「私、免許は持ってるんですけど、このクルマの運転は得意じゃないんです。基本的に主人が運転するクルマなので……」
そのため、ドライバーはみな、山本さんの自宅までクルマを取りにくるという。
時折「駅まで出して頂けませんか?新宿は?」というリクエストも入るそうだが、すべて断っているそうだ。
これまで登場した”賢者”たちは、受け渡し場所を便利なターミナル駅や山手線駅に設定し、融通を効かせていたことを考えると、山本さんのスタンスは少し変わっている。
というか、ドライバーからみると少し不便だ。
だが、こうした”無理しないシェアスタイル”こそが彼女の強みだった。
彼女がシェアにおいて一番大事にしているのは、「気楽さ」だという。
「娘がすでに傷をつけているので、多少の傷は気にしません。もともとピッカピカの新車だと、クルマを利用する方もきっと億劫になりますよね。特に運転に慣れていない学生さんとか。Anycaで並んでいるクルマのランキングを見ると、テスラやBMWなど、高級輸入車が並んでいます。それを見てウチのクルマはシェアに向いてないんじゃないか……と思いがちですが、こっちはこっちで結構乗りたい人がいるんですよね(笑)」
シェアの場所は自宅のみ。クルマの多少の傷は気にしない。さらに、返却時間の大幅遅刻もOKだという。
「返却場所が自宅なので、何時に返してもらっても問題ないんです。特に、週末のシェアは、高速道路が渋滞しているので大抵遅れます。最初から時間通りに返ってくるとはあまり思っていません」
気楽、あくまで気楽。
返却場所は自宅。そのおかげで、受け渡しは山本さんだけでなく、娘さんや旦那さんなど、家族みんなが対応してくれるそうだ。朝は山本さんが対応し、夜の返却時は娘さんが対応することも珍しくないのだとか。
過去には朝5時から使用したいという人や、24時返却の人もいたそうだが、全く問題なくシェアできたそうだ。
値上げをしてわかった適切な料金
こうした「気楽さ」に加えて、Anyca内でいくつかの実験をしているのも山本さんの特徴だ。
「シェア料金は色々試してみました。最初2,000円からスタートして、安定してリクエストが入るようになったので料金を上げてみたんです。2,500円から500円刻みで4,000円、4,500円……と上げていったところ、4,500円でピタッとリクエストが止まった。そこでもう一度3,980円に戻したところ、再びリクエストが増えました。あ、4,000円ギリギリいかないくらいが最適な料金なんだなと確信しました。なので今後もこの料金でいきます」
料金を変更することで愛車の最適な料金がわかる。一度シェア料金を”実験”してみるのは悪くないかもしれない。
3:傷のある車体でも、シェアする時は2つのルールを守る