【autoblog 日本語版】というサイトでは、以前にもご紹介した人気コーナー
The-List (リスト):車マニアが死ぬまでにやりたいこと1001を始め、面白い記事が掲載されています。
このサイトに、先日こんな興味深い記事が出ていました。
【BMW Mモデルの歴史がひと目で分かるインフォグラフィックス 】 という記事です。
(ちなみにインフォグラフィックとは「情報、データ、知識を視覚的に表現したもの」とのことです。)
> このインフォグラフィックスはイギリス自動車金融ブローカー『Carfinance247』が作成し、車情報サイト『AutoWeek』に掲載されたもの。Mモデルの発展を時系列で見ることができ、モデルの性能をクモの巣チャートで比較することができる。
とのことで、面白い企画だと思います。
しかし、詳しく見てみると、色々と残念な点が見つかります・・・。
クモの巣チャート(レーダーチャート)は、多角形の形や面積で直感的に特性が判断できるようにするのが一般的ですが、この記事のチャートには以下のような不備があります。
・このチャートが表す5項目(排気量・馬力・トルク・最高速・0-60マイル/h加速)は、全て数値の大きいものが外側に配されています。その結果、加速性能に関しては内側が優・外側が劣とほかの4項目と逆向きであり、直感的に読み取れません。
・最高速は大部分のモデルが250km/h(155マイル/h)リミッターで制限されているので、車両が持つポテンシャルを表しておらずあまり意味がありません。
・明らかな数値や語句の誤りも見受けられます。
試みは面白いと思いますが、結果として作成されたクモの巣チャートからは、残念ながら情報が効率的に伝わってきません。
(企画した人と作成した人が別人で、さらにそれがほとんどノーチェックで公開されたのでしょうか・・?)
本来は明確な意図をもって取りくんだはずが、いつの間にか資料の作成自体が目的となってしてしまい、十分な吟味や考察が無いままに終わってしまうという、ありがちな?過ちに陥っているように思います。
・・・と、文句ばかり付けていても非建設的なので、このアイディアを基に私も作成してみました。
まず、代表的なMである歴代M3とM5の性能・諸元を一覧表にしました。
エンジン性能だけでは面白くないので、日本での価格(消費税を除く)と、ボディの大きさを表す代表的な数値としてホイールベース、車重を項目に入れました。
パワーウエイトレシオ(PWR)は加速性能を推し量るときによく用いる概念です。
日本では重量÷馬力を用いることが多いですが、今回は馬力÷重量を用いました。数値が大きい方が加速性能が優れています。
これらの数値から各項目別で偏差値を求め、クモの巣チャートにしました。
4代のM3を比較した場合です。
※各項目の向きに関しては、一般的な高性能化、すなわち「ゴージャスで速い」ものを外側としました。なので価格は外側が高く、車重は外側が重いです。
0-100km/h加速に関しては、外側を優れさせるために「100から各々の偏差値を引いた値」を表してあります。
ほぼ全ての項目が、モデルチェンジの度に成長・進化しています。
価格に関しては、「E30型が割高」と考えるか、「E36やE46が割安」と考えるかは難しいところですが・・・。
専用設計のエンジンブロックを用いたスペシャル・エンジンを搭載しながら、ベース車両との価格差が小さかったことを考えると、「E36やE46が割安」と言って良いと思います。
ホイールベースはE36で一気に伸びています。(スタイリングはぐっと現代的になり、前後重量配分50:50を謳うようになりました。)
E92は、8気筒になり排気量が大きく増加した割には加速性能の伸びは限定的にも思えます。
「排気量に頼った差別化の限界」が垣間見えるようです。
4代のM5を比較するとこうなりました。
E60の価格が非常に良心的というか、コストパフォーマンスが高いのが分かります。
この車(とM6)専用のV10エンジンを載せていたのですから、尚更です。
非常に稀有な存在であったと再認識しました。
F10はダウンサイジングターボ化されたことにより、排気量は減少させつつトルクは大幅に増え、ドライバビリティの向上が伺えます。
逆にE60は高回転高出力型の尖った性格が表れています。
3世代前のM3&M5と、現行のM3&M5の比較です。
E92 M3と、E34 M5は、ホイールベースがほぼ同一で、ボディサイズも似通っています。(E92の方が若干大きいです)
直6のE34に対し、E92はV8を搭載しているにも関わらず、軽量で高出力でうんと速く、安いです。
20年分の技術の進化が表れています。
最後に、M3&M5の8台のグラフです。
「E36 M3、E46 M3、E60 M5の割安な価格」 や
「E60 M5のリアルスポーツ的な尖った性質」 とともに、
「F10 M5のダウンサイジングターボ化による効果的な性能向上」
が表れていると思います。
「M」が新しい時代に入ったことの証明です。
来年?に発表になる新型M3(セダン)およびM4(クーペ)は、いよいよダウンサイジングターボ化を果たします。
> 3.0リッター直列6気筒ツインターボは最高出力430psと最大トルク51.0kgmを発揮するという。先代M3の4.0リッターV型8気筒に比べると約30%もトルクが増強されているにも拘わらず、燃料消費と排出ガスは約25%削減しているそうだ。これにはジャスト1,500kgに抑えられたという車両重量の軽量化も寄与している(日本仕様の先代M3に比べると、なんと150kgも軽くなっている)。
という情報も公開されました。
新型M3およびM4の「クモの巣チャート」は、どんな形になるのでしょうか。
その飛躍的な進化が今から楽しみです! G.Sekido