(上図は
欧州議会のロゴマークです)
先月(2022年10月)末に、「
35年までにエンジン車の新車販売禁止へ、EU3機関が合意」というニュースが報じられました。
その概要は、
・EU理事会と欧州議会、欧州委員会は10月27日、ガソリンエンジンなど内燃機関の新車販売を2035年までに事実上禁止する法案の内容で合意した
・2026年の時点で欧州委がゼロエミッション化に向けた進捗状況を評価して、必要に応じてプラグインハイブリッド車や、合成燃料を含む代替燃料(カーボンニュートラル燃料)の扱いについて見直しを行う
というものです..!!
ちなみに27か国・総人口約5億人からなるEUは、このような統治体系を取っています。
2035年エンジン車禁止の基本方針は、まず27名からなる「
欧州委員会」にて昨年7月に打ち出されました。
ですが昨年11月に行われたCOP26(気候変動対策を協議する国連の会議)の結果(※)を見ても、
ドイツはその方針に賛同していなかったと推測されます。
※ COP26における「全世界で2040年までに(主要市場では2035年までに)、販売される新車を全て電気自動車など『排出ゼロ車』にすることを目指すとの宣言」に、イギリスやスウェーデンを含む24か国が署名したものの、
日本・アメリカ・ドイツ・中国・韓国などの主要な自動車生産国は署名しなかったと報じられました。
その後の今年6月8日の欧州議会本会議では、賛成339・反対249・棄権24と、約55%の支持でその法案が採決されました。
さらに「2026年に、欧州委員会がプラグインハイブリッド技術や合成燃料を含む代替燃料技術の発展などを考慮し、必要な見直しを行うこと」をEU理事会は確認しました。
そして
先月末になり、冒頭のようなニュースが報じられました。
まだ法制化はされていないものの、立法機関であるEU理事会が合意したということは、それに向けて動くことはほぼ確実なようにも思えます。
※ ただし「合成燃料などカーボンニュートラル燃料のみを使用する車両の
2035年以降の販売について、欧州委員会が新たな提案を行う」という文章が法律の前文に盛り込まれるという見込みのようですが、詳細は明らかになっていません。
尚、
欧州自動車工業会(ACEA)や
ドイツ産業界は、このエンジン車禁止法案に対して
強い疑問や懸念を表明しています。
わずか27名の欧州委員会が打ち出した急進的で短絡的とも思える方針は、結果的に欧州全体の方向性へと拡大され、EU27か国の5億人の暮らしや産業にきわめて大きな影響を及ぼそうとしています。
ウクライナ侵攻に伴うロシア制裁の影響で
欧州では電力需給が逼迫し電気料金が高騰していますが、その情勢に逆行しているようにも思えます。
EUと同じようなエンジン車の販売禁止方針は、最近になって
カリフォルニア州や
ニューヨーク州でも表明されています。
ですがそのカリフォルニア州では、熱波による電力逼迫の懸念から
住民に対してEVの充電を控える要請が出されたりもしています。
同州では「
寿命を迎えた太陽光パネルがほとんどリサイクルできず埋立廃棄され、鉛・カドミウムなどの有害重金属で地下水を汚染する可能性がある」という説も見かけます。
そもそも、エンジン車をEVに置き換えてもCO2削減効果はごく限定的である(
廃車までの総走行距離が短いとかえってCO2を増やしてしまう)という試算もあります。
「エンジン車とはすなわち悪であり、早急に販売禁止にするべきである」とでもいうような
単純な理屈が成り立つ状況ではないことは明らかだと思います。
欧州自動車工業会(ACEA)の会長でもあるBMWのオリバー・ツィプセCEOは、
エンジン車の存続に関する力強いメッセージを度々発しています。
10月19日には米国でのインタビューにおいて、「BMWはあえてエンジン車生産終了の日程は設けておりません。当社としては野心的な自動車規制は支持しているものの、
政治主導でエンジン車が無理やり禁止される流れには賛成しかねます。」と明言しました。
(車の排出量実質ゼロ化に向けた義務規制がある国などでは)「われわれは対応の準備がある。十分な量のEVを用意できる」とも述べ、
国や地域のニーズに応じた商品展開を続ける意思も示しました。
BMWが、株価や投資筋にウケが良い「極端なEV化目標」を掲げない理由の一つに、「
クヴァント家」との関係が深いこともあると思います。
クヴァント家のサポートもあって、
今後もBMWは着実に真摯に駆け抜けてくれると思います。
(ミュンヘンへと続くアウトバーンの写真です)
国家間を陸続きで移動できる欧州は、自動車の利便性や合理性が人々の生活や経済に極めて密接に繋がっています。
ルールが現実に即していないなら、それを正すのも政治の役割であり、政治の原動力でもあると思います。
人々の声と優れたリーダーが、明日へと続く道を切り拓いてくれると信じます! G.Sekido