近年、自動車の走行中に得られる情報や操作する項目は、多様化しています。
従来からの速度計・燃料計・各種警告等に加え、エンジンや足回り等の車両設定を確認・変更できる車が増えています。
各種音楽メディア(CD・iPod・USB等)や映像メディア(地デジ・DVD)も視聴できる車も珍しくありません。
カーナビゲーションから得られる情報も増加し、インターネット接続による検索や各種情報表示も進化しています 。
運転中に安全に各種の情報を得たり操作するには、効率的な情報表示や操作方法が不可欠です。
そこで、「自動車の理想的な情報視認・操作環境」について書いてみます。
(個人的な考察ですので、偏った内容もあろうかと思いますが、何卒ご容赦願います)
運転席での主な情報表示・操作エリアを大きく3カ所に分けてみます。
それを1丁目・2丁目・3丁目と名付けました。(^^;ゞ
1丁目は運転席正面です。
2丁目は、1丁目の左側です。
3丁目は、2丁目の下です。
2丁目と3丁目の境界は、1丁目の下端あたりの高さとします。
BMWに限らず、一般的に・・・
1丁目は、運転中でも視線の移動が少なく見られます。
そのためほとんどの車では、スピードメーターや燃料計や各種警告など、優先順位が高い情報がここに表示されます。
2丁目は、1丁目に次いで運転中でも見やすい位置です。
そしてデザイン上の理由から、運転席から遠く少し奥まった位置にあることが多いです。
(ここが手前に近いと圧迫感があり、広々感が失われがちです。)
運転中に手が届きにくく、頻繁な操作には適しません。
3丁目は、デザイン上の制約が少ないこともあり、運転中に手が届きやすいように運転席方向や車両後方に突出させてある事が多いです。
そして近年のBMWでは、
2丁目は、ナビゲーションのディスプレイが配されます。
3丁目は、オーディオやエアコン等の使用頻度が高いスイッチが配されます。
さらに、手が届かない2丁目のナビゲーション等を操作するために、iDriveのコントローラを手元に配しています。
そのコントローラは目視確認が必要無いように、形状・操作が考慮されています。
この方式を「ナビ2丁目配置、手元コントローラ操作型」と名付けます。
画像は先々代の3シリーズ(E46型)です。
(画像は左右反転等の加工をしてあります。以降の画像も同様です。)
iDriveが導入される前のBMWでは、2丁目はエアコン吹出口とし、3丁目をナビゲーション/オーディオとしていました。
(そのナビはタッチパネルではなく、周囲のスイッチで操作するようになっていました。)
いわば「ナビ3丁目配置、スイッチ操作型」です。
3丁目は操作するのには適しているものの、運転中の視線の移動が大きいのが難点です。
また、運転席から近いということは眼の焦点も近くなるということでもあり、焦点距離の増減も大きくなります。
「運転中に視認し操作する」ベストポジションとは言えません。
そこでBMWは業界に先駆けてiDriveというコントローラを着想・導入し、現在の方式へ移行したという経緯をたどっています。
近年はベ○ツやア○ディも、BMW同様に
「ナビ2丁目配置、手元コントローラ操作型」を採用しています。
「回転&水平移動する円柱」を軸としたコントローラも、BMWのそれとよく似ています。
ドイツの高級車御三家は、ほぼ同一の表示・操作方式を採用していると言えます。
国産メーカーにもこの方式を採用した例が出てきています。
ディスプレイ部をダッシュボードに埋め込まず、あえて孤立させるデザインになってきたのも共通しています。
(視界の最大限の確保・視線移動の最小化・センターコンソールの圧迫感の低減等が目的ではないでしょうか。)
最近のフォルクス○ーゲンとポ○シェは、このようになっています。
「ナビ3丁目配置、タッチパネル操作型」です。
ゴ○フと9○1という、歴史も知名度もある両車が採用したことにも表れているように、比較的ポピュラーな方式です。
日本車の多くもこの方式を採っています。
タッチパネル式は、iDrive等の手元コントローラ式に比べると、慣れを必要とせず直感的に操作できる、ワンアクションで「選択と決定」を行える等のメリットがあります。
「手元コントローラとそれに対応したソフトウェア等を独自開発する必要が無い」、すなわち「汎用のナビゲーションシステムを流用できるため、輸出先毎の対応や後付が容易である」ということも、自動車メーカーにとってはメリットかもしれません。
ですが、操作する指先の位置調整は視覚に頼ります。
視覚に対する依存度が高く、操作に意識の集中を強いられるのがデメリットです。
(歩きスマホが歩きガラケーより危険とされる事にも、同様の理由が潜在していると思います。)
上下左右に揺れる車内で、腕や手を固定せず浮かせた不安定な状態で操作する場合は、さらに集中を必要とします。
(手元コントローラ式は、慣れてしまえば操作行為には視覚を必要とせず、腕をアームレストで固定できるため集中しなくても確実に操作できます)
そしてナビ3丁目配置は、前述しましたように視線の移動量が大きいというデメリットがあります。
(平均速度の高いドイツのアウトバーン等では、特にデメリットが大きい気もします。)
「ナビ3丁目配置、タッチパネル操作型」は、
「操作方式にタッチパネルを選択した」→「ナビを3丁目に配置せざるを得なかった」という消去法的選択であるようにも思えます。
理想的な情報視認・操作環境を追求した結果というよりは、メリット・デメリットを天秤にかけた上の妥協の選択である、というのは言い過ぎでしょうか。
ちなみに、少数ながら「ナビ2丁目配置、タッチパネル操作型」という車もあります。
操作性を確保するためナビ部分を突出させる必要があり、ナビ周りの存在感が際立っているデザインは好みが分かれるでしょうか。
操作性を重視してナビを手前に近付ける→ダッシュボードに沿って位置が下がってしまう→3丁目に近い位置になり視線移動量が大きくなる(画像左:カ○エン)、
ナビの視線を高くしようと中央が高いダッシュボードを構築する→圧迫感があるのであまり手前に近付けられない→手が届きにくい(画像中央:ク○ウン)、というジレンマもありそうです。
(ただし画像右の軽自動車の様に、車両サイズが小さいため2丁目が座席に近く、かつ直立気味に座る車では、この方式ゆえのデメリットが少ないように思えます。)
採用事例が少ないことにも、この方式が最善解ではないことが表れているように思います。
他にも書きたいことはいくつかあるのですが、長くなってきましたので・・・。
以上の理由から、BMWを始めとするいくつかのメーカーが採用している
「ナビ2丁目配置、手元コントローラ操作型」が、視認性と操作性を高い次元で両立する(現時点での)最善方式だと、個人的に思っています。
iDriveはタッチパネルと比べるととっつきが悪い、難しい と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが..。
iDriveはBMWが追求した理想を体現しています。
(よく使う機能を「プログラマブル・ボタン」に設定すると、より便利にお使い頂けます。)
ぜひ存分にご活用ください。
今回ご紹介した以外の方式(1丁目空き地型、1丁目はみ出し型など)の解説や、新しい技術(ヘッドアップディスプレイの進化やiPhoneとの連携など)について、今回の続編として【iDriveに込められた理想 その2】を次回掲載致します。
このようなマニアックなネタが望まれているか少々不安ではありますが・・・
楽しみに?お待ちください。m(^^)m G.Sekido