当ブログでも度々ご紹介していますが、BMWは
「電気自動車の拡大は顧客の要望に足並みを揃えるべきで、内燃機関の早々の廃止は現実的ではない」と考えています。
CEOのオリバー・ツィプセ氏は、
昨年3月の年次総会や昨年5月の
CNNのインタビューで明確にそう述べ、開発責任者であるフランク・ウェーバー氏は
昨年9月のインタビューで同様に主張しました。
そして今月上旬のドイツ連邦議会内の非公開の会合で、BMWのオリバー・ツィプセCEOは
「ガソリン車への需要がまだ大きく残っているのに、内燃機関技術を早急に廃止するのは賢明ではありません」と、
重ねて主張しました。
「内燃機関は、ドイツはもちろん欧州や世界でも絶対的に最大の市場分野です。
このようなものを8年や10年で簡単に切り捨ててしまう前に、自分達が何をしているのかを知らなければなりません。
ドイツやヨーロッパでこの技術を禁止しようとしても、世界市場はそこまで至っていないので、世界市場でもこの技術を失うことになります。
だからこそ私たちは、これを早くやりすぎて、市場とともに発展する変革の機会を与えないことにも警告を発しているのです。
世界的な地位を確立している技術を、必要性もなく簡単に手放すことは有害です。
それが気候変動や誰かのためになるとは思えません。」
とも述べました。
ツィプセCEOの主張は、
ユーザーやメーカーの立場に立った、ある意味で「当たり前の主張」とも言えるかもしれません。
EVはCO2削減効果が極めて限定的で、総走行距離10万km以下の多くの用途では製造時のCO2増加を取り返せないと試算されています。
利便性や経済合理性も、内燃機関車とは大きく異なります。
ですが、
ベンツや
アウディなどを含む多くのメーカーの経営陣は、現実離れしているとも思える急進的なEV化計画を発表しています。
そんな「EVが唯一の選択肢であるかのような動き」に対して、自動車メーカーのトップとして反論するのは、責任感のある真摯な行動だと思います!
そして、そんなBMWの真摯な主張が通じたのか・・・
昨秋のCOP26では、一部の国が強力なEV化を目指そうとするのに対し、日本・アメリカ・ドイツ・中国・韓国などの主要な自動車生産国は同意しませんでした。
産業的にも、二酸化炭素の削減効果的にも、無理があるからです。
そして
ドイツ新政権の考え方は、さらに現実路線へと舵を切りつつあるようにも見えます。
昨年11月に新政権は「2030年に少なくとも1500万台の電動車を走らせる」と目標を掲げました。
ですが、
今年1月に運輸大臣は「その目標には、ピュアEVだけでなくハイブリッド車が含まれる」と述べたのです!
アウトバーン(高速道路)の一部区間を「速度無制限」とするほど、ドイツ人は
移動の自由と合理性を重視しています。
充電に時間がかかり長距離航続に不向きなEVは、「全てのドイツ人の足」になることはそもそも難しいようにも思えます。
もちろん、同様の考えを持つユーザーは日本を含む世界中に存在します。
BMWは魅力的なEVの開発・生産に取り組みつつ、ツィプセCEOの「
エンジンにも未来はあります」という言葉通り、顧客が望む自動車を創り続けてくれると思います!
G.Sekido