最新ディーゼルエンジン車に乗ると、その豊かな低回転トルクに圧倒されます。
そして、ガソリンエンジンとの個性の違いを感じます。
例えば、
320i(ガソリン)は高回転までシュワッと気持ちよく回り、
320d(ディーゼル)は低回転でグワッと迫力があり、
328i(ガソリン)は低回転から高回転まで豪快なパワーがあります。
この個性の違いを、感覚的な言葉では無く、科学的に表現できないかと考えました。
(以下、少々物理的な話になりますが、ご興味の無い方は紫色の数式部分は読み飛ばしていただいても良いかと思います。)
F = m × a (F: 物体に働く力、m: 物体の重さ、a: 加速度) という運動の第2法則と、
W = F × s (W: 仕事、F:力、 s:移動距離)の両辺を時間で微分して導かれる
P = F × v (P:仕事率すなわち馬力、F:力、v:速度)を組み合わせると、
a = P ÷ ( v × m ) となります。
つまり、加速度 = 馬力 ÷ ( 速度 × 重量 ) となります。
走行中の車で言うと、加速度は、その状況におけるエンジンの馬力に比例し、その時の走行速度や車両重量に反比例します。
(厳密には、ころがり抵抗や空気抵抗なども影響しますが、今回はほぼ等条件として除外します)
この関係を踏まえ、320i、320d、328iのカタログに掲載されている馬力曲線を重ね合わせてみました。
赤色が328i (最高出力245馬力、最大トルク35.7kgm)
緑色が320d (最高出力184馬力、最大トルク38.7kgm)
青色が320i (最高出力184馬力、最大トルク27.5kgm) です。
320dは320iより加速感が高いことがグラフからも裏付けられています。
低回転域では328iに匹敵するほどの馬力がありますね。
ですが、ガソリンエンジン車に比べ頭打ちが早く、次のギアにバトンタッチします。
実際の速度変化や加速感はそれぞれのエンジンのレスポンス・素質・サウンド等も関係しますが、低回転で力強いディーゼルと高回転まで回り切るガソリンの特性が、一つのグラフに収まっているように思います。
(アイドリング付近の低回転は320dの方が低いグラフになっているのは意外ですが)
3車のグラフを重ね合わせるにあたって肝心なのが、車ごとの変速比を考慮することです。
(上記の計算式より「加速度はその時の走行速度に反比例」し、速度とエンジン回転数は変速比に依存するため)
3車とも8ATの各速の変速比は全て等しいですが、最終減速比は320dのみ12%ほどローギアードになってます。
そのため、320dのグラフはその比率で横に伸ばしてあります。
こういう理論で重ね合わせをしたグラフを見たことがありませんが、有効な比較法では無いでしょうか..?
ちなみに、横軸(回転数)の補正をせず等しく重ね合わせると、こんなグラフになってしまいます。
「320dは328iを上回る加速をするものの、半分くらいのタイミングでシフトアップする」ようなグラフです。さすがにこれは実感とかけ離れているように思います。
やはり「減速比で補正」するのが実際に近いのではないでしょうか。
※ただし車両重量やタイヤ径などが車両によって大きく異なる場合は、更に縦軸や横軸の補正が必要になります。
もう一つ、参考にグラフを作ってみました。
3車のトルク曲線を重ね合わせたグラフです。(馬力曲線グラフと同様に、320dのみ減速比補正をしてあります。)
このグラフも、中回転域は320dが328iを上回っていて、実感とは異なると思います。
馬力=トルク × エンジン回転数ですので、トルクも加速度を決める要素ではあるものの、回転数を掛け合わさないと加速感とイメージがリンクしません。
「車の加速に効くのは馬力じゃなくてトルクだ」とか、「加速はトルクで、最高速は馬力で決まる」等の言葉を読むことがありますが、このグラフを見るとあまり良い言い回しでは無いと思えます。
車の加速を決めるのはやはり馬力曲線(パワーカーブ) なのではないでしょうか。
加速度 = 馬力 ÷ ( 速度 × 重量 ) という数式からもそれは導かれます。
ただし、馬力=トルク × エンジン回転数ですので、もちろんトルクも加速度を決める要素です。なので、
「 車の加速を決めるのは馬力曲線である。
ただし、馬力曲線はトルク曲線に依存する。 」
という表現が、矛盾の無い言い回しでは無いかと思います。
・・・以上、長文になってしまいましたがご容赦願います。m(^^;)m
(内容に誤りやご意見等がございましたら、ぜひコメントをお願い致します。)
先日、こんな発表がありました。
【BMW、クリーン・ディーゼル・モデルが国内販売の1/4を占める】:Car Watch
昨年12月のBMWの全販売台数の約25%、モデルによってはその50%以上がディーゼルになった、というニュースです。
最初のグラフ(減速比で補正した馬力曲線)からも、ディーゼルは常用回転域ではワンランク上位のモデルのガソリン車並みのパワーがあるのが分かります。
それでいて燃費が良くかつ燃料単価も安いため、燃料代が「7割~半分程度」になるのですから、ディーゼルの人気が高まるのもうなずけますね! (^▽^) G.Sekido