今週のブログ担当は
G.Sekidoです。
今回は、BMWのここ3代のチーフデザイナーと、デザインの変化についてのお話です。
(チーフデザイナーは、BMW各モデルの外装/内装デザイナーを統括する責任者的な役割です)
1992~2009年のチーフデザイナーは、アメリカ人の
クリス・バングル(
Christopher Edward Bangle)氏が務めました。
それまでのBMWのデザインは(製品担当重役ヴォルフガング・ライツレ氏の
意向もあって?)比較的保守的でしたが、バングル氏は新風をもたらしました。
その独創的なディテールは
当時は賛否両論を巻き起こしましたが、凹面と凸面を組み合わせたデザインは他社にも影響を与えました。
いずれの車も時代を超えた魅力があると思います。
2009~2019年は、オランダ人の
エイドリアン・ファン・ホーイドンク(
Adrian van Hooydonk)氏が
その座につきました。
(前任のバングル氏はBMWを退社し、自動車デザインからは一旦距離を置きました)
当ブログの過去記事でもご紹介しましたが、3シリーズ(2012年)→4(2013年)→2(2014年)→1(2015年)→7(2015年)→5シリーズ(2017年)という順番で発表されたモデルラインナップにおいて、フロントフェイスに連続性(上級モデルほどヘッドライトとグリルが横に伸び、太く繋がっていく)が見られました。
そのことからも、「統制の取れたブランドイメージの確立」を重視していたように思えます。
ラインナップに
前輪駆動プラットフォームが加わった時代だということもあり、その必要性があったのかもしれません。
2019年にチーフデザイナーに就任したのは、クロアチア系ドイツ人の
ドマゴイ・デュケック(
Domagoj Dukec)氏です。
(前任のファン・ホーイドンク氏は、デザイン担当上級副社長に就任しました)
デュケック氏は、約2年前に
個人名でのInstagramアカウントを開設し、独自に情報を発信しています。
そのアカウントでのこの
投稿(近年のモデルのスケッチ集)には、現行ラインナップのデザインの傾向が良く表れています。
エッジが立った比較的シンプルな面と直線の組み合わせによって、力強さを表現している様に思えます。
ちなみにデュケック氏が
影響を受けた人は、ファッションデザイナーの
カール・ラガーフェルド氏とのことです。
ラガーフェルド氏は「伝統は、細心の注意をもって扱う必要がある。なぜなら、それは自分らしさを殺しかねない。
リスペクトは、決してクリエイティブではない。」とも語っていますが、そこにデュケック氏のポリシーも垣間見える気もします。
そして同アカウントでは、BMWのデザインの歴史の舞台裏の一部も公開されていて、とても興味深いです。
そのうちの
FOR YOUR EYES ONLY (SWIPE TO REVEAL) シリーズは、主に過去の(未公開の?)コンセプトスケッチ等が掲載されています。
その中でも、個人的に最も衝撃的だったのが・・・
4代目5シリーズ(E39型)・Z3ロードスター(E36/7型)・先々代3シリーズ(E90型)・先代3シリーズGT(F34型)・現行3シリーズ(G20型)などを手掛けられた
永島 譲二氏が描いた、
Z3のアイディア段階のスケッチです!
E36型3シリーズに通じるようなカバーで覆った4灯式ヘッドライトや、リトラクタブルヘッドライトのような分割線も見られます。
"NAGASHIMA '91"・"NAGASHIMA '92"というサインと年号も描かれています。
Z3の発売は1996年でしたが、それを遡る数年前には永島氏の中には様々なイメージがあったようです。
イメージが次第に絞り込まれていく過程が伺えます。
そして実車大のモックアップに至ります!
「水平基調の丸く滑らかなボディ+横方向に貫くように貼り出したフェンダー」というコンセプトは、市販車にも反映されています。
(アイディア段階でのデザインを踏まえて市販車を見ると、込められた狙いや思いがより鮮明に理解できる気がします。)
永島氏とお会いして
色々なお話を伺い、作品集のZ3のページにサインを頂いた私としても、とても興味深い情報でした!
デュケック氏のアカウントでは、他にもこういった
非常に珍しい写真(1981年・BMW AVT)等、色々な貴重な画像も公開されています。
今回は紹介しきれませんが、またいつか掘り下げたいと思います!