宅:参考になるのが、レンタカーや個人タクシーといった業界団体が示している、新型コロナウイルス感染予防のためのガイドラインです。どちらにも共通して示されているのが、利用者が頻繁に触れる箇所の消毒。具体的にはハンドルや操作レバー、スイッチ類やドアノブにタブレットのタッチパネル、座席といったところになりますが、頻繁に触れる箇所という見解は、カーシェアにおいても適切だと考えます。

利用者心理からすれば、車内を隈無く100%消毒することが望ましいのかもしれません。しかし、それはなかなか難しい。個人レベルでは非現実的であり、大きな負担になりますよね。私は新型コロナウイルスが流行する以前から、感染症予防に携わっていますが、いかなる感染症においても大切なのは、適切に怖がることです。

――適切に怖がる。昨今のニュースでも耳にするフレーズですが、どこまで怖がることが適切なのか、カーシェアにおいても、その線引きが難しいように思います。

三宅:確かにそこが難しいところです。ただ、「頻繁に触れる箇所を消毒する」ということは、感染に至る過程を考えても適切だと思います。ウイルスはたんぱく質の殻の中に遺伝子が入っているだけの構造で、それ単体では増殖できず、人の粘膜に入り込むことで増殖します。

日常生活において主に露出し、手の触れやすい粘膜は目鼻口ですよね。ウイルスが付着した手で目や鼻や口に触れてしまい、そこから感染するという流れです。接触感染に関しては、こうした段階を踏んで感染に至るため、頻繁に触れる箇所を消毒すれば、あまり神経質になる必要はないはずです。

車内でのマスク着用は不要!手洗い&消毒で感染リスクを軽減

――では、車内におけるマスクの着用についてはいかがでしょうか?カーシェアでは不特定多数の人がクルマに乗り合わせることはなく、オーナーとドライバーが同乗することも稀です。

三宅:現時点で明らかなマスクの効果とは、自分の身を感染から守るというより、感染者がウイルスを広めないこと。新型コロナウイルスの難しさは、無症状の感染者が多いことです。そのため、誰しもが、自分が感染していると仮定して、不特定多数の人が集まる場所ではマスク着用することが重要です。

その点、カーシェアの場合はどうでしょう?多くの場合、クルマに同乗するのは身内のはず。クルマに同乗する以前に一緒に生活していることを考えれば、車内でのマスク着用に意味があるとは思えません。もちろん、ドライバーさんは車内で会話もするでしょうし、飲食をすることもあるでしょう。すると車内に飛沫が飛び散りますが、それは返却後の車内消毒で解決できるはずです。

――そこで気になるのが、クルマの受け渡し時です。車内の消毒後、オーナーが指定の受け渡し場所までクルマを運転する場合、その間にもハンドルや操作レバー等に触れることになりますが、短時間の移動後にも消毒はすべきでしょうか?

三宅:医療の考え方を応用すれば、その必要はないと考えます。ダイヤモンド・プリンセス号での感染が報じられた際に話題になりましたが、医療の世界ではウイルスが生存している場所を「汚染区域」、そうでない場所を「清潔区域」と区分します。

消毒後の車内を「清潔区域」だとするならば、受け渡しまでにオーナーさんがすべきことは、消毒後の車内に新たなウイルスを持ち込まないこと。手洗いや手指消毒をし、ウイルスの付着していない手で運転をすれば、感染リスクは軽減できると考えます。

――ドライバーの手指消毒についてはどうでしょう?クルマの受け渡し前、返却後に車内消毒をすることを考えると、手指の消毒は不要でしょうか?
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三宅:いや、そこは視点を変えて考えましょう。手指消毒の最たる目的は、手に付着したウイルスを粘膜に移さないこと。車内にウイルスを持ち込まないための策であるのと同時に、うっかり顔を触ってしまうことへの備え、つまりは自己防衛の手段です。そのため、車内に戻る際には手指消毒を推奨しますが、環境が許すのであれば、消毒よりも手洗い。石けんで手を洗い、水で流すほうが、ウイルス除去の効果は高いからです。

車内では換気に気を配りましょう!エアコン等の感染対策は不要
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――車内エアコンについても聞かせてください。エアコンのフィルターに消毒液を噴霧したり、抗菌タイプのフィルターに交換したりすることで感染予防に努めるオーナーもいますが、効果はあるのでしょうか?

三宅:どちらに関しても、あまり効果はないと考えます。フィルターの消毒によって、そこを通過する空気まで消毒されることを期待されているのかもしれませんが、消毒用エタノールにしても次亜塩素酸ナトリウム液にしても、消毒に有効な成分は揮発性。フィルターにシュッと吹きかけたところで、その時点で付着しているウイルスは除去できても、効果は持続しません。次に抗菌効果を謳うフィルターですが、そもそも抗菌とは、細菌の増殖を抑制すること。ウイルス除去とは別物です。

また、車内エアコンの使用に慎重になるドライバーさんもいるかもしれませんが、科学的に考えれば、怖がる必要はありません。というのも、車内エアコンは「外気導入」と「内気循環」を選択できますよね。エアコンの使用時に「外気導入」を選択すれば、新型コロナウイルスの感染予防に重要である、換気を促すことができるからです。

――換気の重要性はカーシェアのみならず、あらゆる場面でいわれていますね。

三宅:厚生労働省が呼びかけている「3つの密を避ける」ことも、そのうちの一つは「密閉空間」です。空間の面積に関わらず、密閉空間を作らないために重要なのが換気。最近では空間除菌を謳った空気清浄機や置き型式の除菌剤が人気のようですが、効果が認められるのは、あくまでも換気の悪い密閉空間においてです。こうしたものに頼るより、クルマを運転するドライバーさんが常に換気をし、空気を入れ換えることのほうがずっと大事。車内ではエアコンを外気導入にするのと合わせ、窓を開放すると効果的です。

安心・安全にクルマを活用!上手な息抜きで“withコロナ”

――では、チャイルドシートのシェアについてはどうでしょう?今般のコロナ禍では、乳幼児や幼児への感染も確認されています。

三宅:チャイルドシートも消毒すると安心ですが、赤ちゃんや子どもは敏感。これをオーナーさんに委ねるのは、ちょっと酷かもしれません。ドライバーさんが消毒することを前提に、シートが変色してしまう可能性も考え、事前に「このように消毒しても構いませんか?」とオーナーさんに確認。オーナーさんも質問されたときに備え、どのような消毒液なら変色しないか、目立たない場所でテストをしておくことをお勧めします。
ちなみに、ゴミはドライバーさん自身が持ち帰るケースが多いと思いますが、特に鼻や口元を拭ったティッシュや使用後のマスクには飛沫が付着しているため、事前にゴミ袋を用意しておくと安心です。袋の口をしっかり縛ってから捨てれば、ゴミ収集業者の方への感染拡大防止にも寄与できます。

――三宅さんのお話により、適切に怖がることのラインが見えたような気がします。最後に、Anycaの利用者にメッセージをいただけますか?

三宅:そうですね。新型コロナウイルスとの戦いは、ある程度の長期戦になるだろうと見込んでいます。すると「withコロナ」という言葉に象徴されるように、このウイルスと、いかに付き合っていくかが大事。その付き合い方には移動手段の選択だけでなく、上手な息抜きも含まれているはずです。

そこでクルマという移動手段を選べば、不特定多数の人との接触を避けられます。そして密を避けながら、日常の移動手段としてはもちろん、息抜きのお出掛けも可能です。神経質になりすぎてはメンタル面で不健全。カーシェアなどを利用し、上手に息抜きをしながら、このコロナ禍を乗り切りましょう。

たっぷりのボリュームでお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか?自分や周囲の人の健康を思えばこそ、感染対策がつきもののお出掛けですが、心のリフレッシュも大切ですよね。皆さんの不安を少しでも和らげ、安全にお出掛けするためのヒントになれば幸いです。

次回は新型コロナウイルス感染予防策の第2弾として、クルマのプロにインタビュー。クルマの構造もケア方法も熟知する専門家の知識により、見落としがちな消毒箇所から繊細な素材の消毒方法まで、より具体的なハウツーをご紹介いたします!

※掲載内容は2020年7月3日時点の情報です。

(取材・執筆:大谷享子)